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花は花に、鳥は鳥に。  作者: まめ太
魔法のくちどけ
15/124

3-1

 二年前。

 そう、たったの二年しか経っていない想い出だ。

 傷心からはほんの十日。

 よくこんなとこに立てるな、わたし。我ながらで感心する。


 東尋坊の断崖絶壁の端っこに立つと、怖い半面で、いきなり強風が吹いたりしないものかな、と嫌な想像を巡らせてみたりする。

 今日は無風で、穏やかな日和だった。

 お日様が心地良くて、強風が吹いた場合の嫌な連想と、ビーチマットを広げて寝転びたいなんていう呑気な妄想とが、交互に脳裏をよぎっていった。

 崖の上はなんだか不似合に小奇麗なのだ。

 課長は呆れて先に引き上げた。

 最後に、「出発の時間に遅れるなよ、」と忠告を残した。

 わたしはどうにも、放っておけないタイプの人間と映るのかも知れない。


 後ろ向きなライオンの岩があるという話だったけど、どれがどれだか解からなかった。

 (後で聞いたら、そこからは遠すぎて見えず、バスでは通り過ぎてしまっていた。)

 百獣の王ライオンは、オス一匹に複数のメスで仲良く暮らす。

 祐介も、ライオンに生まれていたなら、問題のない人生だったんだろうに。

 考え始めると限りなくダークサイドへ落ちていくから、もう考えないことにした。


 パーキングの休憩所で何だか訳の分からないキーホルダーを見つけて買ってみた。

 それを、飲食コーナーのベンチでくつろいでいた敬子に見せた。

「なにそれー? きゃはは!」

 サンリオとのコラボキーホルダーで、ハローキティがカニのコスプレをしているものだ。

 面白がって、彼女は同じものを買いに行った。

 敬子は、高い所は見たくもないと、バスが到着してから先はずっとここに待機していたのだ。

 夜明け前にわざわざ立ち寄っただけの価値はあり、断崖絶壁に這い登るご来光はなかなか見ものだったのに。


 わざわざ朝食を食べるために東尋坊タワーなる場所へ立ち寄り、ついでに東尋坊の観光。

 プランを組んだ幹事は四苦八苦したに違いなかった。


 その後、お昼ご飯の為にまた高速道を途中下車した。

 若狭フィッシャーマンズワーフ、実はここが本当のメインじゃないのかと思ったりした。

 大変に賑わっている場所だ。

 名神、東名を使えばもっと楽だったろうにわざわざプランに捻じ込んだのだと思った。

 相当に早い到着で、たっぷりと自由時間があった。


 豊富な海鮮、海の幸に舌鼓を打った。

 そうよ。人生はこんなに楽しい。

『あの事が無かったら、もっと楽しかったんじゃないの?』

 ふいに湧き上がる自問自答を、速攻でデリートした。


 若狭の名物だという浜焼きは豪快だ。

 サバ一匹が丸ごと串刺しで、丸ごとをアユの塩焼きみたいに焼いてあった。

 一人一匹とか冗談みたいなセンスだった。


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