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花は花に、鳥は鳥に。  作者: まめ太
魔法のくちどけ
17/124

3-3

 城崎温泉郷。

 歴史ある温泉街で、有名人も多く逗留したんだそうだ。

 文豪ゆかりの地だとかで、『城崎にて』は有名だ。

 そんな話を宿の仲居さんが教えてくれた。


 七つの外湯が点在して、それぞれで効能も違うらしい。

 建屋の外観も大きく違っているそうで、楽しみ方は人それぞれ。


 夕闇迫る温泉郷。川沿いの通りはレトロな街燈が灯り、オレンジ色の仄かな色に染められていた。

 備え付けの浴衣に着替えて、ぽっくりを借りて、カラコロと通りを歩いていく。

 帯は本来なら後ろで結ぶものだけど、わたしはちょっと洒落のめして斜め前でリボンに結ぶ。

 その上から上掛けを羽織ってみた。

 温泉旅館は心得たもので、コスメのセットされた手桶に無料入浴券まで持たせてくれた。

 風情を楽しむだけでも、来てよかったような気がした。


 宿を出る時にもらったパンフレットを眺めて、敬子に確認。

「ホテルから近い一の湯か、御所の湯のどっちかだね、行くなら。」

「どうせなら全部回りたいのになー。」

「全部回ると、逆に疲れて湯治にならないって仲居さんが笑ってたじゃん。」

「でもせっかく来たんだしー。」

 敬子は残念さを噛みしめて、拳をグーで握り締めていた。


「はいはい、それは今度、カレシと一緒に来た時にでもしてね。」

「やっぱりー? えへへー。」

 この街は一度や二度で満足できるような観光地じゃありません、てね。

 敬子が考えてることくらい解かるよ、わたしも同じこと考えたもの。


 敬子は唇をつんと突きだして、ちょっと不満げな顔をした。

「混浴だったりしないかな? やっぱり、カレシ以外の男と一緒になんて入りたくないしー。」

「外湯はぜんぶ別々だってさ。その代わり、家族風呂とか貸し切りできるみたいよ?」

 兵庫県は条例で混浴を規制中だそうだ。

 ここを押した社長も、これがあったから城崎にしたのかも知れない。

 そして幹事にとっても渡りに舟だったんだろうか。

 ゴネるセクハラ上司の要望を、堂々と躱せるわけだもんね。

 温泉と言えば城崎ですよ! なぁんて。


「お、また会った。」

 ほんとに。

 街燈の下でばったりと、坂崎課長と出会ってしまった。



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