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第36話「つかの間の休息と恋愛談義?」

「ふぁ〜…」


気持ちいい。

白く濁ったお湯に包まれ、たいして今日は疲れていないはずなのに思わず欠伸が出てしまった。


早いなぁ…

もう合宿1日目は終わりなんだよね。


「葵衣、湯船のほうはどう?」

「うん!すっごく気持ちいいよ〜」


身体をシャワーで洗い流していた由里香が尋ねてきたので、満面の笑みで答える。

お湯の温度も熱すぎずぬるすぎずでちょうどいい。

ぽかぽかと身体が温まってきて、だんだんと眠気に襲われてしまいそうだ。


今浴場にいるのは私と由里香の2人だけ。

撮影が終わりペンションに帰るとすぐに由里香にお風呂に行かないかと誘われたので、やってきてみれば案の定まだ早すぎたのか誰もいなかったようで。


湯に身体を沈めながら、ゆっくりと目を閉じる。

あったかい…なんだか本当にこのまま寝ちゃいそうだなぁ。


「葵衣〜、アンタさ…好きな男の子とかいないの?」

「ぶっ!!」


けほっ、けほ。


「は…へ!?」


す、好きな…?

いきなり何を言い出すのかと思えば…咳き込む身体を必死に押さえながら由里香の方を見やると、由里香は期待に満ち溢れた視線をこちらに向けている。


いやいやいや!

そんなに目を輝かせられても困りますって!

す、好きな男の子なんているわけがな…


顔が真っ赤になっていくのを感じながら、ふと脳裏に過ぎったのは、健人君の姿。


「!!」


な…、なんでここで健人君が出て…?


「だって、葵衣と今までこういう話したことってないじゃない?アンタいっつも本読んでるしさ、恋愛とか興味ないのかなって思ったわけよ。でも今日さ〜見てて思ったんだけど、アンタ雪平君と結構イイ感じなんじゃないの?」

「ぶほっ!!」


ゆ、雪平君!?


「雪平君ってあの通りの美貌じゃない?私は断然早坂クン派だけど。あの儚げな雰囲気とかさ、触れることさえ許されない禁忌の存在だとか…香帆姉いわく映研の女子の中ではそういう扱いになってるんだって」

「へ、へぇ…」

「今日バスから降りたときとか雪平君が葵衣の荷物とってあげたりしてさぁ〜葵衣も案外満更じゃなかったりして?」

「っ!!?」


なっ、何を言って…

確かに雪平君は優しいしカッコいい人だと思うけど、そういう対象で彼を見たことは一度もない。

…というか、私なんかが相手って雪平君にかなり失礼な話だ。


唖然として否定できずにいると、由里香は「あっ」と突然何かを思い出したように叫んだ。


「いいこと思い付いちゃった!ねぇ、うちら二人で協力して頑張ろうよ、この合宿中に!葵衣は雪平君、私は早坂君と急接近できるようにさ」

「はえ?」


何だか話が良くない方向に進んでいる気が…


「よーしっ、そうと決まれば早速今夜は緊急会議よ!大丈夫、私がしっかり策を練ってあげるから。どんと大船に乗ったつもりで私に任せなさい!」

「あの、由里香、なにか激しく誤解を…」


…物凄く嫌な予感がする。

目を爛々と輝かせている由里香の耳に私の声は虚しくもまったく届く気配すらない。


―――とその時、浴場の戸がガラリと大きな音を立てて開けられた。


「あらぁ?そこにいるの…もしかして酒井さん?」

「げっ」


浴場に入ってきた姿を認めて、由里香が心底嫌そうな顔をする。


「城乃内…」


ぴりぴりと何だか触れてはいけないような空気を感じて思わず湯船の中で後退りする。


な、なんだろう…

もしかして、ふたり、仲が悪かったり…するのかな?

そういえば歓迎会の時もあまり良い雰囲気ではなかった気が…


城乃内さんは由里香をじっと見つめた後、ふっと勝ち誇ったような笑みを浮かべた。


「貧相な身体…そんなんじゃ早坂君を誘惑するにも出来ないわね。かわいそうに…心配も杞憂だったみたいね」

「なっ………Aカップを舐めんじゃなーい!!!!!」


由里香は顔を紅潮させたかと思いきや、次の瞬間、栓をひねって手にしていたシャワーを思いっきり城乃内さんの顔面に向かって浴びせていた。


「きゃあっ!!」

「ふざけんな!!アンタが何カップあるかなんて知らないけどねぇ…早坂君は見た目だけに絆されるようなそんな軽い男なわけないじゃない!その辺の男と早坂君を一緒にするなんてサイテー!!この性悪女っ!!!」

「何すんのよ!!ヤダ、信じらんな〜いっっ!この暴力男!!」

「男っ!?アンタいくら胸ぺちゃだからって、性別まで男になった覚えはこっちはどこにもないわよ!!」

「男みたいなもんじゃない!!どっちも変わんないわよ!!」

「なんですってぇ〜〜!!!?」


呆然としてる間に、目の前はいつのまにか戦場と化していた。


お互い何やら言い争いながら(もはや内容は聞き取れない)勢い良く飛び出すシャワーを浴びせ合い、仕舞いには手元にあった桶を投げ出す始末。下手したら本当に怪我しかねない状態だ。


どっ、どうしよう…

何とかして止めなきゃ…!


そう思い湯船から上がろうとした瞬間、浴場の入り口で呆然として佇む香帆先輩たちの姿に気が付いた。

香帆先輩の右手の握られた拳がぷるぷると震えているのが分かる。


そして次の瞬間―――――、浴場に強烈な怒鳴り声が響き渡った。


「貴方達、何をしているの!!いい加減にしなさーいっ!!!!!」


















更新ペースがもはや半年に一度という…本当に酷い話です。(涙)たくさんの応援メッセージやコメント本当にありがとうございました!!遅くなってしまいすみません。

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