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魔王対魔王

「ここまで来たぞヒュース。今日こそお前を倒す!そしてこの世界に光を取り戻すのだ」

「まちくたびれたぞフリネラよ。このよはやみでしはいされている。これこそがほんとうのせかいのすがたなのだ。じゃまはさせん」

まるで勇者とラスボスの魔王のような会話。

どうやら大衆向けに出版された小説を読んで影響されたらしい。

「すっかり小説の影響を受けていますね…」

「ああ…でもぴったりだな。あの二人」

ユーリとリルが微妙な顔をしながら言う。

二人は良い所まで進んだのだが負けてしまった。そこで二人を応戦する事にしたのだがまさかフリネラとヒュースが戦う事になるとは。


「準決勝。第2番隊陸軍フリネラ・フォン・テスミール対第3番隊魔法院ヒュース・フォン・バルロット」

真剣な顔をするフリネラと(そう見える)ヒュース。

「始め!」

先に動いたのはフリネラ。

カデニュウスで攻撃を仕掛ける。

それを素早くかわすヒュース。

だが、ローブを少し切られてしまう。

「やるね」

「まだまだ」

ヒュースもガデスメルディニュウスを取り出し応戦する。

カンッ!キンッ!

剣と鎌のぶつかり合う音が会場に響く。

「ヒュース、お前まだ余裕だろう?」

「どうかな?」

「ではこれではどうだ?カデニュウス第2形態、ヴァルディニュウス!」

フリネラが言うと大剣から槍に変形した。

「おもしろーい」

パチパチと拍手するヒュース。喜んでいるらしい。

「カデニュウスにそんな能力があったんですね!」

「拍手してる場合かよ…」

興奮気味のユーリに呆れているリル。


早速、ヴァルディニュウスで攻める。

ビュンッ!ビュンッ!

槍は勢い良く音を立てる。

驚くのは音の大きさもだが身長150㎝ほどの少女が全長約3mの槍を振り回しているのだ。ネイリンが「バケモノ」と言っていたのも頷ける。

「いいね、いいね」

これも避けられる。ただの呪術実験バカではなかった。これには親代わりだった魔法院院長が一番驚いている。いつも講義は投げやりだったのに。ああ、槍は相手の方か、などと思考がおかしくなるくらいに驚いている。

そうしている間にようやくヒュースの頬に傷が付いた。血が流れる。

「ここまでわれをおいつめるとはさすがだな。だがそれもここまでだ」

と言うとガデスメルディニュウスに流れた血を擦り付けた。

「ガデス、おどれ」

ヒュースが命令すると髑髏の装飾が頭となり、鎌が手足のように伸び、増えた。その姿はまるでカマキリのようである。

「さあ、いくのだ。てしたガデス。ぜつぼうのあじをあじあわせてやれ」

「そうはさせん!この希望の光は消えたりしない!」

まだ勇者と魔王ごっこは続いていたのか…。

でも本人達は真剣だ。


「行くぞ!カデニュウス第3形態、ロストルドッティニュウス!」

今度は鎖鎌に変形する。

鉄球の重さは1t。それを狙いを定めて振り回すフリネラ。もう勇者では済まされない域だ。これではどちらが魔王の手下か分からなくなってきた。

ズゥンッ!!

鎌で攻撃するガデスメルディニュウス。それをかわし、鉄球を投げるフリネラ。

見事にガデスメルディニュウスの足部分に鎖が巻き付いた。それをそのまま引っ張って倒そうとするがガデスメルディニュウスも負けない。どちらも譲らないまま膠着状態が続いた。

「ぐっ…!」

フリネラは鼻血を出し、口からは血が流れている。

「フリネラさんっ!」

その様子を見て叫ぶユーリ。

「カデニュウスは使用する者の力を吸収して強くなる。別名『鉄血の女王』昔は成人だったから良かったが今のフリネラで耐えられるかどうか分からない。それにもし最終形態まで進んだらどうなるか…」

苦い顔をして言うテオール。

「昔?最終形態?何の話ですか?」

「ああ…えーと、前にフリネラに聞いた事があったんだよ。関係する本も読んだしね。だから知っているんだ」

焦ってユーリに説明する。

少々無理があっただろうか?

「そう、ですか」

不思議そうな顔をしているがそれ以上聞いてこないのでセーフにしよう。


「ふっふっふっ。どうだ、てもあしもでまい。これでさいごだ」

ヒュースは蜘蛛の糸を出し、フリネラを逃さないように強く巻き付ける。

「ううっ…!」

ヒュースは手を地面に当てる。

「ぼくのさいきょうのてしただ。しょくじのじかんだよ、ベラノーザ」

すると地面がボコボコと盛り上がり、巨大な植物が現れた。普通の植物と違うのは花の部分に大きな口と何本もの蔓が伸びていて、根は足のようになっている。

「いけ、てしたよ。ひとのみにしてしまえ」

涎(粘液)を垂らしながら迫るベラノーザ。

そのときヒュースの攻撃によってボロボロになった藁人形に血が滴り落ちた。

「カデニュウス最終形態…カルヴァニュウス」

フリネラが呟くと鎖鎌からハンドクローに変形した。

素早く蜘蛛の糸を切り、跳んでベラノーザから距離をとる。

「フフフフ…ハーハッハハハッ!」

無理矢理に糸を切った為、血塗れになって笑うフリネラ。その姿は狂気に満ちている。

「愉快、愉快だ!長い間、出てこれなくて退屈だったからな。だが今から楽しい殺し合いの時間だ!さあ、存分に味わうが良い。私の切れ味を!」

これではフリネラの方が魔王に見える。

「もしかしてフリネラにのろいがかかった?ぼく、もっとちがうちからもみてみたいとおもったから。どうせだったらまおうみたいにつよくなっちゃえって」

原因は間違いなくそれだ。


藁人形にヒュースの攻撃が当たり、フリネラを呪う準備に。

フリネラの血が藁人形に付くとフリネラを呪う媒介となった。

魔王みたいに強くなれという願いが呪いとなり完成。間違いない。


「あの状態になってしまっては俺達では止められない。先の大戦でどうしてもカルヴァニュウスを使わなければいけないくらいの窮地に立たされた事があった。さっきも言った通り、カデニュウスは使用する者の力を使う。カルヴァニュウスは相当な力が必要だ。あれは鉄をも引き裂く力を持っている。だが、運悪く敵側には呪詛師がいて隊長…フェリージェを狙った。しかしカデニュウスは持ち主を守る剣でもある。カルヴァニュウスは呪いを吸収したは良いがそれは相手を錯乱状態にする呪い。フェリージェは攻撃こそ最強だが防御には特化していなかった。強い呪いは伝染しフェリージェは暴走。呪詛師の目論見は外れ、敵は全滅。力を使い切ったフェリージェは気を失いようやく止まった。最終形態のカルヴァニュウスの呪いは解けていない。使わないようにと注意していた…と先祖が言っていたらしい」

前世の話はセーフ。でもフリネラはアウトだ。

ベラノーザの所まで信じられない速さで走ると蔓による攻撃を次々と避け、ズタズタに切り刻む。赤い花びらは血のように散っていった。

「ヴァァァー!!」

叫び声を上げてベラノーザは崩れる。

「しんじられない。ベラノーザがまけるなんて」

「最強の手下とか言ったか?大した事なかったな。準備運動にもならなかった」

カルヴァニュウスに纏わり付いた液体を振り払いなから言うフリネラ。

「もっと私を楽しませてくれ」

今の姿はまるで別人のようだ。残酷な笑顔。それは戦いを好む殺人狂。


そこに背後からガデスメルディニュウスが襲い掛かる。気付いたのかサッと離れ、片手だけで鎌を止めた。

「ああ、お前がいたか。お前は私を楽しませてくれるんだろうな?」

ヒヒッと笑みを浮かべるフリネラ。

もう片方の鎌も振り下ろされる。地面が割れるほどの攻撃力だ。

しかし、そこにはフリネラの姿はなかった。

「上だよ、能無し」

見るとガデスメルディニュウスの頭上にいた。振り落とそうとするがカルヴァニュウスで引っ掛かっている為に落ちない。

「分かった、分かった。相手をしてやろう」

フリネラは跳んで着地する。

「さあ、掛かってこい」


キンッ!

ガッ!

カンッ!

ドォンッ!

「ヒャハハハッ!もっと、もっとだ!」

楽しそうに跳び回るフリネラ。

そんな中、すっかりヒュースの存在を忘れていた頃、満足そうに(見える)大きな藁人形を完成させていた。

「おいっ!ヒュース。試合中に何をしとるんだ!そんな物作ってないでさっさと試合に戻らんか!」

叫ぶ魔法院院長。

「そんなもの?ぼくのさいこうけっさくひんのげいじゅつせいがわからないなんて、ろうがんですか?いくらいんちょうでもゆるしませんよ。あんなことやこんなこと、かぞくにいいますよ?」

「…」

黙る魔法院院長。

どうやらヒュースに弱みを握られているらしい。

「そろそろ遊びはおわりにしよう」

フリネラはさすがに血を流し続けたからかフラフラしていた。やはりこの体ではカルヴァニュウスの力に耐えられないのだろう。

「そうだね。金縛り」

ヒュースはフリネラに向かって空間から鎖を伸ばす。鎖はグルグルと巻き付き、両手両足の身動きを取れなくした。

「フンッ!こんな物カルヴァニュウスなら簡単に壊せる」 

そう言って壊そうとするが傷一つ付かない。

「何故だ!?」

「これはね、じごくのざいにんをぜったいににがさないためにつかわれているくさりなんだ。だからどんなぶきでもかんたんにはこわせないよ」

「クソッ!」

「もどれ、ガデス」

ガデスメルディニュウスは大鎌の形に戻り、フリネラの制服を破いていった。

それをビリビリと2枚に割き、藁人形の手の辺りに釘で打ち付ける。

それを「カデニュウスにもどれ。カデニュウスにもどれ」と言いながらガデスメルディニュウスで叩きつける。

「何をしとる!相手を支援してどうする!?」

また魔法院院長が叫ぶ。

「めにはめを、じゅじゅつにはじゅじゅつです。ゆうしゃはけんでなければいみがない」

謎の理論とこだわりを展開するヒュース。

それが効いたのか、カルヴァニュウスからカデニュウスに戻った。同時にフリネラも意識を戻す。

「ハァ、ハァ…。すまぬヒュース。面倒を掛けたな」

「ともだち、だから…」

と手を差し出したままバタリと倒れてしまった。

「ヒュース!?」

急いで駆け寄ると

「くぅー、くぅー…」

と寝息が聞こえてきた。

リルが観客席からこちらに駆け寄ってくる。

「最近、例の小説を徹夜して読んでいたみたいだしこれほど力を使う事もなかったからな。疲れたんだろう」

ヒュースを抱えて第4番隊の所まで運ぶ事にした。

「勝者、フリネラ・フォン・テスミール!」


こうして魔王は倒された。というより自分から倒れた。そして運ばれる魔王を見送った勇者も倒れた。

「フリネラ!」

テオールが走ってくる。

勇者と魔王、最後は仲良く運ばれていった。

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