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第21話「妄想なんかじゃない!?」

ずきんずきんと痛む頭に耐えきれず、閉じていた重い瞼をゆっくりと開いた。


最初に視界に入ってきたのは自分の部屋のものではない見知らぬ天井。


………ここはどこ?


どうやらソファーか何かに寝ていたようだ。仰向けになっていた体を起こそうとするがうまく力が入らない。


っていうか今まで何してたんだっけ……。



なんとかして首だけ動かして辺りを窺ってみるがぼやけていてよく見えない。顔に手を持っていき確認するように探ると、やはり眼鏡をかけていなかった。


ホントにここはどこなんだろう?

なんで………。


思いだそうとすると、いきなり激しい頭痛が襲ってきた。


「……っ」


い、痛い……なぜ頭痛が?


「起きたのか?」


その声が聞こえた瞬間、思わず息を呑み込んでしまった。


「その声っ……早坂君!!?」


は、えっ!?なんで早坂君がこんなところに!?


慌てて飛び起きるが、その反動で頭にがんっと重い衝撃がやってきた。


「ぃっ……たぁ」


ずきんずきんずきん………


あまりの痛さに顔を歪めながらも、頭は大混乱状態に陥っていた。


な、な、なんで早坂君がいるのっ!?


「あっ、あのっ、なんで私こんな――というか早坂君はなんでこんなとこに、ってえっ、まって、そもそもここは――」


「おい、落ち着けとりあえず。眼鏡はとなりの低いテーブルに置いてあるから先にそれかけろよ」


私は思いっきりうろたえながらも、言われるがまま眼鏡をかけた。


あ……


「ここ、はやさかくん、の家……?」


見たことのある造りだった。どうやら寝ていたのはリビングの大きな白いソファーだったようだ。


早坂君が呆れたようにため息をつく。


「ったく……慣れないもんなんて飲むからこんな事になんだよ、馬鹿」


「わたし……な、なんで早坂君の家に……?」


「覚えてもいないのか?お前、歓迎会で酒飲まされてぶっ倒れたんだよ。でもお前の親、夜までいつも帰ってこないみてえだし。俺の家がお前の家に一番近いし、仕方ないから連れて帰ってきたんだよ」


そう言われて顔がまるで火が吹くように赤くなる。


お、思い出したっ………!!


そうだ、私お酒って分からなくてそのまま酔って気持ち悪くなっちゃったんだった……!!


「ごっ、ごめんなさいっ!!すごい迷惑かけちゃって………!」


わわっ、本当に私ってばなんてことを!

ありえないでしょ、普通!あんな少量で酔うとか情けなさすぎるからっ!!!


早坂君、あたりまえだけどあんなに迷惑かけたんだからきっとものすごい怒ってるよね?

どっ、ど、どうしよう……!今度こそ確実に殺されるかもっ・・・!?


「あーおーい?」


「はっ、はいっ!?」


うぅっ、とうとう最後の審判が下されちゃうんだ……!

煮られるの!?それとも焼かれるのっ!?あ〜〜っ、誰でもいいからホントに助けてくださいっ!!(涙)


「…俺が言ったこと覚えてるのか?」


「………へ?」


だけど早坂君の口から飛び出してきたのは予想外のものだった。


早坂君が言ったこと……?


「っ!!?」


考える間もなく顔をぐいっと片手で引き寄せられた。

お互いの息がかかるほど間近に早坂君の綺麗な顔がある。


えっ、ええ!?///


頭痛のことなんてすっかり頭から消え去りあまりに突然の出来事に呆然と固まっていると、早坂君はそのまま耳元に唇を近づけて囁いた。


「名前で今度呼ばなかったら¨罰¨だって……言ったよな?」


「………っっ!!?」


色っぽい妙に艶のある低い声に思わず肩が震え、顔が真っ赤になる。


えっ…………………!?

ち、ちょ、ちょっと待って!?

え、じゃあアレは全部 私の妄想なんかじゃなかったってこと………!?

小百合さんや彰さんのことも早坂君とのキスもっ!!?

ま、まって…!!いきなりそんな事言われても理解できないってばぁ〜〜〜!!!


パニックどころじゃなかった。まさに頭は真っ白という形容がふさわしいだろう。受け止めきれない現実に脳で理解できる容量はとっくに超え、回路は今にもショート寸前だった。


慌てふためく私などお構いなく、早坂君は私の顔から眼鏡を外すとゆっくりと顔を近づけてきた。


「あ、うえっ!?ちょ、ちょっと、早坂くんっ!?(///)まってまってまってぇ〜〜〜!!!」


我に返り慌てて手で近づいてくる顔を止めようとするがあっけなく阻止されてしまい、手首をぎゅっと掴まれたまま唇が重ねられた。


「んっ………ふ……」


唇を甘噛みされ、角度を変えては何度も口付けられる。


な、な、なんでまたこんな事に〜〜!?///まさか夢っ!?これも私がまた作り出した妄想なのっ!!?


いつのまにかソファーに押し倒され、キスは無遠慮に深くなっていく。


必死に顔をそむけようとしても、しっかりと顔を固定されてしまい動かすことが出来ない。抵抗らしい抵抗も出来ず、あまりの甘さに体の芯まで溶けだしてしまいそうだった。


どうしよう、なにも考えられなくなってきた………


そう思って諦めようとしたとき、突然リビングの扉の方から


「みーちゃった♪健人君、こんなところで何やっちゃってるのかなあ〜?」


と、揶揄するような声がかかった。


驚いて慌てて体を離し、目に映ってきたのはニヤニヤと面白そうに笑っている彰さんの姿。


「兄貴っ!?」


ええっ!?まさか今の全部見られてたっ!?///


恥ずかしさのあまり言葉をなくしてしまう。


「いやぁー久しぶりにイイモノ見せてもらっちゃったなあ。まさかこんな無愛想な弟のキスシーンを拝める日が来るとはねぇ?まぁ見られたのが姉貴じゃなくて俺だったことが不幸中の幸い、かな?」


彰さんはくすくすと嬉しそうに笑っている。

早坂君はちっと舌打ちすると


「クソ兄貴」


と小声で毒づき、そのまま

「葵衣、帰るぞ」と言い放ってすたすたと玄関へ向かっていってしまった。その表情は彼にしては珍しくどこかバツの悪そうにしている。


リビングにとり残された私はこの状況をどう対処したらよいのか全く分からず、顔を俯けたままソファーからなんとかして体を起こした。




彰さんのことが恥ずかしすぎて直視できないよぉ〜〜〜〜!!!

よりによってあんなところ見られてたなんて………!////


「もしかしたらこれも夢かもしれない」とわずかな期待をもって思いっきり頬をつねってみるが、見事に期待は裏切られ、つねった頬はものすごく痛かった。さあっと顔が青ざめる。


ゆ、ゆめなんかじゃない……


再びショックで固まっていると、

「早くしろ!」と早坂君の怒鳴り声が玄関から聞こえ、慌てて体を動かした。


そんな様子を見てか彰さんは

「ぷっ」と小さく吹き出す。


「ごめんねー葵衣ちゃん。どうやら俺、王子の機嫌損ねちゃったみたい」


「えっ!?あ、あのっ、べつに」


「くすくす…あんな俺様な王子様だけど見捨てないでやってね〜ご機嫌とりは葵衣ちゃんに任せたよ♪」


そう言って彰さんは片目を瞑った。


顔がのぼせたように赤くなるのをおさえることが出来ず、小さくぺこりとお辞儀をして早坂君のあとを追いかけた。


もうなにがなんだか分からないよお〜〜!!

一体全体なんでこんな事になっちゃったの!?

早坂君の顔が恥ずかしくて見れそうにないし…彰さんにもとんでもないとこ見られちゃったし……


早坂君が家まで送ってくれることも拒んで、いっそこのままどこかに逃げ出してしまいたい。

もちろんそんな事をした後の報復が怖くて出来るはずもないのだが…




私、こんな事ならずっと妄想の住人でいたかったかも(涙)


そう強く望まずにはいられなかった。

ここまでお付き合い頂いてありがとうございました!!(●^▽^●)次話からは閑話として健人視点に入る予定です。もしよろしければ、評価・感想お待ちしています♪

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