断罪の椅子
「国王陛下、ご報告が」
「何だ、リンか」
ここは国王の執務室。他には誰もいない。
内心、突然話しかけられて驚いているが王の威厳の為、冷静を装っている。
「はい。聖女の件で情報が」
「例の娘ではなく?」
「騎士団の者から気になる話を聞きました」
そう言うとリンはフリネラ達から聞いた話と盗聴に使った魔法珠を渡した。
「何と…これは。だがこれだけでは証拠にはならない」
「それに関しては一つ考えが」
後日、ラデル男爵とミディエラが謁見の間に呼ばれた。
「突然呼び出して悪いな」
「いいえ、国王陛下のお呼びとあらば…」
と言いながらも焦っている様子の男爵。先ほどから汗が止まらない。
対してミディエラは何の事か分かっていない顔をしている。
「そこの椅子に掛け給え」
勧められた椅子は古く黒ずんで不気味な雰囲気だ。
「いいえ、そんな滅相な」
「良いから座れ」
「はい…」
国王の圧に負け座る親子。
「何だ!?」
途端、何かに捕らえられたように手足が動かなくなる。
「余の質問に答えてもらう」
「なっ、何を?」
「ラデル男爵。その娘、聖女ではないな」
「はい。…えっ、私は何を!?」
「お父様?何を言ってらっしゃるの?」
ようやく状況を理解したバカエラことミディエラ。
『認めました!』
『何だ、ヒュース。あの椅子は?』
『断罪の椅子だよ』
影から見守る人影が。
そう、フリネラ・ユーリ・ヒュースの三人だ。ミハエラはまだ寝ているままなので置いてきた。
『魔法院ひぞうの〝断罪の椅子〟。あれにすわったひとはうそをつけないのろいのいすだよ。むかしはあれでごうもんをしていたんだ。つかっているところをはじめてみれてうれしいよ。それにしても…ふっふっふ。かかったなねずみどもめ』
罪を暴く側なのに笑いがまるで悪役のようなヒュース。
『秘蔵の椅子なのに勝手に持ってきて良かったんですか?』
真面目なユーリが聞く。
『だって王様がいいっていったから』
直属の上司なのに無視される院長。何だか可哀想になってきた。
『でもどうやって持ってきたんですか?秘蔵というからには厳重に保管されていたのでしょう?』
『それなら私が鍵を壊した』
フリネラがサラッと言う。
『あの大剣で壊したのですか!?』
『いや、素手で』
『素手!?』
ますますパワーが上がっているような気がする。いや、今はそれよりも尋問だ。
「さて、男爵。神官長にいくら払った?」
「そんな事…払いました。50センク払いました。はあっ!また!」
50センクとは馬が1頭買える額だ。
何と神官長もグルだったとは。
「だろうな。神官長からも事情聴取をした。ベラベラと話してくれたぞ」
そう、神官長にもあの椅子に座ってもらった。呆けてなどおらず、饒舌にあれこれ話していた。あの狸爺、他にも裏で色々やっていたようだ。おかげで神官長は追放となった。
『どれどれ、嘘つき達はどうなったかな?』
そこに神官の一人、シンジェがやってきた。
『げ、シンジェ』
『げ、とは何ですか。げ、とは。愛しのフリネラ』
このシンジェ、何と新人大会のときにフリネラの戦い振りを見て一目惚れしたという変人。神官長の調査で赴いたときに男性になっているフリネラを一目で見抜いたくらいの愛の持ち主。一体何者なのか?
シンジェ・フォン・ブランー。
23歳という若さで大司教という位に着いた大物だ。それに加えて顔立ちが整っており、女性人気も高い。しかし彼には変わった趣向が。それは8〜13歳の女子にしか興味がない少女愛。さらに気の強い子が好きだと言うではないか。だからフリネラは見事シンジェの条件にピタリと当てはまっている。故に会えば求婚をしてくるという面倒くさい人物。だから会わないように気を付けていたのにここまで来るとは…。
『今、良い所なのだから邪魔はするなよ』
『そうなのかい?なら、見えやすいように私が抱き抱えて上げようではないか』
『いらん!』
ガツンッ!
容赦なくシンジェの頭を殴るフリネラ。
『ああ、君の手で殴ってくれるなんて。この痛さも吹き飛んでしまいそうなくらい気持ちが良いよ』
『…』
フリネラに殴られても気絶せず、感動に浸るシンジェ。こんな事になるのは世界中探しても彼くらいだろう。
『へんたい…』
あのヒュースでさえ大嫌いなトマトを見ているときような目付きだ。
『皆さん、静かにして下さい』
ユーリが聞こえないと人差し指を立てる。
「それはな断罪の椅子と言ってな。座った者は正直に話すようになっている、昔拷問に使われた代物だ。特に隠し事や不正を行なった者に効果覿面でな」
ニヤリと笑う国王。
「わっ、私はそのような事はして…いました。何でだ!?口が勝手に」
「そうだろう、そうだろう。それで何をしようとしていた?」
先ほどとは違いギロリと男爵を睨む。
「私は何も…娘を聖女と偽ってこの国の権力者になろうとしておりました…はあっ!」
「では、ミディエラ。お前は父の言う通り聖女ではないな?」
「わ、私は…」
「何だ?」
さらに圧を掛ける。
「お父様に言われて聖女を演じていたら殿方から持て囃されて…いけない!」
ミディエラも椅子の影響を受けているようだ。
「今の二人の言葉、きちんと記録したなラディー」
「はい、陛下」
ラディーこと宰相は今までの会話を紙と魔法珠に記録していた。
「コレだけでは証拠とはなりませんぞ!」
男爵が口を挟む。
「ではこれではどうだ?」
フリネラ達が盗聴に使った魔法珠を取り出し再生する。
「こ、これは…」
「もう言い逃れ出来まい、男爵。いや、ラデル!そなたの罪は重いぞ。国家へのを偽証罪・反逆罪未遂として国外追放とする!」
「そんな…」
「連れて行け」
「はっ!」
二人は椅子から解放されたものの両脇を兵士にガッチリ捕まえられ取り押さえられ連れて行かれた。
『やりましたね!フリネラさん、ヒュースさん』
『いえーい』
『やっとライニール役から解放される…』
これで偽りの聖女騒動は幕を閉じたー。
皆さん、こんにちは。こんばんはでしょうか。芝佐倉です。何とかここまで来る事ができました。これも読んで下さるお優しい方達のおかげだと思っております。これからも宜しくお願い致します。




