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第一話「貫け、俺のインパクト・ドライブ!」(6)

もうちょっとだけ続くんじゃよ(亀)

鎧になった伝導光具インパクト・ドライバーは、ただの装甲ではない。

アトランディアの超科学で産み出されたエネルギーを内包し、その継承者であり装者であるタケルに、超人的な能力をもたらす。

先ほど、宿屋の旦那共々を狙って、ナックルロックディザスターが放った岩のツブテを粉砕したのもその恩恵の一つだ。

他の部位とは異なり、右腕に装着されているスクリュードライブはタケルの腕を軸にして、外周部が超高速で回転、コイルの様な働きで力場を発生させる。

その為、タケルのパンチが、装着による能力向上にとどまらず、岩ツブテを余さず粉砕し尽くすという、まさに必殺と呼ぶにふさわしい攻撃力を持ったのである。


一足先に山頂に辿り着いたナックルロックディザスターは、最優先破壊対象と認めた人間を迎え撃つ為、前もってツブテを召喚し始める。


「おいおい、せっかちじゃねぇか、まだゴングは鳴ってないってのに、早々に凶器の準備とは、行儀が悪いぜ?」


いつの間にかタケルもそこに居た。しかもナックルロックディザスターの目玉の死角になる場所に、だ。

超跳躍、それも伝導光具の装着がもたらした恩恵の一つだった。


ナックルロックディザスターは、先ほどまでとは異なり、ツブテを飛ばさず、自身の周囲を縦横無尽に飛び回らせ始めた。

攻守に対応した、さながら岩ツブテの結界だ。


「準備オッケーってトコだな、だったらコッチから行くぜ!」


タケルは超跳躍のチカラで全身を前方へ蹴り出す。無論、同時にスクリュードライブの起動も始まっている。


でりゃぁぁ! という掛け声で打って出たタケルは、空中で方向転換・静止を繰り返しつつ、その脚で、拳でまずは岩ツブテの結界を突破しにかかる。

しかし岩ツブテは粉砕される傍から召喚され、穴を埋め、時に射出されナックルロックディザスター本体に近付けさせまいとタケルを遮る。


一進一退の攻防、と言えば聞こえは良いが、致命傷こそ負わないものの、ツブテの結界を越えられない上、僅かでも攻撃を受けてしまうタケルは、手数の面でも苦境を強いられていた。

手数、と称したが、ナックルロックディザスターの攻撃手段は、言わずもがなの岩ツブテだ。

もともと膨大な数がある上に、破壊されてもすぐ様に召喚され前任の穴を埋めてしまう。

対してタケルは機動力でこそ勝るものの、攻撃と言えば、一点突破型の、強大な一撃である為、蓄積するダメージ量という意味では、明らかに分が悪い。

その上、如何に強化されていようとも、人間である訳だから、首を撥ねられれば即死であるという様な、明らかな致命点をあらわにするタケルに対し、ナックルロックディザスターはそれを未だ明かせていない。

どこにダメージを与えるかを、タケルは探しながらの戦闘なのだ。


無尽とも思える岩ツブテの結界とも思えたが、ある時、偶発的に、その綻びが見えた。

スクリュードライブが僅かに鈍り、目標のツブテを粉砕出来なかった。

しかし、打ち据えられた岩塊は、タケルによる打撃の直線上に吹き飛び、ナックルロックディザスターの眼球に掠った。


グゥゥゥゥゥゥゥ!!!


今まで幾百の岩ツブテを粉砕しようとも、微動だにしなかったナックルロックディザスターが、瞬間、動きを止め、飛び回っていた岩ツブテの全てが一度地に落ちた。

すぐに態勢を立て直し、岩ツブテの結界も張り直したものの、焦りなのか怒りなのか、はたまた痛みだとでも言うのか、その眼球の帯びた紅さがより一層に深くなった。


「なーるほどね、お前さん、弱点は出しっぱなしって訳か」


タケルの瞳に勝機の光が灯る。


タケルは自らとナックルロックディザスターの眼球との間にある岩以外には、本気の一撃を入れ粉砕、眼球に当てられる位置の岩には加減気味の攻撃を当てるというスタイルに移行した。


どれだけの時間が経ったのだろうか。

夜空には明け方に強い光を放つという極北の瞬きも見えてきた。

すでに何度目かのダメージを負ったナックルロックディザスターの眼球は紅とは呼べず、漆黒の球体に成り代わっていた。

遥か彼方にある山脈の形が、その背後から登り始めた太陽によってつまびらかになってきた。


グゥゥゥゥゥゥゥ!!!!!


タケルもまた満身創痍と言った具合だが、その瞳に宿る勝機の光は衰えない。

対するナックルロックディザスターはすでにその眼球を漆黒でさえなく、陽光に照らされ灰がかった色に変わっている。まるで人生の終焉を宣告された老人の様であった。


その時、山脈の向こうから眩く陽光が差した。

呼応するかの様に、タケルが右腕のスクリュードライブが唸りを上げ、雄々しくも輝かしい力場を形成していく。


「終わりにしようぜ」


既に岩ツブテの結界は見るも無惨な有り様で、縦横無尽に高速で飛び回っていた時の姿はない。

数十と言った程度の岩塊が、目視で数えられる程度の速度で無軌道に飛ぶだけだ。


スクリュードライブの力場が完全に形成されたまま、タケルの腰を溜める動きに同調する。


夕陽のそれとはどこか違う、朱の陽光がナックルロックディザスターとタケルを染めた時、タケルは言った。


「貫け、」


溜めを解放し、全身の捻りを乗せたタケル渾身のストレートはがナックルロックディザスターの眼球へと走り出す。

スクリュードライブの力場は更にそれを加速させ、続くタケルの叫びと共に光の矢の様に、ナックルロックディザスターの眼球を貫通した。


「貫け、俺のインパクト・ドライブ!」

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