新人大会
待ちに待った新人大会。
防具を付け、愛剣カデニュウスを手に持つ。ヒュースからもらった藁人形はせっかくなのでお守りとしてもっている。
この新人大会は今年入隊した新人の中から各隊6名選抜して行う。
トーナメント方式で何日かに渡って行われ、最初の対戦相手はくじ引きできまる。
第2番隊陸軍からは私フリネラ、ライネル、ルシェルド、ユーリ、ナツカ・フラッドネル、オルド・メーリングの6名。
他に第2番隊は空軍、海軍も参加している。海軍はいつ海賊に襲われても対抗できるように日々、訓練している。水属性の魔法が使える者もいる。
あとは当然だが第1番隊と第3番隊もいる。やはりミハエラとヒュースの姿があった。大人数の中から選ばれるという事はかなりの実力者なのだろう。楽しみだ。第4番隊は怪我人の手当てをする為、何名か待機している。
第1番隊は貴族のお坊ちゃんの集まりみたいだな、などとおもっているとミハエラがこちらに来た。
「今度こそ君を倒す。手加減はなしだ」
自信満々なようだ。
「もちろん」
そう言って握手をする。
「あれがウワサの赤獅子…」
「一緒にいるのは第1番隊のエースじゃないか?」
皆、コソコソとこちらを見ながら言う。嫌な視線だ。そこに「おーい!」と手を振りながら近付いてくる男がいた。銀髪をターバンで巻いている赤い瞳の男。
「お前、フリネラ・フォン・テスミールだろう?そっちにいる眼鏡はユーリ・ネイラーだな」
いきなり私達に向かって話しかけてきた。
「そうだが。貴方は?」
「俺、リル・シルバ。第3番隊でヒュースの同期」
「貴方が…先日は美味しいお菓子をご馳走様でした」睡眠薬入りで危なく実験体にされるところでしたが。それはヒュースだ。お礼は言っておこう。
「美味かっただろう?あれ、俺の出身地の伝統的な菓子なんだ。あまり食事をとらないヒュースでもあの菓子は食べてくれるんだよ」
何だか嬉しそうだ。
「リル、よけいなことはいわないで」
そこにヒュース本人が来た。
「プレゼントよろこんでくれた?」
「お前がプレゼント!?何、贈ったんだよ?」
驚いたリルが聞く。
「わらにんぎょう」
「それ…呪いに使う物だろう」
「のろいたいヤツがいたらすぐつかえる。ぼくのてづくり。こうかばつぐん」
「私はお守りとして持っているぞ」
「僕もです!魔除けとして」
「お前ら…」
それを聞いたリルの顔から笑顔が消えた。
「そろそろ時間だ。選手は集合しろ!」
いよいよ始まる。気合は充分だ。
「これより、帝国騎士団新人隊員戦を始める!」
ワー!!盛り上がる会場。
「今回も優勝者には陛下から褒美が与えられる。皆、優勝を目指して一生懸命励むように」
「褒美って何でしょうね?」
ユーリが興味津々で聞いてくる。
褒美がなくとも優勝するつもりだ。
「第1試合。第1番隊ミハエラ・フォン・ハイリッヒ対第2番隊陸軍ナツカ・フラッドネル!」
オオー!!
「始め!」
「フンッ!」
「ハッ!」
カンッ!キンッ!
剣同士のぶつかり合う音。
しばらくの間続いたがそれも次の一撃でおわる。
ビュンッ!
ドサッ。
ナツカが尻もちをついた。
「勝者、ミハエラ・フォン・ハイリッヒ!」
ワァー!!第1番隊が盛り上がる。
「惜しかったな、ナツカ。あのミハエラ相手に良くやった」
テオールが声をかける。
「悔しいです…。頼んだぞ、ユーリ」
「頑張ります」
次はユーリの番だ。
「第2試合。第2番隊陸軍ユーリ・ネイラー対第2番隊空軍ハバルト・リーチェ」
相手は空軍だ。空から仕掛けてくるのは間違いない。
「お前が相手ならすぐだな。準備運動くらいにはなるだろう」
バカにしている。このくらいは想定内だ。取り乱したりはしない。
「これでも食らえ!」
案の定、空中に飛び、銃で撃ってきた。安全を考えて弾はゴム弾だが当たると痛い。
ユーリは走って全弾避ける。
「クソッ!これならどうだ」
先ほどより速い弾を撃ってきた。
避けたようだが何個か当たってしまう。
「どうだ。これ以上痛い思いをしたくはないだろう?降参した方が良いぜ、ヒョロガリ眼鏡」
「そうですね。やはり空中戦は厳しい。お願いです。せめて高度を下げてはくれませんか?」
「そうだな。これでは俺がいじめてるみたいだ。それくらいなら聞いてやろう」
そう言ってハバルトは何とか届きそうな範囲まで降りる。
「ありがとうございます」
ユーリは地面を蹴り上げ飛ぶ。だが剣で相手の髪の毛を少し切っただけだった。
「惜しかったな〜」
「充分です」
ニヤリと笑うとハバルトの髪の毛を持っていた藁人形に詰め込み、腹の辺りに剣を突き立てる。
「ぐはっ!!」
するとハバルトの体がお腹を殴られたように曲がる。
「なっ、何だ!?どうなっている?うぐっ…!」
「これは呪いの藁人形。相手の体の一部を入れて攻撃するとその相手にも影響を及ぼすんですよ。ヒュースさんの親切な説明書のおかげです」
「もうっ!もう止めてくれ!!」
「降参するという事で良いですね?どうですか。バカにしていた相手に負けた気持ちは?」
「そんなもんっ…!」
とどめにもう一回刺す。
「うっ!!」
ハバルトが地面に落ちた。
笑顔なのだが地面に這いつくばるハバルトをまるで虫けらを見るような目付きのユーリ。
第2番隊陸軍の誰もがそれを見て思った。
『ユーリをおこらせてはいけない』と。
「もう一度言います。降参で良いですね?」
「クソッ!」
ハバルトが銃を投げる。
「勝者ユーリ・ネイラー!」
第2番隊陸軍が喜ぶ。反対に空軍は苦い顔をしている。
ヒュースを見ると無表情だが親指をグッと立てている。
それからも各隊の激戦は続いたー。




