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第20話「映研歓迎会(5)」




それからの歓迎会は無法地帯、とまでは言わないまでもまさにどんちゃん騒ぎだった。


「今日は無礼講だぁー!!オラァ、お前らもどんどん飲めよぉ!!」


先陣きって盛り上げているのが伊淵先輩だからか、皆やたらにテンションが高い。一発芸大会みたいなのをして盛り上がっている先輩たちもいれば、後輩と仲良く談笑している先輩もいる。



なんだか異様な盛り上がりについていけず、端っこの方で談笑に耳を傾けながら早坂君の様子をちらりと窺った。

案の定というのだろうか。早坂君と芳沢君の周りには人だかりが出来るほどの、やはりすごい人気ぶりだ。


「ねぇねぇ、早坂君ってどこの中学校だったの?」


「好きな芸能人とかいるぅ〜?」


先輩は勿論のこと、由里香や城乃内さんも必死に話しかけている様子が目に入ってくる。


本当に人気者だなあ〜早坂君も芳沢君も。

話しかける隙なんて1ミリもないぐらい質問責めにあっていて、やはりこういうのは苦手なのか、愛想良く質問に答えていく芳沢君とは逆に早坂君は不機嫌そうにむすっとして黙っている。


・・・?

はぇ?

なんだろう?そんな様子を見ていたらもやもや、というのかな?心の中にわだかまりがつっかえた感じがする。

なんでいきなり?


どこか釈然としない気分に急になったことに私が首を傾げていると



「めがねちゃ〜ん!盛り上がってるかぁ〜!?」


といきなり後ろから声がかかった。

驚いて振り返ると、そこには顔を真っ赤にしている伊淵先輩の姿があった。


ど、どうしたのかな?

なんで伊淵先輩はこんなに顔が赤くなっているんだろう?

心なしか足取りがふらついている気がするし・・・


目をぱちぱちと見開いて返事が出来ないでいると、伊淵先輩はそんな私の様子を気にした風でもなく私が左手に持っていたコップに目をやると、


「なんだぁ〜?ぜんぜん飲んでねぇじゃねーか、めがねちゃん!ちっ、しょーがねぇなあ!おーい!吸血鬼オンナ―――!!」

「ちょっとぉ!?誰が吸血鬼オンナですってぇ!?」


直ぐさま反応してしまっているあたり¨吸血鬼オンナ¨と認めてしまっているようなものなのに、香帆先輩は怒り心頭でまったくその事には気付いてないらしい。


「いーからいーから!あんの甘ーいヤツまだ残ってんだろぉ?」


「はぁ!?あんたそれ以上飲もうとしてるわけっ!?いい加減にしなさいよ!学校側にこんなとこで飲んでるなんてバレたら、停学処分じゃすまなくなるかもしんないのよ!?だいたい、なんでちゃっかり内緒でいつのまにかこんなもん持ち込んでるのよ!」


「だぁ〜いじょぉ〜ぶだって〜!ちょっとだけなんだしよ!今日だけ今日だけ♪」


そう言って伊淵先輩は私からコップをとりあげると何かを注いで、

「ほらよ♪」と嬉しそうに私に手渡した。


な、なんだろうこれ…?薄いピンク色してるけど……。


くんくんと嗅いでみると、甘い匂いがする。

ジュースかな?いい匂いがする……。


伊淵先輩に促されるまま、こくんとそれを一口飲んでみる。


「どーだ?」


「おいしい……」


口内にじんわりと甘みが広がる。


そーかそーか、と伊淵先輩は笑みを浮かべると、満足したのかまた別の席に移動していったようだ。


私はそのままコップをまた口に付ける。


なんのジュースだろう……?

何の味かはよく分からないが、程良い甘さですごく美味しい。


飲んでいく内にだんだんと視界がぼやけてきた。体もなんだかぽかぽかとしてきて気持ちいい。


「おい!?」


「……ふぇ?」


ぼんやりと霞む視界に入ってきたのは早坂君の姿だった。


「はやさかくん〜?」


なんで早坂君がここに?みんなは?

なんだか思考が上手くまわらず、ぼんやりと早坂君を見つめ返す。

だが知らずのうちに口に出していたのか、早坂君がそれに答える。



「直樹が相手してる。てかお前ヤケに顔が赤―――」


言いかけて早坂君は私のコップに目を移した。


「っ!?これ酒じゃねーか!!なんでこんなもん飲んでんだよ!?」


お、さけ………?

ああ、だからこんなに目が…まわるのかな?


頭の片隅で妙に納得してしまった。


というかちょっと気持ち悪くなってきた気が……


「葵衣っ」


視界がぐらぐらと反転していくのを止めていくことが出来なかった。


体がフラフラしてのぼせたように熱い。

吐きそう………。






早坂君に呼びかけられた声を最後に、意識が途切れた。


なにか暖かいものが私を抱えてくれたような気がした。

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