人間とは
「次はフリネラさんの番ですね。頑張って下さい!」
ユーリがエールを贈る。
「ああ、ようやく暴れられる」
「ほどほどに…」
フリネラが暴れたら会場が破壊されてしまう。
「第11試合。第2番隊陸軍フリネラ・フォン・テスミール対第3番隊魔法院ネイリン・フォン・ネイチェル」
「女性同士ですもの。お手柔らかにいきましょう」
笑顔で握手するネイリン。
「勝負に女、男など関係ない。ただ勝つのみだ」
通常通りのフリネラ。
「まあ、コワい。噛みつかれたら大変だわ」
わざとコワがっているような顔をする。
「だったら引っ込んでいたらどうだ?こんな物騒な所ではなく、素敵なお庭でお茶でも飲んでいる方が優雅で良いだろう」
「そうね。でも私は大丈夫。あなたみたいに本能で動き回る獣とは違うから。逃亡したら大変ね。檻に入れておいてほしいものだわ」
「私は人間だ」
「あら、ごめんなさい。赤獅子なんて呼ばれているんですもの。動物かと思ったわ」
謝っているような口振りだが明らかにバカにしている。
「最初に女性と言わなかったか?」
「だってメスなんて本当の事を言ったらかわいそうでしょう?だから気を遣ってあげたのよ」
うるさい女だ。
「先ほどからネチネチと嫌味ばかり。うるさいぞ、ネチネチ!」
「わ、私の名前はネチネチではありませんわ!ネイリンよ。ネイリン・フォン・ネイチェルよ!」
「ほら、ネチネチで良いだろう」
「何なの!?知能も低いのかしら?もうおしゃべりの時間はおしまいよ。その無礼な口、塞いで差し上げますわ。風の精よ、我に仇なす者を葬りたまえ。竜巻!」
先にベラベラと話し始めたのはお前だろう。それよりも今は竜巻か。
「フンッ!」
ゴォォォ!!
フリネラが剣を一振りすると竜巻が空へと飛んでいった。
「私の竜巻を飛ばした!?」
ビュウウウ…。
その影響で観客席にいたどこぞの大臣のカツラが吹っ飛んでいった。
「あー…」
「え…」
大臣は頭の通気性の良さに気付いたのか、頭を一生懸命隠している。周囲もそれに気付き始めたのかザワザワしている。
「わっ、私ではありませんわよ。あなたが攻撃を受けていたらこんな事にはなりませんでしたのに」
ネイリンは焦って言う。
「普通は避けるにきまっているだろう。それに飛ばされるくらいのそよ風みたいな攻撃をする方が悪いだろう」
竜巻をそよ風扱い。フリネラにしかできないだろう。
「そよ風ですって!?私の力をバカにしましたわね、このゴリラ女!」
「ゴリラだと?」
「そうよ。私の竜巻を飛ばすなんて怪力のゴリラよ。ああ、そうだわ。あなた、フリネラじゃなくてゴリネラね。アハハハ!」
「ゴリ、ネラ?」
「そう、あなたの名前はゴリネラ。お似合いよ」
「そうか」
フリネラの目付きが変わった。
「な、何よ」
剣をドスッと地面に突き刺す。
「何度もゴリラ、ゴリラと…。そんなにゴリラの怪力が良ければ味わうが良い」
「なっ、何をするつ…」
ドスンッ!!
素早くネイリンの所に移動してパンチを食らわせる。
だが、防御魔法を使っていたので防げた。
「危なかったわ…。えっ?」
足元を見ると地面が広範囲に渡って大きく割れていた。
「!!」
武器は着けていない。素手だった。素手でこの地面を?
「どこを見ている?ゴリラは後ろだぞ」
振り返る間もなく背後から攻撃される。
「ぐはっ!」
殴られた勢いで飛ばされた。
防御魔法も破られている。ウソだ!剣の名手じゃなかったのか?こんな力どこから。
その間にもフリネラは素早く移動する。
「ほら、ゴリラはここだぞ」
今度は強く蹴り飛ばされた。
「うぐっ!」
地面にゴロゴロと転がる。
「ゲホッ!ゲホッ!」
起き上がろうとするが体が痛くて動けない。
近付いてくるフリネラ。
速く逃げないと殺されてしまう!
もうカツラの件は頭から吹っ飛んでいた。
二人とも。
足元に転がるネイリンを見下ろすフリネラ。
「どうだ?ゴリラの怪力の味は。まだ足りないか?人間のお嬢さん」
「バッ、バケモノ!!やっぱり人間じゃないわっ」
「バカモノ?お前、どこまで私の事を…」
「違うわよ!バケモノよ。本当に頭おかしいんじゃないの?」
「バケモノもバカモノも変わらない。お前は私をゴリラと呼んだ。これが最大の敗因だ」
まだこだわっていたのか。
「ま、まだ負けてないですわ!」
強がっているだけだ。その証拠に風魔法を使って全力で逃げるネイリン。
「無駄な事を」
そう言ってフリネラは人差し指を天に向かって指す。
「えーと。天の鉾、雷神イ、イー…イーヴァよ。合ってるよな?愚かなる人間に神の裁きを。今、この地に神の、み…御業?を発現せん。雷(小)!」
詠唱をして、手を降ろすと空が曇り、ネイリンを目掛けて小規模な雷が落ちた。
「うああーっ!!」
ネイリンは叫ぶと共に地面に落ちた。
様子を見に行くと少し黒焦げになっている。ピクピクと動いているのでそこまで重傷ではないだろう(フリネラ基準)
「おーい、生きてるか?生きてるな。死なないように『小』にしておいたからな」
「あ、あなたが、ゴボッ。魔法を使えるなんて、聞いてませんわ」
「当たり前だろう。いくら陸軍とはいえ、空の敵も相手にする。まあ、久しぶりに使ったから上手くいくかどうか分からなかったがな」
「くっ…!」そこでバタッと倒れた。
「勝者、フリネラ・フォン・テスミール!」
そのときだった。
バサッ。
黒い塊がネイリンの顔の上に落ちてきた。
「何だ。これは?」
見ると、それはどこぞの大臣のカツラだった。
上を見ると鳥が飛んでいる。
どうやら咥えていた物を落としたようだった。
カツラは無事?持ち主に返り、ネイリンは第4番隊に運ばれていく。
第2番隊陸軍の皆は思った。
『遠征のおやつにバナナは含まないようにしない』と。




