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MUSIC WORLD  作者: 曲楽 ゆず
1/2

ouverture

*はじめに*

マルチエンドです!五人の男の子と恋愛していきます。途中で分岐する予定。

乙女ゲームをイメージした小説・・・みたいな。逆ハーかも。

けっこう病んでる子います。性格危ない子もいます。注意。

でも常識人もいます!大丈夫!!(なにが

完全に女性向けですが、誰でも気軽に読んで下さると嬉しいです。


ではでは、プロローグから。

主人公は出てきません。

「お誕生日おめでとう」

「・・・どこから入って来たんですか?」

彼が自室の扉を開けると、暗い部屋の中、見知った男が立っていた。

「どこって、そこだよ。その扉。久しぶりだね、セツラ」

「さきほど会いましたけどね」

「うん。でも、さっきは挨拶できなかったからね。君、女の人に囲まれてたし」

「そうですね」

彼、セツラは、ドアを閉めると部屋の明かりをつけた。

「鍵、かけておいたと思ったんですけど」

「うん、そうだね。かかってたよ」

「そうですか」

いつも通りニコニコと笑顔で話す男に、セツラもいつも通りの微笑みで言葉を返す。

「僕の妹、どうだった?」

「ミアナさんのことですか?」

「そう。ミアナ、かなりはりきってたから。これ、そういうパーティーでしょ?」

「・・・あなたは、大丈夫なんですか?確か、私より二つ上だったと記憶してますが」

「僕は三男だからね。わりとどうでもいいんじゃないかな。一人っ子って大変だね」

そう言いながらも、男は相変わらずニコニコしている。

「ええ。大変ですよ」

「それで、どうだった?ミアナ」

「そうですね・・・・・どうでしょう」

「君のお気には召さなかったでしょう?」

「そう思いますか?」

セツラも全く表情を変えず、微笑んだままだ。

「うん。・・・じゃあ、僕はそろそろ帰るよ。おやすみ、セツラ」

「・・・ええ」

男は窓を開ける。

ここは3階。だが、いつものことだ。セツラはそれに対してはなにも言わない。

「サクリ、」

ただ、男が窓枠に足をかけたところで、声をかけた。

「なに?」

男、サクリは振り返る。

「いいですよ。あなたの望むように動いてあげても」

さっきまでとは違う、少し皮肉めいた笑みで、セツラはそう言った。

「・・・うん、ありがとう」

サクリはニッコリとこたえると、そのまま窓の外へ飛び降りた。



「疲れた顔をしているぞ」

「・・・そうですか?」

セツラが自室で休んでいると、今度は違う男がやって来た。

「まあ実際、疲れてますからね」

「リトウラヌさんになにか言われたか?」

「・・・・・まあ、そうですね」

「大変だな、おまえも」

「・・・・・」

セツラはソファに体をあずけていて、グッタリしているように見える。

そうとう疲れているようだ。

「・・・・・イスナ、」

「・・・なんだ?」

いつもより少しだけトーンの低いセツラの声に、イスナは少し間をあけて返事をした。

「あの人がどんなに言おうと、この世界の女性は全て、私にとって対象外ですよ」

「・・・・・」

「だから私は・・・・・渡ろうと思います」

「・・・・・・・は?」

イスナは思わず聞き返した。

「渡りますよ、私は」

だが、セツラはどこまでも真剣だった。

「リトウラヌさんには話したのか?」

「話してませんよ。まあ、反対はされるでしょうが、押し切ります。あの人には理解できないでしょうが」

「それは仕方のないことだろうが・・・家はどうするんだ」

「もちろん、継ぎますよ。それ以外の選択肢はありませんしね。ですから、見つけ次第すぐに連れ帰ってきます。それまで、あの人のことはあなたに任せます」

セツラの突然の発言にイスナはかなり驚きつつも、冷静に考え、言う。

「俺も行こう」

「・・・あなたは、私の世話係かなにかですか」

「だが、心配なんだ」

「私は一応、あなたより二つ上なんですが・・・でも、そうですね。どうせサクリも来るでしょうし」

セツラは、少し前のやり取りを思い出す。

「サクリが?」

「ええ。彼はまた、退屈しているようです。・・・サクリが来るということは、おそらくリトも。そして、あなたが来るということは・・・」

「いや、あいつは一応、この国の王子だぞ?しかも第一王位継承者だ」

「彼が王子らしい行動をとったことなんて、ありましたか?」

「だが、まずいだろう。よりにもよって、このメンバーは・・・」

この国の第一王子に、最上部の貴族が四人。

「そうですね。でも、サクリはきっと喜びますよ」

「あいつは・・・正直よくわからない」

「それが彼、ですからね」



「オレも行く!」

「・・・・・」

予想通りの反応に、イスナはしばらく沈黙した。

「・・・・・ダメかな」

「いや・・・おまえ、国はどうするんだ」

「この国は、オレがいなくったって変わらないよ。それに、そんなに長い間じゃないでしょ?」

「セツラやサクリもいるぞ?」

「う・・・でも、イスナが行くならオレも行く」

二人の名前に、一瞬戸惑った顔をしたが、それでも意志は変わらないようだ。

「イスナってさ、いろんなこと気にかけて、いっぱい苦労を引き受けちゃうから心配なんだよ」

「おまえが俺を心配するのか?」

「そうだよ。オレはイスナを心配する」

「・・・・・そうか」

イスナがセツラのことを心配しているように、彼はイスナのことを心配していた。

「まあ、ツヅミがいれば少しは気が楽になるかもしれないな」

「そんなに気が重くなるようなメンバーなの?ええと、イスナと、セツラと・・・?あ、サクリが来るってことは、リトも来るのかな」

「重くならないか?」

「・・・うん、そうだね」

ため息まじりのイスナの言葉に、ツヅミは同意した。



「セツラが??渡るの???」

「僕の望みにこたえてくれるらしいからね」

「へぇ。珍しいね。相当まいってたのかな・・・もちろん、ボクもついて行っていいでしょ?」

「君が来たいのなら」

「でも、セツラが渡るってことは、イスナ・・・あ、ついでにツヅミもくっついて来るのかな。ほんと、サクリの好きそうなメンバーだよね」

彼の言葉に、サクリはニッコリと笑い、尋ねる。

「楽しそうだと思わない?」

「うん。サクリは、すごく楽しそう」

「そうだよ。僕は、きっと楽しい」

「最近退屈そうだったもんね、サクリ。いいんじゃないかな。キミが楽しいなら、ボクもきっと楽しいよ」

「そうなんだ。リトが楽しめるのなら、それでいいと思う」

サクリはニコニコしながら窓の外を見る。

「向こうって、女性が歌ったり、演奏したりするんでしょ?ボクも向こうで誰か見つけてこようかなぁ・・・」

窓の外、見たこともない世界を想像し、リトも眺めてみる。

「君にはまだはやいんじゃないかな」

「・・・でも、ボクだって嫌なんだよ。ここにいる女性は、全く価値観が合わないから・・・サクリはどうするの?」

「僕は・・・どうかな。そうすることで面白くなりそうなら、そうするかもしれない」

「横から、かっさらうとか?」

「そうだね。それも面白いかな」

サクリは、窓の外を眺め続けている。

「でも、君に好かれる子がいるとしたら、それはちょっと可哀そうだね」

「・・・なにそれ。どういうこと??」

「どうしてかな。そんな気がする。気のせいだといいね」

「・・・・・まあ、ボク自身も想像できないからわかんないんだけど。ていうか、ボクよりサクリのほうがもっと想像できないよ」

「そうかな。・・・そうだね。僕も想像できないな」

窓の外、星の多い夜空。

そこに、どこにあるかもわからない世界を見つめる彼は、本当にとても楽しそうだった。



「・・・結局五人、揃ってしまったな」

イスナは、渡る前から疲れた顔をしている。

「本当に、セツラが行くと二人セットでついてくるんだね。面白いなぁ」

リトは、予想通りすぎるメンバーに対してのコメントを述べる。

「オレ、なんだか緊張してきた・・・どうしよう・・・」

ツヅミはなんだかオロオロしている。

「・・・・・」

サクリはずっと無言でニコニコしている。

「・・・・・そろそろ、行きましょうか」

そして、セツラがそう告げた。





ここではない、別の世界。

そこでは、『音楽』というものの価値が、この世界の何千倍・・・何万倍も薄い。

けれどそこでは、全ての者が『音楽』を奏でることができる。

そこは、ここではない世界。


『現実の世界』



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