ティータイム
「何なんだ!あの偽物聖女。隙さえあれば私の体に触れようとしてくる!聖女じゃなくて性女じゃないか!?あのミジンコエラ!」
夕方、ミディエラの元から戻ってきたフリネラが先ほどから叫んで暴れている。
おかげで壁に大きな穴が空いた。勢いで空けてしまったのだ。
「落ち着いて下さい、フリネラさん!それにミジンコエラではないです。ミディエラさんです」
暴れているフリネラを止めようとするユーリ。
だが、体が女性なだけに力が通常よりもない。一方、フリネラは男性になった事でますます力が強くなっていた。もうバケモノと言われてもおかしくない。
「これが落ち着いていられるか!逃げたらベッドに括り付けられたんだぞ?無事に脱出できたから助かったが。このままだと食われる!」
ガンッ!
バキッ!
今度はイスが壊れた。テーブルも真っ二つ。
「ぼくのへや、なくなるからすとっぷ」
「…ああ、すまん」
ヒュースにこわい声で頭をぺちぺちと叩かれた。
ようやくフリネラは正気に戻った。
すると、部屋のドアをコンコンとノックする音が。
不味い。ここにいるのが誰かに見つかったらテオールにもバレてしまう。そうなったらこの計画もおしまいだ。
「隠れましょう!」
急いでクローゼットに隠れる二人。
「はい…」
ヒュースは二人が隠れたのを確認してからドアを開ける。
「ヒュース。何か物凄い音がしたが何をしていたんだ?また怪しげな事をしていたんじゃないだろうな?…おい!壁も家具も壊れているではないか!」
こっそりと隙間から覗く。
何と来訪者は魔法院院長だった。
散々な部屋の有り様を見て驚いているようだ。
「じっけんです」
ヒュースが説教されてしまう。どうしよう。
「何だ、全く。それならちゃんと直しておくんだぞ」
それだけ言うと帰っていった。
放任主義過ぎないか?あの院長。
ヒュースに甘い…というよりは普段の行いにより、呆れられているのだろう。
まあ、そのおかげで助かったが。
「…いったよ」
ヒュースが声を掛けるとクローゼットから二人が出てくる。
「はあ…」
「危なかったですね」
「おちゃでものむ?おちつくよ」
あの謎の色をしたヒュース特製泥水茶か。
味は美味しいのに何故あんな色になる?
でも飲みたくはない。
「わっ、私はミジンコエラの所でたくさん飲んできたから大丈夫だ!」
「フリネラさんですよ、ミディエラさん。ああ、間違えました、逆ですね。すみません。僕は部屋の修理をしますので」
焦って断る二人。ユーリも相当、動揺しているようだ。
それもそのはず、色だけではない。今の状態で飲んだら何が起こるか分からない。
「せっかくいれたのに、ざんねん」
しょんぼりとするヒュース。
見るとお茶の用意はもうできていた。いつもの謎の泥水茶だ。
今日は茶柱も立っているではないか。遠い東の国では緑色のお茶を飲み、「茶柱」が立っていると縁起が良いとされている。昔、聞いた事がある。
アレ?茶柱という大きさではないな。アレは枝か?葉っぱが付いているぞ。どうやったら立つんだ?そんな事を考えても意味はない。作ったのはヒュースなのだから。
友達がせっかく淹れてくれたお茶だ。無駄になんてできない。
「飲むぞ」
「フリネラさん!?」
大きな透明なカップを持ち、グッと一気に飲む。
それを見たユーリも続けて飲んだ。
ヒュースも一口。
「相変わらず見た目だけで美味しいな」
「そうですね」
「ありがとう」
「「「ん?」」」
この違和感は何だ?
さっきといた場所が違う。それに私とユーリが見ている?
「私がヒュースになっている?」
ヒュースの姿でハキハキと話す。
「という事は僕がフリネラさん?」
フリネラの姿で真面目な話し方はユーリ。
「じゃあ、ぼくがユーリ?」
ユーリの姿でのんびりと離すのはヒュースという事になる。
「中身が入れ替わっているではないか!」
「こうなったのは先ほど飲んだお茶しかないですよね?何を使ったんですかヒュースさん!」
「あー、もしかしてこれを入れたのがダメだったのかな?」
そう言って薬草が入った袋から手に取ったのは「アジサイ」だった。あの立っていた枝はアジサイだったのか!
「それには毒が入ってます!」
私の姿で言うユーリ。何か変だな。
「いれたらきれいかなーとおもって…」
「そういう物ではありません。青酸配糖体とアルカロイドが含まれていると聞いた事があります。品種や個体によって毒の成分や量には大きく差があると言われているそうですが今回はヒュースさんの配合によって何か化学反応が起きたのでしょう」
んー。何を言っているか分からない。
私の姿のユーリに叱られるユーリの姿のヒュース。
もう誰か何なのか全然分からない。
「ごめんなさい」
しょんぼりとするユーリの姿のヒュース。
「全く…お」
待てよ。
これで私はミジンコエラの所に行かなくても済む。何故なら今、私はヒュースの姿なのだから!
行くのは私の姿のユーリだ。ユーリには悪いがこれは利用させてもらおう。
「ちゃんと調べてから使うんだぞ」
「うん」
ん?ちょっと待て待て。あれだけ実験ばかりしているヒュースが果たして毒に気付かないなんて事があるか?まさか試された!?ここは
「おい、ヒュース。この薬の効果はどれくらい続く?」
「えっと、あといっしゅうかんは…あー」
引っ掛かったな。
「よくも騙したな!」
「だましてないよ。ためしただけ」
「そうだったんですか?ヒュースさん!」
「同じ事だ。今度こんな事をしたら友達やめるからな」
「え…」
無表情だったユーリの顔がしょぼしょぼになる。ヒュースにはどうやらダメージが大きかったようだ。
んん?待て待て待て。
あれだけの知識を持っているユーリが私が飲みきっているところを見ていて止めなかった。まさかの見殺し!?でも自分も飲んでいた。どっちだ?
「ユーリ…?」
「何ですか?」
いつも通りのユーリだ(今は私だが)
ユーリに限ってそんな事はないか。考え過ぎだ。
「それよりも早く元に戻る方法はないんですか?」
ユーリがヒュースに聞く。
「それなら…」
「一週間待てば戻るんだろう?だったら待てば良いだけだろう」
「…フリネラさん。いつもなら真っ先におこるのに今日は大人しくないですか?」
「そ、そんな事はないぞ」
バレたか?
「もしかしてミディエラさんの所に行きたくなくて僕を身代わりにしようとしてませんか?」
「な、ないぞ」
明らかに動揺している。
「ほんとうに?」
ヒュースまで疑っている。
「ない!ないったらない!」
誰もお互いを責められない。知るのは神のみかー。




