第二話 ~記憶が蘇りました~
初投稿からゲーム略称を変更しました
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(今のは・・いったい・・・)
気がつくと私はベッドにいた。
「ロザリアお嬢様、気がつきましたか?」心配そうに覗き込んでいるのは使用人のフローラだ。
いつも酷いことを言っているのに、よく愛想つかないものだ。
(今のは・・・前世の記憶?)
「うーん」と考え込むロザリア。
「お嬢様?」フローラが言うが、私は頭がいっぱいで聞いていなかった。
(そうだったわ!私車にはねられて死んだんだった!)
と思ったのも束の間、冷静に突っ込んでいる場合ではないと気づいた。
「えーーーーーーーーーっっっ!!!」
「ロザリア王女!」「大丈夫ですか?」「いったいどうしましたか!」使用人たちが口々に聞いてくる。
でもそんなことを気にしている場合ではない。
(えーっと、つまり……私、転生したの!? しかも王女様に!?)
使用人たちはなおも不安そうにしている。
「ロザリアお嬢様、あの、」フローラが震えながらも声をかけてきた。
「今回の件は私の落ち度です。何でも罰は受ける所存ですので。」
「え?」私は思わず聞き返してしまった。
いったいフローラは何を言っているのだろうと。
「いえ、ですから、お嬢様が転んでしまったのは私が余計なことを言ったからなので………」
「何を言ってるのフローラ、転んだのは私が悪いんだから、あなたが罰を受ける必要ないのよ」
するとフローラは驚いた顔をした。
驚きすぎて口を開いたまま固まっている。
「えーっとフローラ、大丈夫?」
「は、はい、大丈夫です。失礼いたしました。」フローラは驚きながらも後ろに下がった。
「あっ」とここで私は思い出した。
(そうだったわ。私、今までひどいことをしてたんだった・・・)
私は思わず頭を抱えた。
「大丈夫ですか、お嬢様」別の使用人が聞いてきた。彼女の名前はリーナ。フローラと一緒に私の世話をしている人だ。
その時、ふと頭にハテナマークが浮かんだ。
(ん?ロザリア?私の名前・・・・・・)
「あーーーーーーーーーーー!!!!!!」
思い出した。そうだ。ロザリアという名前に聞き覚えがあった。
ゲーム"セレエタ"に出てくるライバルの悪役令嬢ではないか。
そしてフローラとリーナ。この名前にも覚えがあった。
(フローラとリーナ!? この二人って…!)
(途中で令嬢を裏切って主人公側につく使用人たちじゃん!!)
「大丈夫か、ロザリア!」
突然扉を開けて入り込んできたものがいた。
「お、お父様?」
「転んで気を失ったと聞いたが、大丈夫だったかね?」
「え、えぇ。何ともないですし、大丈夫ですわ。」
「そうか。それならいいんだが。」
この人はアルセイン・リュミナス。この国の国王だ。ゲームではほとんど出てこなかったから、どんな人物だったかはよく覚えていない。
(てことは、やっぱりここは・・・)
けれど、ここまでこれば理解せずにはいられない。
(どうやら、私――明美は、ゲーム"セレエタ"の世界のライバルキャラに転生してしまったようね・・・)
しかしゲームの世界に転生かぁ、と考える。
理解はできても、納得はできない。
(どうせなら主人公に転生するべきでしょここは!)
そこじゃない!とか自分でツッコミをしながらあれやこれやと考えていると、アルセインから声がかけられた。
「ロザリア、何か困っていることはないかね?何かあったら、いつでも私を頼るんだよ。」
「お父様、ありがとうございます。今は大丈夫ですわ。」
「分かった。では私は戻るからな。」
そう言ってアルセインは部屋から出ていった。
(アルセインって、ロザリアに国を乗っ取られた後、幽閉されて、さらにバッドエンドなら殺害されたんだっけ)
まさか娘にそんなことをされる運命だとは思いもしないだろう。
(ん?っていうか待てよ?確かゲームでのロザリアって・・・)
そうだった。ロザリアはあくまでもライバルキャラ。当然主人公が結ばれるようにできている。
そして主人公が結ばれる=令嬢が負けることを意味する。
このゲームで令嬢が負けるとたしか・・・
(死ぬじゃん私!?)
どのルートでもハッピーエンドは令嬢を攻略キャラが国と主人公を守るために殺して、主人公とキャラが結ばれる展開だった。
そしてバッドエンドではというと・・・
「ロザリアお嬢様?何か考えごとでしょうか?」
フローラの声で現実に戻された。
「え、えぇ、ちょっと。」
これは落ち着いて整理する必要がありそうね。
そう考えた私は使用人に命令する。
「ごめんなさい。疲れてしまったから、一人にしてくださるかしら。」
「かしこまりました。何かありましたらお申し付けください。」そう言うとフローラとリーナは他の使用人とともに部屋から出ていった。
ゲーム名『セレスティア・クロニクル ~エターナル・レガシー~』については略して『セレエタ』と呼ばれているようです。