記憶の中の彼女。
行き先は、この前大地震があって壊滅的なダメージを受けた地方都市だ。
ボクの親戚、祖母の実家があるという、そこに様子を見に行ってくれと言われ、列車に飛び乗るため。
駅に急いだ。
そんな時。
彼女は、券売機前で知っている顔がウロウロしていた。
中学の時、その視界の隅でちらちらしていた彼女だった。
なぜ自分の視界の隅にちらちらしていたのか分からなかった。
特に親しいわけでもなく、ただのクラスメートなだけだったと認識している。
そんな彼女だった。
声をかけると、彼女も、同じく故郷を見て来てくれと、頼まれたらしい。
同じ行き先ならと、切符を購入した。
今時携帯端末で購入もできるはずなのにと思いながら。
彼女は車窓にほおづえをついて、流れている風景をただ眺めている。
その横顔を見ながら不思議に思っていた。
中学で面識はあって、名前が思い出せない、でも記憶の中では同じ席または席から近く何度か喋ったりしてたはず。
特に気にはかからない、そうだ例えば、視界の隅でいつも横切っているような、イメージとしてはそれ位の女子。
なぜかふと思い出した。
まあ、かく言う僕もその他大勢のモブ男であって。
もったいなくも女の人をそんな風に思っている時点で、お前は女子とお付き合いするだけの資格など到底なく、百万年後にでなおしてこいと、人類から指弾を浴びると覚悟して言っている。
そう言った自分の過去を棚に上げている自分が結局ダメなんだろう。
数えてみた。
彼女に会うのは二度目だった。
一度は中学の頃同じクラスで特に意識していない。それでいて、絶えず視界の隅にいたような気がする。卒業式の日に、かき寄せの色紙が回ってきて、何かいまでは赤面する、セリフを書いたような気がする。
二度目は、大学受験の時大学専用の通学バスの中だった。三年と言う月日は、こうも女の子から、女子、そして女性へと変えていくものか。
そう、吊革を持った手に、無駄に力が入った。
「大丈夫だから」、彼女はボクにこえをかけた。
彼女の横顔をみながら昔の事を思い出していた、ボクを引き戻した。
聞くと、地方で大規模な地震があり、母方の田舎の状況と、お見舞いと、何かお手伝いできることがあればと、これからボランティアも兼ねて行くという。
たまらず聞いてみた、名前を。
彼女はクスリと笑った。
憶えてないの?
と、彼女。
確か中学の時同じクラスの。
違うわ。
彼女。
ジッと僕の瞳を覗くように。
大きくなって。
そうぽつりと彼女は呟いた。
やがて駅について、彼女に到着したことを告げようと辺りを見渡した。
知らない間に降りたようだ。
おばさんは、祖母のいとこの孫らしい、続柄は何ていうのだろうと思いながら、スコップやらレーキ、鍬などで泥や、家の片付けに取り掛かった。
数日が過ぎ、随分整理され、いよいよ最終日となった前の晩。
なかなか寝付けなかった、随分疲れがたまったからだろう。
フト中庭を見ると、人が立っていた。
不思議と怖くはなかった。
表に出てみた。
少し驚いた。
彼女が立っていた。
その時、理解した。
ぼくが幼い時、亡くなった母だった。
そう、間違いなく母だった。
ただ、その年齢が見た感じが今の僕と同じ位の年格好だった。
だからずっと前から知っている感じがしたのか。
記憶の中に潜り込んでいたんだろう。
彼女はものも言わず佇んでいた。
あこがれていた母に逢えたのだ、涙があふれだした。
ぼくが故郷に帰ってくるから、きっと迎えに来てくれたのだろう。
そう思った僕に答えるようにニッコリ笑って僕を抱きしめてくれた。
明くる朝、その温かさだけがぬくもりがまだ残っていた。
これは不思議な、不思議な母の故郷での話。
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