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第17話「映研歓迎会(2)」


香帆先輩にとりあえず座るようにと促され、私たちは自分達と同じ、新入生の子達が集まっている場所へと向かった。


「おっ、また新しいメンバーが来た来た♪こっちに座りなよ」


一番手前に座っていた、目がくりくりとして可愛い男の子が軽く手を挙げて隣の空いている席を指さした。

頭を下げ、お言葉に甘えて席に着く。


「あ、ありがとうございます」

「いえー!」


そこらへんにいる女の子なんか比にならないぐらい、可愛い満面の笑顔で出迎えてくれる。


なんだか可愛いなあ。

でも男の子に可愛いなんて言ったら変なのかな?


隣にいる由里香は先程の香帆先輩の言葉を相当ひきずっているらしく、気の乗らない様子で「よろしくー…」と適当に挨拶をしている姿に私は苦笑してしまった。

事情はよく分からないが、余程ショックだったらしい。


「ねぇねぇ、まだ来てない人もいるけどさ、うちら高一だけで自己紹介しちゃわない?」


そう提案を持ちかけてきたのは確か同じクラスの渡邉聡子ワタナベサトコさん。


渡邉さんも映研だったのかあ。

今までクラスでいつも挨拶程度でそんなに話したことがなかったから知らなかった。


「いいよー」とそう言おうとした瞬間―――――、

突然、音を立てて勢いよく開かれた扉に皆びっくりして振り返った。


…………………………え?


目に映し出された姿に唖然として声を出すことが出来ない。


「あー良かった良かった!ギリギリ間に合ったじゃん。俺って天才?」

「うるせーな……もともとお前が日誌出すの忘れたりしなきゃ、もっと早く来れただろ」

「まぁまぁーいいじゃん?結果オーライってことで♪」


夢?これは夢だよね?

よりによって今一番見たくなかった人がこんなとこに来るわけないじゃない。


『早坂君っっっ!!!?なんでここにっ…芳沢君も……どうしてぇ!?』


席に座っていた女の子達が悲鳴をあげる。

うん………今聞こえたような気がした名前も全部私の幻聴だよね?

うーん、やっぱり昨日の寝不足が原因かなあ?はは………


「どうしてって………映研部員だから?」


芳沢君と呼ばれた男の子が、面白そうに言う。


「ええ―――っっ!!?」


わっ……!!


こちらをいきなり向いた早坂君と目が合う。

早坂君の目が僅かに見開かれるのが分かった。


ゆ、夢なんかじゃない………!


目をそらしたい衝動にかられるが、射抜くような視線に何故だかそらすことが出来ない。

彼の口が何かを呟いたようだったが、女の子達の騒ぐ声で聞き取ることが出来ない。

なんだろう……今何か言おうとした?


「きゃーっ、あおいっ!!やっぱり香帆姉の情報は嘘じゃなかったぁ!!やっぱり映研に入って正解だったね!!」


由里香が興奮したように私に抱きついてきた。


まさか由里香さん、アナタ…

早坂君がいるから映研に入ったとか……?


「……ってあの女誰よっ!?なんであんなに早坂君達に近づいてるわけぇ!?」


いきなり豹変した由里香の表情に驚いたが、言われるままに視線を戻してみると目を離していた隙にいつのまにか一人の女子生徒が早坂君に張り付いていた。


「やだぁ、早坂君も映研だったの??私、Dクラスの城乃内美優ジョウノウチミユって言います♪すっごい早坂君のファンだったんで、まさか一緒の部活だなんてすっごく嬉しすぎて涙が……」


わあ……すごい演技派だなあ……

数々のオーバーなぐらいの彼女のリアクションに目が思わず釘付けになってしまった。


「ちょっとアンタっ!!なに可愛い子ぶってんのよ!!図々しいにも程があるんだからっ」


…………ん?


隣にいたはずの由里香もいつのまにか凄まじいオーラを放ちながら早坂君達のところに近づいている。


「なぁに?ヤキモチ?私が余りに可愛いからってひがまないで欲しいなあ?」

「な、に、をぉ〜〜!?はんっ、バッカじゃないの!?アンタのどこにヤキモチを焼けるのか私が聞きたいぐらいよ!!早坂君がアンタのブリブリした態度に気持ち悪がってるの全然気が付かないわけ?」

「なっ!?なんで見ず知らずのあなたにそんな事言われなくちゃならないのぉ!?」

「酒井由里香ですぅ、以後お見知り置きを〜」

「誰があなたなんかと!」


ぅわあぁあ〜〜………

なんだかすごい火花が散っちゃってるけど……でもそんな事よりっ!!


ちらりと早坂君の表情をうかがうと…


ひぃいいっ……!!こっ、怖すぎる……!!


心の中で悲鳴を上げる。表情はとんでもなく無表情だけど、早坂君に纏わりついている冷たい何かはもはやブリザード並の勢力がある。

そんな様子にもまったく気付かず、二人の言い争いはどんどんエスカレートしていってるし、先輩も含め周囲の人たちも呆然として見ているし……


このままじゃ不味いのでは…


冷や汗が背中に伝っていくのが分かる。


すると、


「おっと、もう皆集まってるみたいだな」


とドアが開かれて二人の長身の男子生徒が現れた。


い、板倉先輩っ………!!ナイスタイミングです!!

あぁ、あの優しい笑顔が今なら神の微笑みにさえ見えますっ!


「じゃあそこにいる一年生も全員着席してくれるかな?」


早坂君がさっさと歩いて席に着き、その隣に何故か芳沢君が苦笑しながら腰を下ろした。


うっ………だからなんで敢えて私の目の前に座るの?


また心臓が高鳴り始める。

我に返ったらしい由里香と城乃内さんも慌てて着席した。


「おい、栄司。一年の雪平ってヤツが病気で休みだってさ」


板倉先輩と一緒に入ってきた金髪に染めた人が手元のメモみたいなものを見ながら話す。


「そっか、残念だな……じゃあ雪平君っていう子には後でプリント渡さなくちゃな」


そう言って板倉先輩は部室内を見回すと、微笑みながら続けて言った。


「待たせて悪かった。早速だけど、恒例となった新入部員歓迎会を始めよう」


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