Stage2-3 魔女の予言。
こうして僕達の銃士入団試験が始まった…
(とは言いつつ最初の課題は草むしりだけど…)
僕たち四人+ダルタニャーは、城壁沿いを歩き回り、"ちゃんと作業しています"とアピールできそうな草むらを探していた。
程よく草が生えた場所を見つけると、全員一斉に腰を下ろす。
そして、無心で草を抜き始めた。
その姿はまるで――全校朝会で校長先生の長話を聞きながら、
右手だけで周囲の草を根絶やしにしていた、小学生時代の僕そのものだった。
やがて周囲の雑音が消え、僕目の前には抜いた草の山ができ始める。
「…っと!」
(どこからか声が聞こえる…)
「ちょっと!」
集中していたせいで後ろから呼ばれた声に気が付かなかった。
今いいところだったのに…と思いながら、
声の主は誰かと後ろを振り向くと…そこには。
第一フロアのボス攻略で、最後に美味しいところを持って行った
「九条 かぐや」が冷ややかな目で草むしりをする僕を見下していた…
「あ、久しぶり…」
「久しぶり!じゃないわよ!
何回も呼んだのに何で無視するのよ。」
「あぁ、ごめん、ちょっと草むしりに集中してた。」
僕と九条の会話を聞きつけ、優達が集まって来る。
気が付くと、九条を僕達5人で取り囲む形となった。
「初めまして、日向 優です。」
「お、俺、立花 樹!!」
「佐々木 聡…」
「俺っちはダルタニャーにゃ!」
僕のギルドメンバーが九条に次々と挨拶をする。
樹に関しては九条の美貌に見惚れて顔がニヤけている。
(こういうのを鼻の下を伸ばすっていうのかな?
初めて見た…。)
「こんにちは、九条 かぐやよ、よろしく。」
あっさりとお互いに自己紹介は終わった。
「それで一体何の用?」
わざわざ僕に話しかけてきたんだ、何か理由があるはず。
「その草むしり、ずっとしていても意味ないわよ?」
「「「「「えっ!!」」」」」
青天の霹靂の告白に全員驚く、なんなんらんNPCであるはずのダルタニャーまで驚いていた。
「ど、ど、どういうこと?」
草むしりのスペシャリストとして生きていこう考えていたところ、突如現実に戻されたため、少し動揺してしまった。
僕達の驚いた顔が面白かったのか、九条はドヤ顔で答える。
「このクエストの本当の目的は草むしりではなく、
城壁の外側にいるNPCからある情報を聞くことなの。それが完了しない限りクエストの進行はないわ。」
(何てこった…)
「それで、どのNPCから話を聞けばいいわけ?」
「それが分かれば苦労はしない。
今私のパーティメンバーが手分けしてNPCから
話を聞いているの。
貴方達に声をかけたのは人数を増やして効率を上げるため。」
「なるほど、人海戦術ってわけね…
オーケー、僕らはどこを担当すればいい?」
「今、城の東と北側聞いて回ってるから、貴方達は西側お願い。」
「分かっ…」
「了解です!!!」
僕が言い終わる前に樹が大声で返事をする。
(急にどうした…)
「よし!行くぞ!お前ら!」
気合い十分の樹は僕達の先頭に立ち、ずんずんと進んでいく。
(全く、惚れっぽい男だ…)
城の西側に到着した僕達は効率を上げるため、
少しばらけて話を聞くことにした。
九条からの助言を思い出しながら、それっぽいNPCを捜す。
城壁の外側をキョロキョロしながら歩いていると、
なるほど、確かに近衛兵や庭師など沢山のNPCがいる。
(これ全員に話しかけるわけぇ?めちゃくちゃ大変じゃん…)
だが話しかけなければ終わらない。
フンッ!と気合いを入れて取り敢えず近くを巡回していた近衛兵に話しかける。
「あの〜…」
「お!何だ?お前たちもしかして銃士入団希望者か?
訓練官は一体誰だ?」
「レッグストロング……………さんです…」
「あちゃ~レッグストロング団長か~~!
あの人の試験は厳しいぞ〜
今年は何人合格できるかな?
ま、せいぜい頑張れよ!」
少し話しかけただけでペラペラと喋ってくれる。
まるで女子に話かけられたて嬉しくなり、
聞かれていない事まで喋るクラスメイトの
岡田君みたいだ(あれ?岡部だったけ?)
(ともかく、このNPCの話は関係無さそうだ。)
次に誰に話しかけようかな〜っとNPCを吟味していると。突然肩を叩かれる。
(ん?)
後ろを振り向くと肩にあらかじめセットされていた指が僕の頬を優しく刺した。
「ひっかかった笑」
僕の頬に気やすく触る不届きものはどこのどいつだと、目線を相手の顔に向ける。
すると、そこには見覚えのない、ショートカットがよく似合い、恐ろしく美形な男子生徒がびっくりするくらいの笑顔で立っていた。
「…………だれ…?」
その顔に心当たりがなかったため、思わず声に出してしまう。
「あはは~、いや~ごめんね急に、
噂の黒猫ホームズ君にやっと話しかけるチャンスが来たから
思わずイタズラしちゃった(笑)」
(………)
声を聞いて気がついた。この人、女子だ!
(誰だ?っていうか黒猫ホームズって僕のこと?)
唖然としていると、目の間にいる美男子系女子生徒は言葉を続ける。
「私は神宮寺 つかさ(じんぐうじ つかさ)、君のことは前から知っているし、姫からも話を聞いてるよ。」
(どこかで会ったことあるっけな……………
このルックスとキャラ、話したことがあれば忘れないと思うんだけど…
うーん…ダメだ、思い出せない。)
(それよりも姫?…ヒメ…ひめ…………もしかして)
「もしかして君、九条さんの友達?」
「おお!ピンポーン!
今の会話だけでそこまでわかっちゃうんだ、噂通りの切れ者だねぇ!」
神宮寺は少し茶化すようにそう言った。
しかし、九条、友達いたんだ…ぼっちだと思ってた…。
突然神宮寺は急に真面目な顔になり、
じっと僕の目を見つめてくる。
(な、なに急に…そんなに見つめられると照れるんですけど…)
「君、やっぱり綺麗な瞳をしているね…」
(あー、久しぶりに言われた。)
僕の虹彩は少しだけ緑がかっていて、小さい頃はそのせいで散々からかわれた。
あの時からかってきた渡辺と久保だけは絶対ゆるさねぇ…
ついつい過去の嫌な記憶をを思い出して本題からそれてしまった。
話を戻そう。
「それで…何か僕に用があったんじゃないの?」
ジト目で神宮寺を見る。
「つれないね~、まあ予想通りだけど!」
神宮寺はあっけからんとそう言い、さらに言葉を続ける。
「いや~NPCからの情報集めに苦戦しているようだったから
少しアドバイスしようと思ってさ。」
(九条から今探しているところと聞いていたけど…もしかして)
「情報を持っているNPC見つかったの!?」
長いお使いクエストから解放される希望が見え、思わず食い気味に答えてしまう。
その食いつきっぷりに神宮寺はにやりと口をゆがめる。
「見つけたよ、教えて欲しい?」
その悪魔のささやきに、哀れな子羊、一条玲は頷くしかなかった…涙
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僕より優位に立った神宮寺は得意げに話し始める。
「でわでわ~、黒猫君に問題です!」
(めんどくさいタイプだ……。)
僕は露骨に嫌そうな顔をしたが、
神宮寺は気が付いているか無視をしているのか分からないが
気に留めない様子で話を続ける。
「重要な情報を持っているNPCのキャラクターはどんなデザインをしているでしょうか?」
神宮寺の質問について集中して考えるために、左手を顎に当て考える。
(うーん、キーキャラクターのキャラデザか~…
ゲームの世界に限らず、現実の世界で考えてみるとどうだろう?
やっぱり物知りと言われる人は長く生きている人だ…
ということは…)
「老人NPC?」
「うーん、もう一声!!」
(う、うぜ~。しかしもう一声か…もうちょっと考えてみよう…)
(ゲームには必ず"プレイヤーを誘導する存在"がいる。)
("話しかけられやすい人"そして”自然に情報が集まる人物”…)
(老人、子供、商人、物売り……。)
(待てよ、ダルタニャーが言っていたこの街の名物は確か…)
「占い師?」
「おお!せいか~い!
いや~これだけのヒントで思いつくとはさすがだね~!
ご褒美に占い師NPCがいる場所を教えてあげましょう(笑)」
(バーロウ、俺に解けない謎と女子の心はないぜ…(笑))
自画自賛しながら、神宮寺の次の言葉を待つ。
「そのNPCの場所はズバリ~~~
あなたの、心の中です…(笑)」
(う、うぜー、あとつまらない。)
話を早く進めようと神宮寺のボケに対し、適当に相槌をうつ。
「はいはい、おもしろい、おもしろい。
で、場所は?」
「ブーーーー!冷たい!!
女の子の話にはオーバーリアクションで返さなきゃモテないぞ!」
(ふぅ、この人もまた面倒くさい…)
「はい、じゃあもう一回ね
あなたの、心の中です…」
僕の一回目のリアクションに不満があったようで、神宮寺はやり直しを求める。
(そこまで言うならいいでしょう、桜元地区のリアクション王と呼ばれた実力を見せてやるよ…)
「あははははは!」
僕は大げさに膝を叩き、涙まで拭う演技をする。
「天才です!参りました!僕の心の中ですか〜!」
(僕の渾身のリアクション!どうだ!!)
その姿を見た神宮寺はドン引きした顔で
冷たくひと言
「わざとらしい…」
(なんでだよ!そっちのリクエスト通りに反応したじゃないですか!)
「えぇ…」
ここまで体張ったのに、やり切れねぇ…
「まぁ頑張りは伝わったから笑
占い師NPCはね〜、北の城壁と西の城壁が
交わる所に居たよ!
私は北側担当だったからすぐ見つけられた笑」
「北側城壁の端ね!
ありがとう!!」
そう言うやいなや、神宮寺の側らか離れるためにダッシュする。
「あ、ちょっと!」
神宮寺はまだ何か言いたげだったが、無視無視。
(この神宮寺、おちゃらけて見えるけど、
僕の言動や行動を観察している節がある。長く一緒にいるのは危険だ…)
「優!NPC見つかったよ!
北側城壁の端っこにいるらしい!」
庭師系NPCと話していた優に横から声をかける。
優は今話しているNPCにお礼を言い会話を切り上げる。
(NPCにまでしっかりお礼を言うなんて、律儀な男だ…。)
「本当?」
「ほんとほんと!
情報提供者は占い師NPCだって!
皆と合流して行こう!」
優と合流した後、続いて樹、聡ついでにダルタニャーを拾い、北側城壁と西側城壁が交わる場所に向かう。
しかしそこには、近衛兵・浮浪者・商人の3人のNPCいるだけだった。
「あれ〜占い師いねぇじゃん?」
樹が僕達が持つ疑問を声に出す。
「あれ?ここいるって言ってたけどな…」
まさかあの女、僕に嘘をついたのか…
少しだけ逆恨みしつつ、3人のNPCを観察する。
近衛兵は辺りを警戒する様子を見せながらも、時折大きなあくびをするなど、どこか抜けている様子で警備をしている。
商人は自分の仕入れた商品を僕達に売り付けたいのか、先ほどからチラチラとこちらを見て様子を伺っている。
浮浪者はフードを深く被っているためこちらからは様子が分からない…あれ…?
「あの浮浪者が情報提供者だ!」
僕の声に4人が驚く。
「え?なんで分かったの?」
「おい従者、教えろにゃ!」
優とダルタニャーはなぜ僕が浮浪者=占い師NPCだと考えたのか気になるみたいだ…
どれ、いっちょ答えてやるかと口を開…
「占いが名物の街なのに、占い師が見当たらない、兵士は警備、商人は商売に夢中。
でも、あの浮浪者だけは違う。フードで顔を隠したまま、ずっとこちらを見ている。
ゲームなら、ああいう"いかにも怪しいNPC"がイベント担当なんじゃない?」
聡が代わりに説明してくれる。内容も僕の考えていることとほとんど同じだ。
「そ、そういうことです…」
これ以上付け加えることもないため、思わず言いよどんでしまう。
「なるほどな~」
「納得ニャ!」
樹とダルタニャーは聡の説明で納得できたみたいだ。
とはいえ、あくまで推測の部分が多い。
だから僕も早く話しかけて答え合わせがしたい。
「こんにちは〜」
僕が浮浪者NPCに話しかける。
「いらっしゃい…」
NPCの声からどうやらこのキャラは老婆のようだ…
フードの奥からこちらを見つめる視線だけが妙に鋭い。
まるで僕達を値踏みしているかのようだった。
そして同時にポップアップが表示される。
ーーーーーーーーーーーー
▶ 占いをする
世間話
ーーーーーーーーーーーーー
占いという選択肢がある。どうやら僕の予想は当たっていたらしい。
世間話にカーソルを合わし、決定する。
すると占い師はぽつぽつと話し始めた。
「あんたら知ってるかえ?
何者かに女王のもっていた首飾りが盗まれたらしい。
そんでこの国の国王は部下たちに捜索命令をだしている。
最近入団希望者を多く募っているのはそのせいさ…。」
「なるほど、これがクエストを進めるための情報か…。」
納得したように聡がつぶやく。
「これで、最初のお使いクエストは完了だね!」
「やっと次に進めるぜ~!」
優も樹もお疲れのようだ。
僕たちはようやく肩の力を抜いた。これで面倒な草むしりも終わりだ。
じゃあ、レッグストロングのところに完了報告に行くかと
皆で話していたところ、占い師NPCが僕達を制止した。
「そこのお主、手をみせなさい。」
その視線はどうやら僕のことを指しているらしい。
なんだか無料で占ってもらえそうな雰囲気のため、
皆に促されながら右手を出す。
「うーーむ…」
占い師NPCは難しい顔で僕の手(恐らくはステータス情報)をみている。
そして突然叫ぶ。
「お前は多くの命を奪う。」
沈黙。
占い師は震える指で僕を指差した。
「殺戮の悪鬼となる。」
「帰れ。」
「今すぐ、この国から去れ!」
辺りが静まり返る。
誰一人、口を開かなかった。
占い師は怯えたように一歩、また一歩と後ずさる。
その視線は、まるで人間ではなく"化け物"を見るようだった。
第4話に続く…




