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秘密

第2番隊陸軍隊長室。

「うーん…。これは殺人予告か?」

そう言うのはキース・ウェルダー。

第2番隊(陸軍)副隊長だ。


キース率いる討伐隊が任務から戻ってくると、若い隊員達は「フリネラが告白されたー!」と盛り上がり、一方では「隊長が倒れた!」と大騒ぎになっていた。

「う〜ん。隊長…」

「隊長はお前だろう。このバカが」

キースがすかさずツッコむ。

そのまま床に転がしておく事もできないので隊長室に運んできたのだ。今はソファーの上で唸っている。

「まあ、殺人予告は冗談として何故こうなった?」

「何故と言われましても…」

手紙を受け取っただけのユーリは上官からの呼び出しに困っている。正確にいうと手紙の中にいつの間にか混ざっていたのだ。

「副隊長、これは挑戦状です。ここで受けないのは女ではありません!」

同じく呼び出しを受けたフリネラが宣言する。

「それは男が言うセリフだろう…。とりあえず肝心なヤツが使えない以上、魔法院には俺が代わりに話を通しておく。これでこの話は終いだ。戻れ」

隊長に対してズバズバと遠慮なく言う副隊長キース。

テオールと同年代に見えるが10歳上だ。子供もいる。


「納得いきません。何故ですか?副隊長」

食い下がるフリネラ。

こうなったら止められないとテオールから聞いている。

「…分かった。今から言う事は秘密厳守だ。重役・全隊長達しか知らない事だ」

真剣な顔をして頷く二人。

「ヒュースには近付くな。アレ(・・)は危険だ。魔法院に入った(・・・)のではない。入らされた(・・・・・)のだ。監視の為に。話せるのはこれだけだ」

どういう事だ?


詰め所に戻ってからも落ち着かないフリネラ。

「フリネラさん、大丈夫ですか?」

ユーリが心配そうに聞く。

それもそうだろう。手紙の送り主が危険人物なのだから。

だが、フリネラは違った。

「よし、会おう」

「えっ!?さっき副隊長に近づくなっ…」

危ない。秘密厳守と言われていたのだった。

『…て、言われてたじゃないですか』

周りに聞こえないように小声で言う。

『こちらからじゃない。あちら(・・・)から呼び寄せてもらうんだ』

フリネラも合わせて小声になる。

『どうやって?』

『転送魔法だ。魔法四大貴族に数えられるくらいならそれくらい簡単だろう?』

『それはそうですけど…』

こういう悪知恵は良く働くのだ。昔から変わらない。

『知りたくはないか?秘密の理由』

どうやら興味を持ったのはヒュースだけではなくフリネラもらしい。

上官命令だ。ここは止めなくてはいけない。だが自分も知りたくなってきた。隊長達が隠すくらいだ。相当な理由に違いない。

「分かりました…。僕は何も聞かなかった事にします。ただし僕も連れて行って下さい。何かあったら困りますので」

というのは建前だ。

「では早速返事を書く」

急いで紙とペンを用意する。

書き上げると、ユーリが他の隊員に渡すように手配する。口止め料として皆が嫌がる書類などの雑務を代わりに引き受ける。ユーリにとってはそのくらい何ともない。むしろ得意な分野だ。


第3番隊・魔法院書庫。

「おーい、ヒュース。お前に手紙が届いてるぞ」 

梯子に座って本を読んでいたヒュースが顔を上げる。相変わらずの無表情だ。この表情以外見た事がない。

「…なに?」

「手紙だよ。何とあの赤獅子からだ!いつの間に仲良くなったんだよ、お前ら」

笑いながら話す同期のお調子者、リル・シルバ。唯一ヒュースに臆せず話しかけられる一人だ。他は独特なオーラに負けて気軽には近付けない。

「なかはよくない」

「じゃあ何で手紙を?」

「きょうみがある」

「珍しいな。お前が人間に興味を示すなんて」

「それよりもてがみ」

「ああ、悪い悪い」

手紙を受け取り、中を開く。

ーすると

「ヒュ、ヒュースが笑った…!?」

驚くリル。

それもそのはず。あの何があっても無表情だったヒュースが嬉しそうに笑うのだ。あり得ない。

「どうした?ヒュース。何があった?」

「リル、おきゃくさんがくるよ」

「お、お客さん?」

「そうだよ。ふふふ、おもてなししなきゃ。ようこそ、ぼくのじっけんしつへ」

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