表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
花影の約束  作者: 猫宮梟
4/24

カフェでの一幕

数日後、竜也はついにフウカとリアルで会う約束をした。

最初は、そんなことができるわけがないと思っていたが、フウカが「会いたい!」と言ってくれたことで、竜也は少しだけ自分に自信を持てた。

会う場所は、駅前のカフェだった。

竜也は緊張しながらも早くついていた。

その時カフェのドアが開いて可愛らしい女性が入ってきた。

「あの、竜也くん、だよね。」

あぁ、なんて暖かい声なんだろう。

「僕が竜也です」

カフェの中は、静かな午後のひとときを過ごす客たちで賑わっていた。

竜也とフウカの間には、普段とは少し違う空気が流れていた。

フウカが話すたび、竜也の目がどこか遠くを見つめているような気がして、少し心配になっていた。

彼が見せる小さな笑顔や、どこか焦るように頷く姿は、少し無理しているように見えた。


「竜也くん、最近学校どう?」

フウカが、少しだけ気を使って話題を振った。


竜也は、少しだけ時間をかけて答えた。

「学校はまあ…普通だよ。勉強は、相変わらずあんまり得意じゃないけど」


その声には、いつもより元気がなかった。

フウカは何気ないように笑ってみせたが、心の中では気になって仕方がなかった。


「うん、でも、君の短歌を聞いてると、すごく感動するよ。私、竜也くんの短歌って、心がこもってるって思うから」


竜也はその言葉に少しだけ顔を赤らめて笑った。

でも、すぐに手を震わせてカップを持ち上げた。


その手の震えを、フウカは見逃さなかった。

「竜也くん…」


「大丈夫だよ」

竜也はすぐに笑顔を作ろうとしたが、フウカはその表情を見逃さなかった。

彼の笑顔は、どこか無理に作られたもので、心からのものじゃないと分かる。

しかし、フウカはそれ以上そのことについて何も言えない。

沈黙を破るように、フウカが口を開いた。

「竜也くんはなんで短歌を作り始めたの?」

竜也はどこかをぼんやり眺めるように

「なんでだろうな。作り始めたのは中学の時かな。でも今ではこの短歌のおかげでフウカとも」

そのとき、フウカの目の前で、竜也の手がふらっと震えながらカップを持ち、テーブルに置いてあったコーヒーを突然こぼしてしまった。

「わっ!」

フウカが驚いて手を伸ばすが、間に合わず、コーヒーが机の上に広がった。

その瞬間、竜也が肩を震わせ、顔をゆがめた。


「竜也くん…大丈夫?」

フウカは、竜也の顔を見つめ、心配と不安が入り混じった言葉を口にした。


竜也は、何かを必死に隠すように目を伏せ、手を震わせながら言った。

「大丈夫だよ、ちょっと…ちょっと、疲れただけだから、心配...しないで」


だが、その声は少し震えていた。

そのとき、フウカは何かが違うと感じた。

竜也の目に浮かぶ赤み、呼吸の乱れ、そして手の震え。

すべてが彼の体調が良くないことを示していた。

それでも、フウカは自分を押さえて、竜也のことを信じようとしていた。

「無理しないで、竜也くん。少し休もう」


だが、次の瞬間、竜也が一瞬だけ目を見開いたかと思うと、突然椅子から崩れ落ちた。

「竜也くん!?」

フウカは驚いて立ち上がり、竜也の肩を支えようとしたが、その手が空を切った。

竜也は床に倒れ込んで、血を吐きそのまま動かなくなった。


一瞬、店内が静まり返ったように感じられた。

フウカは、何が起きたのか理解できず、ただ竜也の顔を見下ろした。

彼の瞳は、焦点が合っていないようだった。

「竜也くん…?」


その声は、涙で詰まりそうだった。

フウカは必死に彼の肩を揺さぶり、彼の名前を呼び続けた。

周りの客たちがざわつく中、フウカは竜也の腕を取って、必死に支えようとした。


そのとき、店員が急いで駆け寄り、フウカに「救急車を呼びます!」と伝えた。

フウカは、竜也の顔を見つめて、ただただその場に立ち尽くすことしかできなかった。



病院の待合室は、竜也の苦しむ顔が頭から離れず、フウカは座っていることさえできなかった。

何もかもが恐ろしいほど遅く感じられ、心の中で必死に祈るように、ただ竜也が目を覚ますことを願っていた。

それでも、足元がふらつき、心臓が押し潰されそうに痛んだ。

「竜也くん…大丈夫だよね?」

今日は少し長かったかなぁ!でもなんかみんなに響くといいな!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ