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花は花に、鳥は鳥に。  作者: まめ太
第一章 女は子宮で考える
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1-2

 そういう男なのよ、と親友の遙香はひどく怒っていた。

 そのくせ、三度目だったか四度目だったかの浮気相手はその遙香だ。

 女ってバカだ。

 許すべきじゃないのは男のはずなのに、わたしが許せなかったのは遙香の方だった。

 それが、つい十日ほど前の話。


「はーぁ、」

 思わず生あくびなんか出てしまう。

 観光バスの常で、車内ではずっと宴会状態だ。

 ビールがひっきりなしに回ってきて、おつまみも回ってきて、マイクもついでに回ってきて、お愛想笑いで辞退して、そうして全部後ろの席へ回す。

 上場企業のやる事だから、五台連ねた大型観光バスは真ん中にちっちゃなシャンデリアがぶら下がっていたりの、リッチな社員旅行だった。

 強制参加ではないので、毎年参加人数は減り続けているそうだけど。


 本当は、来たくなかった。

 社員旅行の計画は三月も前から始まっていたから、今さらブルーな気分を言い訳に辞退なんて出来ない。

 普段は顔を合わせることもない、部署の違うお偉いさんまで人数の関係で同じバスになった。

 ユウウツすぎる。


 一番後ろの席で新人君がヘッタクソな歌を披露して、場をおおいに盛り上げて、それからマイクは反対側の座席をバトンリレーで前の席へと戻っていった。

 前の席には、わたしの所属する庶務課と、企画部のお偉いさんたちが座っている。

 みんな遠慮して、マイクをせっせと彼らの席へ運んだ。


「呑んでるー?」

 隣の席に座るのは、同僚の敬子だ。

「呑まなきゃやってられません、」

 わたしがユウウツだという事を知っている友人だ。


「あ、見て見て、企画部のイケメン課長だよ。今回、参加してたんだねー。」

 わたしの頬を指先でつんつんして、敬子が教えてくれた先に、イケメンの横顔。

 苦い顔しててもイケメンはイケメンだ。

 企画室長が北島御大のド演歌を歌い終え、その隣のイケメンに無理やりマイクを押し付けようとしていた。

 さらに声を小さくして、敬子がこっそり教えてくれた。

「田坂室長の隣に座ったら、絶対に歌わされるもんねぇ。」

 へー。ご愁傷様。


 けど、このイケメン、声も渋くて歌も上手だった。やだ、惚れちゃう。

 悲しい歌をのびのびと歌い上げるのは、正直、どうなのかとは思ったけど。


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