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第5話:ダム・ガール、災害対応に意見す!

「歓談中の皆の者、申し訳ない。緊急対策を行うため、舞踏会は一時中断とする。各自、城内に待機。城内なら跳ね橋を上げれば浸水する事もない。安心して次の命を待て」


 集まった貴族らにカッコよく命令を下した王さま。

 豪華なマントをひらりとさせ、騎士らを従えて宴会場を後にした。


「お姉さま、全く何をしでかしてくれるんですか? お母さまは卒倒されてしまいましたの。わたくしも、お姉さまが無礼打ちになってしまわないのかと心配致しましたわ」


 わたしのところに飛んでくるように来て、頬を膨らませながら文句をいう妹。


 ……家の事を考えての発言だろうけど、心配してくれる分。お義母様よりは人間性はマシだよね。なんのかんの言って、かわいい妹だもん。


「エリーザ、ごめんなさい。わたくし、色々失敗してしまいましたわ。あ、イグナティオさま。紹介いたします。わたくしの妹エリーザです。エリーザ、ヴォルヴィリア公爵閣下ですわ」


「閣下、お初にお目にかかります。ヴァデリア伯爵アヴェーナ家が娘、エリーザと申します。良き日に……と申せませんが、出会いに感謝いたします」


 美少年相手に頬を染めてカテーシーをするエリーザ。

 黙っていれば十分美少女の類、身内びいきを引いても可愛い子だ。


 ……お義母様にコントロ―ルされなきゃ、良い子なのよね。幼い頃は、おねーちゃん、おねーちゃんって随分と懐いてくれていたし。


「丁寧なごあいさつ、ありがとうございます。エリーゼ嬢。貴方さまのお姉さんは本当に楽しい方ですね。色々と楽しませて頂いています」


「閣下、本当でしょうか? 姉は実に単純馬鹿で無鉄砲で考え無しなんです。もう少し考えて行動をしてくだされば……」


 ……ごめんね、エリーザ。わたし、またバカをするの。


「エリーザ。申し訳ありませんが、その考え無しを再び致しますわ。イグナティオさま、いえヴォルヴィリア公爵閣下。わたくし、お願いがありますの」


「アミータお姉さんの考える事なら、ボク何でも実現してあげますよ。洪水をなんとかしたいんですよね?」


「はい!」


 わたしは、思いをイグナティオさまに告げた。


  ◆ ◇ ◆ ◇


「陛下。重要会議中のところ、誠に申し訳ありません。意見具申致したいことがありまして、急ながら面会をお願い致します」


 宮殿内にある会議室。

 その分厚いドアをノックした後に開き、イグナティオさまは発言をした。


「イグナティオ、いやヴォルヴィリア公爵。いきなりの面会とは何かな? 今、余は非常に忙しい。話は後から聞くと言っていたのだが……? ん? 後ろの女性は? ふむ、そういう事か。よい、意見を聞こうぞ。皆、部屋に入れ」


 王陛下は、イグナティオさまの背後に居たわたしに視線を向けたのち、厳しかった表情を和らげ、わたし達に会議室へ入れとおっしゃられた。


 ……あれ? どうしてわたしの顔を見て笑われたんだろう?


「ひゃー。お、おうさまの御前なんてぇ」」


 わたしに付き従っていたヨハナは、小声で悲鳴を上げているが今は聞かなかったことにする。


 ……巻き込んじゃってごめんね、ヨハナちゃん。


「御意。陛下、時間もありませんので早速本題に入ります。洪水対策ですが、具体案は出ていますのでしょうか?」


「残念ながら、まだ被害箇所を確認しただけだ。今から避難指示や堤防の復旧に対し各方面の意見を聞く段階だ」


 陛下を中心に会議室の中央に置かれたテーブル上の地図にチェスらしき駒が置かれている。

 おそらく、駒で現状を分かりやすく示しているのだろう。


 ……戦争時の戦術会議とかも、こんな感じに行うのかな?


「実は、共に参りましたアミータ嬢が洪水対策に詳しいです。水魔法の権威、ヴァデリア伯爵アヴェーナ家の長女にして彼女自体は土魔法に長けていると聞いております。更に私よりも幼い頃に、自領内で発生した洪水騒動を解決したとも」


 陛下の前でわたしのプロデュースを始めるイグナティオさま。

 陛下の周囲に集まっている側近らの眼が、わたしへグイと集まってくるのが怖い。


 ……確か将軍さまとかお大臣さまとかじゃなかったのかしら? わたし、選択を間違えたのかしらぁぁ!?


 わたしは、気軽に洪水から人々を救いたいと言った。

 それを受けてイグナティオさまは陛下へ意見具申をすることになった。

 今わたしは顔を下げ、カテーシーをしたまま国の要人らの視線を集めている。


 ……エリーザが青い顔をするのも納得なの。さあ、どうしましょう。


 「ほう。彼女が噂に聞く『泥かぶり姫』ですか。アミータ嬢、面を上げよ。貴女なら、この洪水をどう鎮めますか? 忌憚ない意見を聞かせて欲しい」


「ぎょ、御意。で、出来ましたら王都の詳細地図を見せて頂けますでしょうか? あと、現状を教えて頂けたら誠に助かります」


 ……こうなったら勝負なの! 女は度胸!!


「……なるほど。イグナティオは実に良き『友』を得た様だ。アミータ嬢、こちらに地図がある。近づくが良い」


「ありがたき幸せでございます。……。堤防決壊か所はこちらでしょうか?」


 わたしは地図を見、いくつもの小川が集まった部分。

 更にその流れが曲がりくねった部分を指さした。


「どうして、それが分かる!? アミータとやら、お主は?」


「将軍、今はアミータお姉さんのお話を聞きましょう。どうして、直ぐに分かったのかな、お姉さん?」


「お答えいたします。先だってから続く大雨。これで川に流れ込む水の量が増えているのは、皆さまご存じかと思います。小さな川が集まり大きな川になっていくのですが、大きな川であります本流の流れが激しければ小川、支流は勢いが足らないために流れ込む事が難しくなります。そして最悪逆流(バックウォーター現象)を始めます」


 わたしは、「前世(かこ)」の大学時代に水資源工学。

 ダムをつくる上での川の流れについてを詳しく学んだ。

 また、日本各地で夏季から初秋に発生する水害の映像を何例も見た。


 ……水は流れやすい方へ流れるの。それは堤防を越えて土砂を洗い、最後には決壊まで起こしてしまうわ。


「そして逆流をした水は、更によどみが起きる場所。曲がりくねった場所に集まり、堤防を越え、最後に決壊を起こす。そう、わたくしは学んでいます」


 わたしは、メモ用に置かれている薄い木の板に、ペンでざっとした洪水のあらましを書いて説明する。


「むむぅ。確かに現実でもそのとおりになっている。だが、今は原因究明よりも対策が大事なのではないか?」


「はい、将軍閣下。なので、わたくしが知っている対抗策を提示致します」


 わたしは背後でニコニコしながら見守ってくれているイグナティオさまの視線を受け、顔を上げる。

 わたしの知識で、少しでも多くの人々を救うために。


 ……土木やインフラの大事さを広めて、いつかはダム建設も行うの!


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