初めての言葉
こんばんわ!第3話です!!ぜひ読んでください!
その夜、竜也はパソコンを開き、フウカの配信にコメントを送った。
「得意なことは短歌です」
最初は、少し不安だった。
「こんなこと、言っていいのかな?」
でも、送信ボタンを押すと、すぐに画面にコメントが反映された。
その後、すぐにフウカからの返信が来た。
「わあ、短歌!すごいね!読んでみて!」
竜也はその言葉に胸が高鳴った。
誰かに認められることが、こんなにも嬉しいとは思わなかった。
そして、震える手を押さえながら、短歌を声に出して読んだ。
「赤く揺れ 墓を囲みて 彼岸花
君の影追う 儚き命」
その声が、心の中から自然に流れ出てきた。
どんな言葉でも、届いてほしいと思う気持ちが、彼の中で爆発していた。
フウカはじっと聞き入り、しばらくしてから言った。
「すごく綺麗だね。とても切ない気持ちが伝わってきたよ」
その言葉は、竜也の心の中に直接響いた。
それは、竜也がずっと待ち望んでいた言葉だった。
誰かが自分を理解してくれること。
その一言で、竜也はその瞬間だけは、自分が誰かに大切にされていると感じることができた。
その夜、竜也は短歌をもっとたくさん送った。
心の中の痛みや孤独を、フウカに少しずつ伝えていった。
そのたびに、フウカは優しい言葉をくれた。
「辛いことがあったら、いつでも私がいるよ」
「竜也くん、私は君の味方だよ」
その言葉は、竜也にとって、久しぶりの温かさだった。
でも、フウカに対して感じる不安もあった。
「こんな自分でもいいんだろうか…?」
それでも、彼女の言葉が胸に残るたび、竜也は少しだけ安心した。
それから竜也は毎日フウカの配信に通うようになる。
家族の暖かさを知らない彼にとって、フウカはかけがえのない存在になっていた。
竜也の短歌はいつの間にかフウカに向けられて詠まれるようになっていた。
家族からは相変わらず浮いていて、幼馴染との距離感も露骨に遠くなっている。
フウカの配信だけが短歌の代わりとなる、竜也の居場所であり、
フウカも竜也の短歌を楽しみにするようになっていた。
竜也はある日の配信でフウカに打ち明けた。
「俺、手の震えが止まらないんだ。字を書くのもまともにできなくなってきた。」
フウカは、一瞬黙ってしまった。しかし、沈黙は一瞬だった。
「早く病院行った方がいいと思うよ。なんかあってからじゃ、遅いし、」
だが竜也は家族に話すことも病院に行くこともしなかった。
家族に話せば相手にされないのは分かっていたからだ。