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第10話 第二戦──計算男クロノ

「エントリーナンバー27番、アマギ・リク!」


「対するはエントリーナンバー62番──クロノ・シュトラウス!」


リングアナの紹介と同時に、ステージの空気がぴりっと引き締まる。


現れたのは、細身で眼鏡をかけた知的な青年。手にはリクと同じく一本の木刀。そして、動

きはまるで歩く数式のように滑らかだった。


「なにあれ、動きがもう“論理的”って感じだよ……」


「ぜったいテストで100点取ってる顔だよね! あと、弁当もグラフで分けてそう!」


リクとミルが並んで警戒モードに入る。クロノはリング中央に立つと、すっと一礼した。


「どうも。初手の5秒は様子見、その次の3手でこちらが優位に立つ予定です」


「え、戦術説明が始まってる!?」


「チャームバトルで予告される側の気持ち考えてぇ!!」


カイルの実況が入る。


「いや〜来ましたねぇ、知略派の代表・計算男クロノ選手! チャームと頭脳で、ここまで

一度も攻撃を受けておりません!」


リクが木刀を構えた瞬間、クロノの眼鏡がきらりと光る。


「右にフェイント、次に左斜め前に踏み込み、木刀は中段……そこだ」


リクが動いた瞬間、クロノはするりと回避。木刀が空を切る。


「うわっ、読まれてる……!」


「こっちの応援まで読まれてそうだよ〜っ!! って、なにそれ!?」


クロノの足元に浮かぶのは、小型の浮遊チャームたち。いずれも「動きの予測補助」や「位

置分析」など、サポート系ばかり。


「僕のチャームは、動きのロジックを正確に計測するためのツールです。加えて、あなたの過去の試合映像も解析済みです」


「え、映像!? 誰かリクのデータ売ったの!?」


「待って、ボクもなんか“動きがうるさい”って解析されてる気がする!」


次の瞬間、リクの攻撃は再びかわされる。クロノは木刀を振るいながら、リクの顔に向けて

鋭く一閃。


「くっ……!」


かろうじて木刀で受け止めるリク。さらに一歩踏み込んだクロノが、腹部へと打ち込む。


「ぐっ……!」


「君の動きは単調だ。読みやすい」


「分析されながら殴られるとか、ダメージ倍増なんだけど……!」


リクが下がりながら息を整える。


「そろそろだな」


クロノが低くつぶやき、距離を詰めてくる。


「君の残りスタミナは、おそらくあと2分。こちらは今から攻勢に入る」


「そっちも計算されてんのかぁぁあ!!」


リクの額から汗が流れる。が、次の瞬間──左手でそっと懐のチャームに触れた。


(“面打ち”だけじゃない……このチャームの力、応用すれば──)


「いくぞっ!!」


リクが一気に前へ跳ぶ。その瞬間、リングにリクの姿が二人──いや、三人と増えていく。


「っ……!? 分身!?」


クロノの目がわずかに見開かれる。


「なるほど……3体のうち2体はダミー……ならば奥にいるあいつが本体!」


クロノは冷静に攻撃をかわし、真正面の“リク”を避ける。

だが。


「残念っ! 本体はこっちだよ〜〜ん!」


後方の幻影がすり抜けると、真正面からリク本人がチャージしていた!


「ば、馬鹿な!」


ドゴォッ!!


「うおおおおおおおおお!」


木刀がクロノの胴にヒット。綺麗な一撃が決まり、クロノは体勢を崩して膝をついた。


「クロノ・シュトラウス、戦闘不能! アマギ・リク、勝利!!」


「やったぁぁぁ!! リクすごいよぉ〜! 分身に見せかけて本体が正面とか、逆転の逆転じゃん!」


「ふぅ……勝ったのに、なんか脳が疲れた……」


クロノは静かに立ち上がると、眼鏡を押し上げて言った。


「……ありがとうございました。次は、6手先まで読むようにします。参考になりました」


「いや、もうそれならもう囲碁でいいじゃん!」


リクがそうクロノに告げた後、会場は歓声と笑いで満ちていた。


チャームコロシアム、第二戦──終了。



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