第一話「貫け、俺のインパクト・ドライブ!」(5)
ナックルロックディザスターが、獲物を2匹とも見つけたと言わんばかりに、ツブテを一方向にのみ集約させて、タケルと宿屋の旦那に向けて一気に撃ちこんだ。
もう駄目だとばかりに目を硬く閉じた旦那だったが、着弾の爆音は無く、代わりに
「アトランディアから継承したチカラよ、華開き我が身に集え、インパクト・ドライバー!!」
との叫びが聞こえた。
タケルが声高らかに、手に持った伝導光具を真上にかざすと、それに呼応し、伝導光具にパーティクルラインが疾走り分割していく。
本体から分離した各パーツは、元の大きさから巨大化・変形していく。
変形を終えたパーツは鎧を形作り、タケルの身体を覆っていく。まるで太古の昔から、その身に纏われる事こそが、自らの産み出された理由と言わんばかりに。
頭を覆う兜のパーツからは雄々しく、さながらユニコーンの様にドリルの角が突き立っている。
全身を覆う鎧は、無骨さを思わせる、にび色の輝きを持つ。
一際目を引くのは、右腕全体を覆い、タケルと一体化した、インパクト・ドライバーそのものであり、秒間2000回転を生み出し、脅威のチカラを行使する、暴力の象徴たる、スクリュードライブである。
薄く目を開けた男が見たのは、インパクト・ドライバーと一体化したタケルが、無数の巨大な岩のツブテを、その右腕1本から発する衝撃で粉微塵に粉砕し尽くした姿だった。
「旦那さん、女将さんが心配してたぜ。早い所、コイツをぶちのめして、帰ってやろうぜ?」
撃ち終わりの残身のまま、背中でタケルが言った。
希望が見えてきた。
絶望の淵に現れた、まだ年端も行かない少年の言葉に、自分は生き残れるのかも知れない、と男は思った。
刹那、このままでは、この少年が戦う邪魔になる、そう思った男はほら穴の奥に走り出しながら、窮地を救ってくれた少年に伝われとばかりに叫ぶ。
「ありがとう! 君の戦う妨げにならない様、この奥で待っている、武運を!」
タケルの顔に笑みが浮かぶ。
男の言葉に歓びを感じての物だったが、対するナックルロックディザスターには、挑発の笑みと映った様だ。
「おい、木偶の坊、場所を変えるぜ? よもや、俺より先にあの男を、とは思わんだろう?」
タケルがより挑発的に言うと、ナックルロックディザスターの目玉がギョロリと動き、山頂付近を指した。
「聞き分けの良い奴は嫌いじゃないぜ、そのお礼に今度は封印じゃなく、徹底的にぶち壊してやるよ」
タケルの言葉を聞いてか、ナックルロックディザスターは、その巨体を宙に翻し、自らが指した山頂まで一息に跳躍した。
第一話クライマックス直前までで寸止め、誠にあいすいません。
当方、深夜仕事終わりに執筆、寝付く前に投稿というスタンスの為、こういった形になる事もあるのです。
明日には必ず、第一話完結まで行きますので、しばしお待ち下さい。