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第23話:ダム・ガール、新たな出会いに歓喜する!

「ティオ坊ちゃん。こちらのお嬢さまが例の方ですかい?」


「おまえまで坊ちゃん呼びか……。ま、まあ親方には赤ん坊のころから世話になっているから、しょうがないか」


 面会室の中、膝を着き頭を下げ控えている方々が並ぶ。

 小柄な肉達磨が半分強、後は屈強だけど上背がある男性。

 彼らのうち真ん中に座っている小柄ながら筋肉質で髭もじゃな男性が顔を上げ、ティオさまを坊ちゃんと呼ぶ。


 ……あ、この人はドワーフ族なんだ。ゲームとかで見たまんまね。王都でも鍛冶屋さんでドワーフ族を良く見かけたの。


 苦手そうな顔をするティオさま。

 確かに赤ん坊のころから知られている相手には苦手意識を持ってもおかしくないだろう。


 ……確かドワーフ族って只人族よりも長命で、倍くらい生きるって話だよね。まあ、大抵の人は、わたしを含めて十二歳のティオさまよりも歳上なんだけど。


「親方。この方は面白いお姉さんだけれども、一応は伯爵令嬢だから言葉には気をつけてくれないかい?」


「一応ですか、ティオさま? ふふふ。皆さま、わたくしはヴァデリア伯爵アヴェーナ家の長女、アミータと申します。秋深まり山々の紅葉が美しい中、皆さまにお会いできましたことを感謝いたします。世間一般では『泥かぶり姫』と呼ばれます変人ではありますが、宜しくお願い致します」


 ティオさまがわたしの事を紹介してくれたので、ちゃんとカテーシーしながら貴族令嬢なご挨拶をした。


「これはこれは、ワシらドワーフに対しご丁寧なあいさつを頂くとは、お噂通りの姫さんだな。わははは、気にいりましたぞ」


「わたくし、技術者さんが大好きなんです。親方さんでしたっけ。貴方は何がご専門なのでしょうか?」


 何が受けたのか大笑いの親方さん。

 わたしは、彼から詳しい話を聞きたくてしゃがみこんで顔を彼に近づけた。


「え!? お貴族の姫さんがしゃがみ込んで話しかけて下さるんですかい?」


「わたくし、職人さんは誰でも尊敬いたしておりますの。職業に貴賤はございませんですし、見事なものを作る方に礼を尽くすのは当たり前ですわ」


「親方。アミお姉さんはこんなステキな女性なんです。だから、『忌み子』だったボクでもお友達になれたんですよ」


 妙に感心している親方さんだが、アイデアや設計しか出来ないわたしにとって実働部隊たる職人さんは、大事な相棒。

 まちがっても蔑んだり、見下せる訳はない。


 ……『前世(まえ)』でも左官さんとか大工さんを学歴が無いとバカにしていた現場監督居たけど、それは間違いだもん。


「アミータ姫さま。まずはお腰を上げやしょう。貴方さまが頭を下げる必要は……」


「では、皆さまも椅子に座りましょう。ティオさま、いいですわよね。長いお話になりそうですもの。あ、ヨハナ。お茶をお願いね」


「はい、姫さま! うふふ、アミちゃん姫さまらしいの」


 わたしは皆と公平に話をしたいので、無理を言って全員に椅子に座ってもらうようにした。


 ……あれ!? 女の子が一人いるの! へー、この世界のドワーフ族女性ってロリタイプなんだ。かわいー。


 わたしは、紅一点の子に視線を向ける。


「お父ちゃん。アタイ、こんな場所初めてで作法なんて分からないよぉ」


「あの姫さんなら大丈夫さ」


 親方と呼ばれた人に対し「お父ちゃん」と呼んでいるのだから、恐らく娘さんなのだろう。


「親方。それに皆。アミお姉さんはこういう人だから、気軽にね。だけど、最低限の礼儀は忘れずに」


「はい、公爵さま」


 わたしの隣に座り、集まった方々に対して話しやすいように仕向けてくれるティオさま。

 実に助かる。


「では、お一人ずつお名前と得意分野を教えてくださいませ。あ、先にわたくしの事をお話しますわね。わたくしは、水魔法が少々と土魔法を使います。建物、特に水関係のものを作るのを専門として学んでいた経験があります。これから、皆さんと領内を安全かつ快適な環境にしていけたらと思う次第ですの」


 ヨハナちゃんに入れてもらった茶が全員にいきわたったのを確認し、わたしは自分から話し出した。


「帝都で洪水を治めた『泥かぶり姫』さまの異名通りのお方ですね。俺は、スノッリ。この地のドワーフ族を束ねさせてもらっていやす。この地は魔族国との境界。俺らドワーフ族は古代は魔族側に仕えていたが、只人とも商売の付き合いがあった事から魔族国を追われて、この地に住み着いたんでさ。俺の専門は武器鍛冶だ」


 親方、スノッリさんは、彼らが公爵領に住むことになった経緯から話してくれる。


 俗にいう亜人種。

 只人とは混血も可能ながら、姿かたちや寿命。

 考え方も違う人々。

 多くは魔族側から離反して、只人側に付いたと貴族学校での歴史学習で習った記憶がある。

 今も魔族側に残るのが、ゴブリンやオーク族など。


 ……だから差別しちゃダメって話なんだけど、同じ只人の平民ですら道具扱いしかしない貴族らにとっては、どう思うかなんてのは悲しい事ね。


「それは大変でしたのね。スノッリさん、武器鍛冶となりますと、鋼の精製にもお詳しいのですか? 鋳鉄(ちゅうてつ)から鋼へ転換する炉なんかは、こちらにありますか?」


 わたしは「前世(まえ)」に習った製鉄の事を思い出しながら、親方さんに話しかける。


 ……コンクリート構造物も鉄骨やPC(プレストレスト)鋼材があると無いとで大違いだものね。


「……ティオ坊ちゃん。このお嬢さんは、一体何者ですかい? 鋼の秘伝をご存じとは?」


「そこはボクも不思議に思っているところなんだ。スゴイよね」


 驚くドワーフ族技術者を前に、わたしは気になる事を色々聞いてみた。


「鉄鉱石を溶かすのに木を焼いた炭を使いますか? それとも石炭ですか? ケラ取りは? 武具は鍛造ですか、鋳造ですか?」


「ひぃぃ。このお嬢さん、怖い!」


 久方ぶりの技術談議にすっかり気持ちよくなったわたしだった。

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