第41話(累計 第131話) ダムガール、仲間たちに感謝する。
秋も深まり、紅葉した木々もチラホラ見受けられる頃。
わたしは、コンビットスにおいて開発・製造責任者、そして工事監督として忙しく過ごしていた。
今日も公爵領内の街道工事を有人型ゴーレムでお手伝い。
……これが貴族令嬢。こと、公爵夫人(予定)な婚約者としての仕事かと言われると、正直困っちゃうの。
ステイラ神聖法王国から届いた、一通の召喚状。
わたしは直接法王国に赴き、法王猊下と面会。
黒衣の魔女認定されたことに対し、直接文句を言う事に決めた。
……おそらくは、わたしの暗殺を狙っているんだとは思うの。法王が持つと言われる外典。おそらくは『ゲーム』のシナリオが書かれている本に、わたしが世界を滅ぼす魔女として書かれているんだろうけど。
決闘裁判にて、わたしの潔白及び公爵領内において罪を犯していない魔族に対する自衛以外の弾圧が禁止されたこと。
このことにより、法王国内で論争が発生。
彼らが信仰する光の神ステイラが、滅ぼすべき対象であった魔族の存在を認めたというのが大問題になっている。
そこで、決闘裁判に勝ったわたしを事故などを装い抹殺すれば、裁判内容を無効化できる、というのが敵の目論見と推定。
……この辺りは、まだ予想の範囲だけれど。態々国内に呼び込むというのが実に怪しいの。法王国内ならいくらでも裏工作やテロの準備ができるし。
「アミちゃん姫さま。今日も精が出ますねぇ」
「だって、ヨハナちゃん。わたくし、ティオさまと幸せな生活を続ける為にも死にたくないんですもの」
……法王国に向かうのは春になってから。極寒の中、移動は普通選択肢には無いし。逆に言えば時間がもらえた分、こっちも色々準備するわ。
秋晴れの空の元。
わたしは愛機のコクピットで工事を手伝う。
今日は鉱山と製鉄工場の間の道路舗装。
最近増産された魔導トラックがコンクリート舗装中も迂回路を走り、鉱石や石炭、石灰石など地下資源を工場まで運んでいる。
……出来れば雪が降るまでに、コンビットスで下水道も作り上げたいな。上下水道に工場からの温水供給、石炭ガス供給。これで電気以外は前世二十世紀前半くらいまでのインフラが整うの。春以降は鉄道にも着手したいなぁ。
「ですよね。敵が待ち構えていらっしゃるなら、それ以上の力を準備して斜め上から力押しするのが、アミちゃん姫さまの得意技。今回も色々準備なさっていらっしゃいますよね?」
「ええ。まもなく冬に入り土木作業も一区切り。そうしましたら、タロス号にも更なる改修や新規武器を作らないとですわ。ティオさまの機体もまもなく完成ですし」
現在、ティオさまの愛機。
ヴォルヴィリア公爵としての旗機。
「ロムルス号」は、わたしの機体よりも先に最終改修中。
格闘・刀剣戦をメインにし、砲撃能力を少々追加。
瞬発力を重視したチューニングにしている。
……ぐふふ。魔導ジェットスラスターが楽しみだわ。
「すっかり絶好調ですね、アミちゃん。ですが、ドゥーナさま達にこれ以上ご無理を申しませんように。かなりハードなスケジュールなので、死屍累々になりそうなんですもの。ジュリエッタさまも寝込みそうと聞きました」
「ゔっ! 気を付けますぅ」
タロス号助手席に座るヨハナちゃんから、毎度のツッコミ。
わたしは、ゴーレムの腕で木の根を掘り起こしたり、巨石を持ち上げたりで道路建設のお手伝いをしている。
……ヨハナちゃんは周囲の警戒と魔力管理をしてもらっているの。街道の上とはいえ、まだまだ野盗や魔獣の襲撃はあり得るしね。
「と、とりあえずは、街のインフラ構築を優先しつつ、基礎技術の向上。新たなる兵器開発を致しますわ。力なき正義は無力ですもの。相手を対話につけさせるのにも、力を見せつける必要性ありますし」
「その辺りは納得してますよ、アミちゃん姫さま。あの異端審問官も、アミちゃんの力で一端は納得させたのですし。それが、貴族令嬢として正しい姿かどうかは、アタシの口からは申せませんですが……」
クスクスと笑いながら、わたしに賛同してくれているヨハナちゃん。
彼女とは、これまでもいくつもの戦場を駆けた。
これからもティオさま、ファフさんとも一緒に戦うわたし。
……血が流れるのをもう怖がらないわ。わたしの望む誰もが笑顔になれる世界を目指して、戦うの。
「これからも宜しくね、ヨハナちゃん」
「はい、アミータ姫さま。ヨハナは、ずーっと貴女と一緒です」
その後も、わたしとヨハナちゃんは、イチャコラ百合トークをしながら仕事を続けた。
◆ ◇ ◆ ◇
「アミお姉さん、今日もお疲れさまでした」
「ティオさまも事務仕事、お疲れさまでした。わたくしの無理にお付き合いいただき、申し訳ありませんですわ」
今日も二人で向かい合わせの夕食。
お互いに今日あった事を話し合う時間。
「実に良きイチャコラですね。僕も嬉しくなりますよ」
もとい!
おジャマ虫じゃないけど、わたし達をからかうルキウスくんも一緒の夕食である。
「ルキウスくん、毎度わたくしたちを遊んで面白いんでしょうか?」
「ええ。とっても微笑ましくて面白いですよ。なので、お二人の幸せを守るためにも僕は剣を抜きます。お二人の恋路を邪魔する奴は馬に蹴られる前に僕が真っ二つにしちゃいましょう」
「ルキウスさま、お手柔らかにですよ。敵にも家族がありますから」
ヨハナちゃんやファフさん。
他の側仕えさんたちもクスクス笑う夕食の場。
今日も公爵公館は賑やかであった。




