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第39話「らっきーせぶん?」

ごくり。

それは誰が唾を飲んだ音だったのか。


その場にいる誰もがその瞬間をじっと見守っていた。


「それじゃあ、1番!」


伊淵先輩はそこで大きく一息つくと、ニヤリと笑ってみせた。


「―――高橋と梶原ペア!!お前ら、トップバッターだかんな!!びびんじゃねえぞ、特に男子!!」


ひゅーっと一気にはやし立てるようにして、周りが盛り上がる。

呼ばれた2人は照れたように前に出てくると、彼らは板倉先輩から一枚の紙と小さな巾着袋のようなものを受け取っていた。

どうやらあの中に祠に置いてこなければならないというお供え物が入っているようだ。

あの紙はなんだろう…?


「次っ、2番!!」


その声にビクリと隣で由里香が反応したのが分かった。

隣を見ると何やらお経のようなものをぶつぶつ唱えながら、由里香は必死に手を摺り合わせている。


「ハヤサカクンハヤサカクンハヤサカクン………」

「酒井・原ペア!!」

「!!!」


がーん


そんな感じの漫画の効果音がすぐ傍から聞こえてきたような気がした。

由里香は呆然としたまま、その場から一歩も動かない。

みるみる表情が青褪めていく由里香に、心配した私は慌てて声をかけた。


「ゆ、由里香?大丈―――」

「…ねえ、葵衣、ねえ、今なんて…今…ねえ葵衣…今…葵衣…ね…ぇ…」


余程ショックだったのだろう。

壊れた機械のように同じ言葉を繰り返していたかと思いきや、由里香は宙を見つめたまま、完全に動きが止まってしまった。


えっ…え!?


「ゆ、ゆゆ由里香!?」


だだだだ大丈夫!?


「うふふふふふふ」


突然背後の方から愉快げに笑う声がして吃驚して振り向くと、そこには……城乃内さん?

嬉しそうににんまりと笑みを浮かべて、こちらを見つめている。


「ふふ、ざまぁみなさいってね、酒井さん♪やっぱりアナタと早坂君じゃ神様も不釣合いだって言ってるみたいねぇ」


城乃内さんはふふんと得意げに笑って見せる。

その言葉にゆっくりと由里香は視線を城乃内さんへと向けた。

本気で休ませた方がいいのではないかと考えてしまうぐらい、ほとんど生気を失った顔で由里香は顔を歪めて呟いた。


「うっさい。その口今すぐ切り裂いて欲しいの?」

「最初から望みを抱くこと自体、馬鹿なのよ。あ〜あ、可哀想…」

「―――その首今すぐ絞めて欲しいの?」


由里香はにっこりと爽やかな笑顔で言い放つ。


うわわわわ……!

由里香サン、ちょっと…いえ、かなり物騒な発言をされてますが…!


「あっ、酒井さーん。一緒のペアだよね、よろしくね♪」


こんな不気味な夜には相応しくない、満面の愛らしい笑顔で手を振りながらやって来たのは、(確か)原君だ。

ふと原君と目が合うと、これまた悶え死んでしまうのではないかというぐらいキュートににっこり笑ってくれた。


わわっ…

癒されるなぁ…


この時ばかりはあんなに嫌だった肝試しのことを忘れ、つい原君につられて微笑んでしまっていた。

由里香は胡散臭そうに原君を見つめた後、は〜っと重い溜息をついて言った。


「……………よろしく頼んだからね」

「もちろんっ、僕に任せてよ」


そう言ってどんと誇らしげに自分の胸を叩く原君は、男らしいと言うよりやっぱりとっても可愛い。

そんな原君の様子を見て、由里香はもう一度がっくりと肩を落とした。


一方、城乃内さんはふふふと微笑みながら、自分の割り箸をじっと熱く見つめていた。


「やっぱ3番よねぇ…私と早坂君の赤い糸は―――」

「3番!城乃内・関口ペアっ!!」


あんぐりと口を開けたまま、数分前の由里香と同じように城乃内さんは固まってしまったかと思いきや、そのままふらふらとどこかへ歩いていってしまった。


あ、あれ…?


そんな後姿を指差しながら「ざまぁみろはお前だ!」と心底可笑しそうに由里香は笑っている。

先程の様子からしてみれば、少し調子を取り戻したのか復活している由里香の姿に安心して、気付かれないように私はほっと一息ついた。


良かった…由里香ちょっと元気になったみたい。



―――そして順調に番号とペアが発表されていき、とうとう次は7番という数字の出番になってしまった。


ドキドキと自分の心臓が高鳴っていくのが分かる。


肝試しはやりたくないけど…

でも相手の人は誰なんだろう?なんて、やっぱりちょっと気になってしまう。


「ちょっとちょっと、まだ雪平君も早坂君も残ってるじゃん!葵衣、雪平君とのラブラブ肝試しのチャンスかもよ!!」


そう言って由里香は楽しげに、片目を瞑ってみせた。


ら、らぶらぶ…?


「7番っ!…おっ、こりゃあまさにラッキーセブンって奴だな」


伊淵先輩は紙に目を通してから、ニヤリと笑って言った。

何だかとんでもない予感がして一瞬身体が強張る。

それが間違いでないと気付かされたのは、次の瞬間だった。



「7番っ、白崎・早坂ペア!!」



さーっと色んなものが目の前の世界から失われていくような感覚……

頭の中が真っ白になる。




―――お願いです、神様。


今すぐ…

今すぐこの場から消え去らせてください。









正直葵衣を誰とのペアにするかかなり悩みました。

けどここはやはり彼が来ましたね(笑)

はてはて、怖がり葵衣さんの肝試しの行方はいかに?

…という訳で次話に持越しです(笑)

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