第三話 ~真面目になろうと決意します~
(さてと、では整理しようか)
そう思った私は、ベッドから飛び起き、机に向かう。
ここは私が前世でやっていた乙女ゲーム『セレスティア・クロニクル ~エターナル・レガシー~』、略称『セレエタ』の世界。
そしてヴァルサリア国の第一王女兼ライバルキャラ、ロザリア・リュミナスとして生まれ変わったようだ。
ゲームの設定はよくあるタイプのものだった。主人公が学園を舞台に様々なライバルキャラと恋愛バトルを繰り広げて選択したルートのキャラと結ばれるというもの。
そこまではよくあるんだけど・・・
「ハッピーエンドの場合は国を乗っ取ったロザリアを攻略キャラが殺して主人公と結婚し、新しい国の統治を行う、バッドエンドでは選択キャラとその婚約者が結ばれる上に、主人公はロザリアのいいなりになった選択キャラに殺されるのよね。。。」
なかなかに酷い設定だ。
開発陣はどうやら誰かが死なないと気が済まないらしい。
しかもどのルートでも、ロザリアは誰とも結ばれることはないうえに国を1度は乗っ取っている。
「まあ前作でもそうだったし、その展開が他になくて斬新だったから面白いんだけどさ。」
しかし、当事者になってしまっては話は別だ。
「殺されるのも殺すのもイヤに決まってるでしょ!」
「しかも国を乗っ取るとか考えられない!」
そして道中のストーリーもなかなか大変だった。
各攻略キャラには最初から婚約者がいた。そのため、婚約を破棄させないといけなかったし、操りたいロザリアからキャラを守らないといけなかったから、少しも気が抜けなかった。
とはいえ、まだストーリー通りに進むとは限らない。
「いや、そうと決まったわけではないのか・・・?ん?いや・・・」
そこまで考えた時、ゲームのあるストーリーが浮かんできた。
確かあれは使用人のフローラが裏切った直後に主人公にロザリアの悪事を話すシーンだ。
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「ある時ロザリア様がこう言ったのですよ、『誕生日プレゼントにはドラゴンが欲しいわ!騎士団に頼んで、生け捕りにしてきてちょうだい!』って。絶対に無理なのに。
案の定無理で、1週間後にまだ捕らえられていないと知った時にはとても怒ってたんですよ。
私も内心腹が立ってましたし、報告にきた騎士団の方が気の毒だったので、思わず言ってしまったのですよ。『あまり騎士団の方をからかわない方がよろしいのではないでしょうか・・・?』って。
そしたら当然のように『私のやることに口答えするつもり!?』と言ってきたんです。
そこまではいつものことだったんですが、ドレスに足を引っ掛けて転んで、気を失ったんですよ。
私、あの時こう思ったんですよ。『このまま死んでしまえばいいのに。』と。でも残念ながらそうはならず、私は罰として背中に火傷の跡をつけられてしまいました。」
「フローラ・・・」
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「って!今回の出来事と同じじゃん!」
もちろん罰はしていないが、そこ以外は全く一緒だった。
これはもう、何もしなければストーリー通りに進むとしか考えられないではないか。
「とんでもないことになったわね、これ」
私は考える。何かないのか。
このままだと誰かが死ぬ運命にある。
少なくとも自分が死ぬ展開は避けなければならない。
「まって、今から生活を変えればストーリーって変えられるのかな?」
今回、罰をしていない=背中に火傷の跡がないことになる。
そうなると、先ほどのシーンにも変化が生じるはずだ。
そうだ、きっと変えれるはずだ。
「決めたわ!私、これから真面目に生きる!真面目に生きて、ストーリーを絶対に変えてやるわ!」
こうして私、悪役令嬢ロザリア・リュミナスは、改心して真面目なることを決意するのだった。