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第七話 ~どうやら勉強しすぎたようです~

それからというもの、昼食後の自由時間は毎日のように魔法の勉強に励んでいた。

たまにフローラの呼び出しにも気付かないくらい集中してしまうこともあるほど、とても楽しい毎日だった。


そうして1年が経とうとする頃には、部屋にあったたくさんの本も一通り読み終えてしまい、魔法もほとんど使えるようになっていた。


ロザリアは記憶力が抜群で、一度覚えたことは忘れることはなかったから、呪文も本を見ずに詠唱できるようになったし、魔法適正が抜群らしく、闇以外の全てのジャンルを名人級まで習得できてしまった。

神話級と伝説級も使えるだろうが、さすがに覚えるだけにして、試すのはやめておいた。


「あれを試したいんだけどねぇ、どこにも書いてなかったからなぁ。」


歴史を学んでいた時に知ったのだが、はるか昔に無詠唱で魔法を使う人がいたというのだ。

だが残念なことに、それらしい記述は見つからなかった。


「ま、気長に探すとしますか。」


別に詠唱文を覚えるのが大変というわけではない。詠唱するのが手間なので楽できないかなと思っているのだ。


「別にないと困るわけじゃないしねー。」


とはいえまさか名人級まで本に書かれていたものは全て取得できてしまうとは思っていなかった。

回復もかなりの腕前になって、即死しない限りはほとんど治せるはずだ。


ただ回復については土魔法で作った模型で試しただけで、実際に試した訳ではないのが心配だ。

まあいつか使う機会があるだろう、と思っていると、フローラが呼びにやってきた。


「ロザリアお嬢様、公務のお時間です。」といつものように淡々と告げる。


「分かったわ。」と言った後、そうそう、と忘れないうちに言っておく。

「そうだわフローラ、もうここにある本は全て読んでしまったから、新しい本が欲しいのだけれど。」

「え、ロザリアお嬢様、もう読んでしまわれたのですか!?すごいですよ!」

「そ、そうかしら?」


なんだかとても褒められてしまった。

ただ本を読んだだけなんだけどねと思いつつ、嬉しいものは嬉しかった。



部屋を出て、いつもの大広間に向かう途中のこと。

「ロザリアお嬢様、もうすぐ10歳になられますね。」とフローラがそういえば、と思い出したように言った。

「ええ、そうね。」

「10歳の誕生日には誕生日会が行われるのを、お忘れではないですよね?」

「・・・・・・忘れてたわ。」


もう記憶が蘇ってから1年になるのかと思いつつ、話を続ける。


「だと思いました。では当然、魔法の披露のことも覚えてないですよね?」

「え?そんなのあった?」

「慣例として、王族の方は10歳の誕生日会で上級魔法の1つを披露するものです。一応聞きますけど、上級魔法、使えるようになったのですよね?」

「も、もちろんよ!使えるわ!」

「ちなみに何の種類でしょうか?」

「闇以外全部よ!」


私は誇らしげに言った。


するとフローラが立ち止まり何か言いたげの様子。


「ロザリアお嬢様、流石に私に見栄を張らなくてもよろしいのですよ。」

「え、いやいやいや、嘘は言ってないのよ、本当に使えるのよ。」

「しかし、魔法は1人につき1種類です。何種類も使える人などいるわけがありません。」


あれ?伝説級を使えることだけでなく、まさか全種類使えることも隠しておかないといけなかったの?


「・・・・噓でしょ?」

「私が噓をつくわけないじゃないですか。」


まだフローラは私が多種類使えるわけがないという顔をしている。


「分かったわ。明日の自由時間、あなたも付き合いなさい。見せてあげる。」

「承知しました。ロザリアお嬢様。どのみちちゃんと使えるのか確かめようと思っていましたので。」


大広間についた私は(とりあえず見せるのは上級だけでいいよね。)などと思いつつ今日の公務を始めた。



-▽-▽-▽-▽-▽-▽-▽-▽-▽-



翌日。

いつもの部屋にやってきた私は、一緒にいるフローラに闇以外の上級魔法を一通り見せてみた。


「どうかしら?これで、私が多種類使えるのが証明されたと思うのだけれど。」

「信じられませんが、本当だったのですね・・・・。」


少し考えた後、フローラはこう言った。


「ロザリアお嬢様。このことはアルセイン様やカリーネ様含め、誰にも言わない方がいいでしょう。

これが公になると大変なことになるのは目に見えています。」

「まあそうなるわよね、あ、リーナには話してもいいわよね?」

「そうですね、彼女なら大丈夫でしょう。」

「それで、私は何を披露すればいいと思う?」

「回復がよろしいと思います。一国を守るお方なのですから、攻撃より民を救える力があることを示したほうが。」

「なるほど、分かったわ。」


元々色々隠すつもりだったが、まさか2種類以上使えることまで秘密にすることになるとは思わなかった。


早速フローラにリーナを連れてきてもらい、さっきと同じように一通り披露した。


「フローラから聞いた時には半信半疑でしたが、すごいとしかいいようがありませんね、さすがお嬢様です。」

「それでリーナ、先ほども言ったけれどやはりこれは口外禁止よね。」

「当然の判断ね。こんなの大騒ぎどころではすまないわよ。」

「あのー、フローラにリーナ、これってそんなにすごいことなの?」と一応聞いておく。

「当たり前ですロザリアお嬢様!この国の歴史上、いや、今までの世界中の歴史を見ても闇以外で2種類以上使える魔法使いなんて聞いたことありませんから!」

「そ、そうだったのね・・。」


あまりに衝撃の事実に私も半ば放心状態だ。


「あ、一応聞きたいんだけど、名人級まで使えるって言ったらどうなる?」


「」

・・・・・・2人とも固まってしまった。


「おーい、フローラ、リーナ、おーい。」


「し、失礼いたしました。えっと、使えるんですか?」

「ええ。」

「・・・・・・」


2人とも頭を抱えてしまっている。


「とんでもないことですよ、ロザリアお嬢様。ただでさえ名人級が使える人は世界中探しても各種類に1人いるかいないかなんですよ。それを全種類って、もうそれはそれは。」

「本当に、全種類を使えるでも大騒ぎなのに、名人級って、世界中が大パニックですよ。」


いやまあ名人級がゴロゴロいても困るけれども。

本当にヤバいやつらしい。

名人級でこんなんだから、神話級と伝説級も使えます~なんて言った日には気絶されかねない。

2人にもそれは黙っておこうと私は心に決めた。

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