8-4
翌朝のスケジュールは忙しかった。
朝からバタバタと、時間はやけに早く過ぎ去った。
早朝からお風呂へ駆け込み、身支度は慌ただしく、朝食もなんだかやけに忙しかった。
皆がそろそろ打ち解けて賑やかな風になった頃合いに旅行は終わるものなのだ。
帰りのバスは静かなものだ。ただ、敬子が言っていた誰かのイビキだけは、鳴り止まないBGMで辟易した。
いつの間にかわたしも眠ってしまい、目覚めた時には、なんだか見覚えのある風景が窓の外を走っていた。
関東へ戻ったんだ。
一日を車中で過ごした。帰りは休憩以外はどこにも寄らずにノンストップ。
夕日は赤く燃えて、西の空へ沈みかけていた。
明日一日、振替えでお休みなのは有り難い。
新宿でバスは停まり、そのまま解散。わたしは敬子と地下鉄に乗る。
まるでまだ夢のつづきのようで、半分、現実味がないまま、機械みたいに身体は動く。会話が弾んだはずなのに、ほとんど覚えていなかった。
時間がふたたび動き出したのは、祐介の待つマンションの一室、ドアノブに手をかけた辺りからだ。
まるで夢でも見ていたようだ。
課長に抱いた想いも、今はもう色褪せている。
なんだったんだろう、なんて、すっかり他人事になっていておかしかった。
結局、わたしはまた性懲りもなく、ここへ戻ってきちゃったよ、おばちゃん。
好きになったものは、仕方がないね。
諦めて、ドアを開けた。
部屋は静まり返っていた。まだ宵の口だし、きっと祐介は仕事から帰っていないんだろう。
勝手知ったる他人の玄関へ侵入し、明りを燈す。一度、二度と、玄関の丸いLEDは点滅してから辺りを明るくした。靴は出ていない。几帳面な祐介は、履かない靴は下駄箱へ片付けておくから、ようするに留守だって事。
祐介がまだ帰っていないと解かって、ほっとした。
惰性で好きだと思ってるだけかも知れないね、おばちゃん。
何度も裏切られて、何度も許してきたから、だからわたしは引き下がれないなんて意地になってる。
何回許したか解からない。何回傷付けられたか解からない。だから、今さら別れるなんてのは、とても許せるものじゃないじゃない。祐介にも、自分自身にも。
嫌なオンナだなぁ、ため息と一緒にやたらと薄情な感想がこぼれ落ちた。




