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伝説の騎士

「以上が参謀本部からの作戦指示だ。何か質問、意見のある者はいるか?」

テオールが一通り説明すると皆の顔を見渡す。若い隊員達は初めての大規模攻勢に緊張して見える。

「隊長!」

そこにフリネラが声を上げる。

「何だ、フリネラ?」

「何故、ヒュースがここにいるんだ?」

「「「「「え!?」」」」」

見るとそこには普通にヒュースが立ってりんごをもしゃもしゃと食べていた。

「ごくっ。魔法院院長にフリネラがカデニュウスをまたカルヴァニュウスにへんかさせてぼうそうさせたばあい、とめられるようにって。おもしろそ…いわれたからきた」

「ああ…」

皆、あの新人大会の惨状を思い出す。

「…心強いな。ではなく!これ以上の侵攻は絶対に阻止する。行くぞっ!」

「はっ!」


現地に着くと丁度、偵察部隊の空軍が空から降りてきた。そこにテオールが近寄る。

「敵はどのくらいだ?」

「見たところ歩兵部隊と魔術師を合わせた編成で、規模は二個師団かと思われます」

こちらは歩兵部隊と空軍、魔術師の三個師団。勝ち目はあるかもしれない。若い隊員に経験させるには良いかもしれないが無駄な血は流したくない。

そんなことを考えていると手元から拡声器が消えていた。

「は?」

そのとき。

『あーっ。ルーシェの兵士!聞こえるか?』

「この声…フリネラ!?」

敵も何事かとざわついている。

「どこだ!」

「まだ若い少女のような声だぞ」

構わずフリネラは続ける。

『お前達、この魔獣のようになりたくなかったら今すぐ国に帰れー!』

その声と共に頭上を何かが飛んでいく。

ドスーンッ!ベキッ!ドサドサッ!

何か大きな物が落ちる鈍い音がする。

「ひいっ!」

敵の悲鳴が聞こえた。

「何だ?何の音だ」

テオールが双眼鏡で確認する。

「あれはっ…!」

見えたのはボコボコにされ、角も折られた5メートル近くある血まみれのレッドホーンブル三頭であった。この魔獣、一頭でも手慣れた男四人がかりでようやく倒せるか弱らせるくらいのクラスで一人、しかも少女が素手で倒せるものではない。だがフリネラならあり得る。

「さすがフリネラ〜♪」

振り向くとヒュースが魔眼を使って楽しそうに見ていた。そんな場合ではない。フリネラを止めなければ。


「こ、こんなの脅しだろう?」

「俺達だって…なあ。ハハハ」

だが、フリネラの強さを知らない敵は帝国が大勢で倒したと思っている。普通ならそうだろう。

『それは先ほど私が仕留めた魔獣だ。少々手こずったが良い準備運動となった。しかし高値で取り引きされる角は折れてしまったし毛皮もボロボロだ。負けて何も持ち帰る物がないそちらの手土産に…と思ったが。その有り様では…すまんな』

これで挑発しているつもりはないフリネラ。

「わっ、我々がそんな脅しに屈するか!」

「バカにするな!」

当たり前だ。いくらバケモノのような敵がいるからといってここで引き下がったら国に帰れない。

『忠告はした。本当に良いのだな?』

「良いも何もあるか!」

「我々の力を見せつけてやる!」

『仕方がないな…』

そう言うと素早く移動するフリネラ。


「我の名はフリネラ・フォン・テスミール!帝国騎士団第2番隊陸軍所属の聖騎士。戦いの神、イシュミルの加護を受けし神剣カデニュウスの使い手!」

カデニュウスを勢い良く振り回す。

「ああ…」

頭を抱えるテオール。

こうなったら止められない。

「…聞いた事があるぞ」

一人の兵士が呟く。

「え?」

「ある国には珍しく大剣を振るう若い女の騎士がいたと。何でもその女の騎士が扱う大剣は他のどんなに力の強い男の騎士達が持ち上げようとしてもできなかったらしい。でも女の騎士は大剣を軽々と持ち上げ、鎧を簡単に切り裂き敵の首を狩っていく。まるで獰猛な獅子のように。その大剣の名は『カデニュウス』。女の騎士の特徴は…炎のように燃える赤い髪に金色の瞳。この色はどこの国でも見られない組み合わせ。でもこれは随分古い話だ。それこそ伝説のような話だぞ!生きているはずがない…『帝国の赤き獅子フェリージェ』!」

「説明ご苦労。話はおわったか?」

「「!!」」

気づいたときにはもう遅い。

目の前には赤い獅子がいたー。

「ぐはあっ!」

「うぐっ…」

次々と散っていく残酷な赤い華。

「援護しろ!」

テオールが叫ぶ。


舞い散る花びらの中を獅子のように駆け抜けていくフリネラ。

『我の名はフェリージェ・フォン・テスミール!帝国騎士団団長であり第1番隊隊長。戦いの神、イシュミルに護られし神剣カデニュウスの主!』

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