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第一話「貫け、俺のインパクト・ドライブ!」(1)

春のうららかな日差しを浴びながら、タケルは草原に寝転がっていた。

ときおり吹き抜ける風が、膝下まで茂った草原を撫でると、風の形があらわになるように、サラサラと音を立てた。


寝転がっていたとしたが、何も惰眠を貪っている訳ではない。

そもそも冒険家を名乗っている、いわゆる風来坊でもなければ、こんな何もない草原で寝転がったりはしない。

惑星アースガルドは、世界各地に都市が点在し、その都市を中心とした村や町が国家に近いコロニーを形成している。

都市には政治や経済を司る仕組みがあり、コロニーに属する地域は相応に発展をしているし、衛生概念もある。

故に普通の人間であれば、割り当てられた仕事に従事し、家に住み、衣食にも困らない。

土や草の露にまみれる様な草原に寝転がったりしないのだ。


タケルは寝転がったまま、なめし革で装丁された、手垢まみれの本を天に向かって広げている。

ときおり「うーん」とか「太陽の位置は」などと呟きながら、ぺらり、ぺらりとページを手繰っていく。


あるページに差し掛かった時、その指がはたと止まり、上半身を起こして周囲を見渡した。


「あの山脈の形……」

そう言いながらバックパックから測量計を取り出し、片目に当てながら本と見比べる。

「今はベ二カスミの咲く季節だから、俺の見立てが正しければ、山脈の高峰のテッペンに太陽は沈むはず……」


サラサラと音を立てる一面の草原でタケルは微動だにせず、時が過ぎるのをまんじりと待った。

春先の日差しと言えど、遮る物の無い草原においては、じわりと汗ばむ。

タケルの頬を、衣服の中を、小虫が這いずる様に汗が流れていく。

そのくすぐったさと不快感に、並の者ならば身をよじるか、腕で拭おうとするだろう。

タケルは微動だにしない。

いや正確さを期すならば、瞳は太陽の軌道と本を忙しなく往復していたし、時が経つにつれ鼓動は早く、そして強くなっていった。


汗を産み出す陽気が少し落ち着き、山吹の色をしていた草原を、茜が支配する頃、タケルは測量計を顔から離し、ただ一言。


「進む道が決まったな」


と呟いた。

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