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第9話「雨と笑顔」

下校時刻の六時になって図書室の鍵を閉めると教員室に鍵を返し、早坂君と一緒に下駄箱へと向かった。

もうほとんど校舎内には生徒は残ってないのか、しんとした空気が漂っている。


外へ出ると、さきほど窓から様子をうかがった時よりもさらに雨足が強くなってるように思えた。

地面に降り注ぐ雨を見つめながら、ふと思い出す。


そういえば、わたし、傘持っていないんだった……


「お前、傘は?」


早坂君は折り畳みの傘をしっかりと手にしている。

私は小さく首を振って、


「持ってないです」


と答えた。

私はごそごそと鞄からハンドタオルを取り出すと、頭にかぶせた。

駅までそんなにかからないから、走ればそこまで濡れずにすむかもしれない。


「それじゃあ、早坂君また明日ね。本はなるべく早く返せるようにするね」


私は軽く手を振って、そのまま校舎の外へ駆け出そうとすると、いきなり腕をつかまれぐいっと引っ張られた。


「お前、ホントに馬鹿?普通に駅まで傘に入れてやるって」

「えっ、いいの?」


驚いて早坂君の顔を見ると、早坂君は顔をしかめた。


「お前、一体俺のことなんだと思ってる?」

「えっ…と………」


クールな美少年かと思いきや、ただの悪魔のような鬼畜男でした。

……なんて言えるわけないし。

そんな事を言った日には……と想像しただけでぶるっと寒気が走る。


そうだ、それに早坂君って………


「お、女の子嫌いなんでしょ?」

「は?」

「だってそうじゃなかったらあんな冷たい態度、女の子にとらないかな、と思って………」


射抜くような視線に、声が尻窄ツボみになっていく。


さっきまで忘れていたのに、頭に告白現場がよみがえってきた。

相手の女の子を斬り捨てるような態度とあまりにも冷たすぎる口調。


嫌いじゃないというなら、一体あれはなんだというのだ?


早坂君ははあとため息をつくと、私の額にいきなりデコピンをかました。


いっ、いったぁ〜〜!!


とつぜん額にきた衝撃にわずかにバランスを崩す。


な、な、なんでいきなり………?


私はわざわざデコピンをくらわなければならない理由が分からず、じんじんと痛む額を手で押さえながら、無駄な抵抗だと分かりつつも早坂君の顔をせいいっぱい睨みつけた。


「あのさ、お前が言ってんのがどの事か分からないけど……別に女が嫌いな訳じゃない。ただ女は大抵俺の外面しか興味ないようなヤツしかいないから、確かに苦手ではあるけどな」


私は何も言えず、黙り込んだ。

あとさき考えずに軽い気持ちで口に出してしまった自分が急に情けなくなった。


「美人が幸せとは限らない」


確かにそうなのかもしれない。

おそらく目の前にいるこの美しい少年も、きっと色々な思いを抱えてきたのだろう。


モテすぎるっていうのも問題なんだなぁ……


「そんな思い詰めた顔をするなよ。別に気にしてないし…ほら、行くぞ」


早坂君は苦笑してそう言うと、私を傘の中に引き寄せた。

全身を溶かしてしまいそうなぐらいの優しそうな笑顔が一瞬見えた。


うわっ………!


ダイレクトにその笑顔を直視してしまった私は平常心を保てるはずもなく、おもわず赤面してしまった顔を必死に冷まそうとした。

心臓のばくばくと高鳴る音が、耳にまでとどいてくる。


な、なんでこんなに熱くなるの!?

ただ笑った顔を、しかもほんの一瞬見ただけなのに………!!


幸い、そんな自分に彼は気付いていないようだ。




私は一人ぎくしゃくしたまま、早坂君にならんで歩き始めた。

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