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  作者: anipa
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始まりの終わり

早朝、人々はいつも通り目を覚ます。

―――はずだった。




「君たちには重要な役目がある。その責任を――」今にも音が途切れてしまいそうなスピーカーを介して男の声が響く。周りは静かで薄暗く、どこか煙を()いたような淀みが感じられた。それを閉じ込める壁は黒く無機質で、僅かな光を鈍く反射していた。ステージの上に立つ男の前には十数人程の人の群れがあり、それは寸分の狂いもなく整列していた。人の群れは微動だにせず、まるで電源のついていないロボットのようだった。そんな中、一人の女が大きなあくびをする。周りはそれでも動かない。だが気づかないふりをするのに必死だっただろう。男の声はまだ続く。


数十分もした頃、彼女の姿は別の場所にあった。とはいっても淀んだ雰囲気は変わらず、彼女は薄暗い中を一人で歩いていた。壁には無数の鉄扉が並んでいる。

「死ねって言ってるようなものだよな」

彼女の心の声が外に漏れる。周りに人はおらず、その声は宙に溶けて消えてゆく。彼女はさらに、

「役目なんて知らないよ」

そう続けて上を向いた。彼女は溜め息をつき、部屋に入る。部屋の中の空気はまだましで、折り畳み式の寝台と小さなテーブル、椅子と空っぽの本棚、そしてカーテンのかかった小さな窓があった。彼女は手に持っていたものをテーブルに置くとそのまま寝台に倒れ込み、眠ってしまった。


未明――


彼女の部屋に大きな音が鳴り響いた。心がざわつくような高い音で、目覚ましとしてはとても使えない。その音を聞いた刹那、彼女は目を覚ます。何が起こっているのかを知っているようだった。すぐに部屋を出てどこかへ向かう。

映像通信室(えいしゃしつ)に避難だったはず」

走っていても彼女は思考を止めなかった。足音も、荒くなっていく息遣いも全ての音がサイレンに希釈され薄くなってていく。彼女の脳裏に一瞬最悪の事態がよぎる。足が(もつ)れ、頭が前に突き出るがなんとか持ち直す。彼女が息も絶え絶えで通路の先の扉を開けると、そこでは多くの人々が集まり身を寄せ合っていた。辺りはしんと静まり返っている。そこに漂う不安が空気に混ざった重い空気はまるで鉛のようだった。彼女には耐え難いものだったが、それでも彼女はそれに混ざり(うずくま)る。「外地遠征は延期かな」彼女が心の中でそう呟いたとき、サイレンが鳴り止んだ。


数時間後――


彼女はまた人の群れの中にいた。昨日、男の話を聞いていた者もちらほら確認できる。しかし格好は戦闘服を身に纏いガスマスクを首にかけ、背中にはライフルのようなものと昨日とは全く異なるものであった。

「延期じゃないのかよ」

彼女がそう思ったのも束の間、目の前の大きな扉が金属が軋む音を立てながら開く。彼女は慌ててガスマスクを装着し、それを見つめる。扉の隙間から薄明かりが差し込む。そして外の姿が(あら)わになる。それは、無彩色に染められた灰の降る世界だった。

はじめまして、anipaです。僕の初投稿作品「胚」第一話を読んでくださりありがとうございます。初めてですので表現や語彙などまだ未熟ですが、次回も読んでくださると嬉しいです。

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