任命式
遂に任命式の日だ。
会場には位の高い人々や上役が整列していた。もちろんテオールもだ。
マントには彼からもらった薔薇のブローチを付けている。
「これより帝国騎士団任命式を始める。まずは帝国騎士団団長第1番隊隊長からの挨拶」
「諸君、入隊おめでとう。…」ありがたいお話なのだろうが過去に一度聞いたので飛ばす。
「次に記章を与える」
「おめでとう」これは先輩達から付けてもらう。だが私に対しては敵意しか感じない。『どうして女がここにいる』というような目をしている。
「それでは各代表者による宣誓を」第1番隊は如何にも貴族らしい若者、自分の方が強いという顔をしている。第2番隊からは私、フリネラ。第3番隊からは私より年上だと思われる黒髪の男性だが、黒いアイシャドウに左頬に蜘蛛の巣の様な模様と黒い口紅のメイク、第4番隊からは三つ編みに眼鏡の真面目そうな女性。皆それぞれの武器や杖を掲げる。
私の大剣はどうやっても目立つ。
「偉大なる我が帝国よ」
「軍神イシュミル神の下」
「闘い、護る事を」
「ここに誓う」パチパチ…拍手と共に任命式が終わる。
すると第1番隊の代表者が話しかけてきた。
「君があのイシュミル神のご加護を受けたフェリージェの」
「フリネラ・フォン・テスミールだ」貴族と関わると面倒な事になるので名乗って立ち去ろうとした。
「待ってくれ。私はミハエラ・フォン・ライリッヒだ」ライリッヒといえば侯爵ではないか。その侯爵様が私に何の用だ?
「その大剣は有名なフェリージェの剣だろう。お手合せ願えないか?」
「この後は任務がありますので、申し訳ないが…」断ろうとすると「良いではないか」
「私もこの目で見てみたい」などと隊長達が皆、口々にそう言う。「テオ…隊長!」テオールは断るのは無理だと頭をふる。こうなってはどうしようもない。第1番隊の稽古場に行く事になった。
「これより、第1番隊ミハエラと第2番隊フリネラの勝負を行う」いつの間にかギャラリーが増えていた。ここは速く片付けなければ。「始め!」ミハエラはロングソードで一気に攻めてきた。「はっ!」ギンッ!良い所を攻めてくる。それに速い攻撃。さすがは第 1番隊だ。これは負けてはいられない。「はぁっ!」ブンッ!ガキン!
「いけー!」
「負けるな!」
周りもうるさくなってきた。さあ、片付けるか。手加減しないと吹っ飛んでしまう。ビュンッ!ピタッと相手の首で止める。
「勝負あり。勝者フリネラ!」第2番隊を応援していた人達は喜びあっている。
ミハエラに手を差し出すと払われた。
「手加減しただろう」バレていた。
「次は本気にさせてみせる!」そう言って去って行った。次もあるのか。面倒な事になってしまった。