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花は花に、鳥は鳥に。  作者: まめ太
第二章 友達のカレシ
56/124

1-2

 駅から八坂神社に続く大きな通りは車の往来も人の往来も激しかった。

 人を避けていくうちに、いつの間にか寂しい小路へ入り込み、目的地だった清水方面への道を見失った。

 ずいぶん歩いたのに、人が居ないのでは道も聞けない。この辺りは明らかに観光向けの界隈じゃない。

「遙香、ほら、あの通りって、どこかに行けるんじゃないかしら?」

 母の声が弾んだ。

 向こうの交差点、わたし達が進む道を横切る大路には明らかに人の流れが出来ていた。

「やったね、お母さん。きっと八坂か清水に向かう人だよ!」

 わたしの声も釣られて弾む。

 もう、どちらを向いて歩いているのかも解からなくなっていたから、この人の流れは大いに助かった。


 話しやすそうな人を選んで、いざ突撃。

「あの、すいません。清水方面はこちらで合ってるんでしょうか?」

「え? ああ、そうですよ、この先が清水寺です。」

 初老の、テンガロンハットのおじいさんは元から笑顔のようだった顔を一層にほころばせた。

 わたしはお礼を言って、母の元へ駆け戻る。

 人の波に任せて、後は進むだけだった。


「親切な人でよかったね、遙香。」

 母はのんびりと言った。

 わたしは頷いて、そしてまた二人が黙々と歩き出した。

 母もわたしも、あまりお喋りじゃない。


 噂はもう、母の耳にも入っているだろう。

 ご近所の井戸端会議を差し止めることなど出来ない。

 わたしは、泥棒猫。

 こんな見知らぬ観光地で出会った行きずりの人のほうが、ずっと温かいと感じてしまう。


 何十年と暮らしてきた母の生活を、わたしの軽率な行為が破壊した。

 何十年、ご近所とは親しく付き合ってきて、そこにわたしと紗江の家族も収まっていて。

 わたしはそんな事さえ忘れていたんだ。

 人の口に戸板は立てられない。

「お母さん、ごめんね、」

「ん? なあに、遙香。改まっちゃって。」

 苦労続きの母に、わたしまでが追い打ちをかけた。



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