第一話 ~前世の記憶~
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「ねぇねぇ、昨日発売のやつ、買った?」
「もちろん!明美ちゃんも買ったんだよね?」
「そりゃあそうでしょ!待ちに待った2作目だよ!?買わないわけないじゃん!」
昼休み、仲のいい3人が昨日発売のゲームについて語り合っていた。
乙女ゲーム『セレスティア・クロニクル』の続編である『セレスティア・クロニクル ~エターナル・レガシー~』が発売されたのだ。
美咲ちゃんと涼子ちゃんはクラスメイト兼乙女ゲーム友達。
毎回、新しい乙女ゲームが出るたびに、攻略話に花を咲かせている。
「まずはどのルートから始めた?私はアルヴィンルート~。」と言ったのは美咲ちゃん。王道キャラが大好きな子だ。
「私はレイヴンルートにしたよ♪」と涼子ちゃん。覇道キャラが好きな可愛い子だ。
「明美ちゃんはやっぱりダリオンルートだよね?」
当然のように涼子ちゃんに私の選んだキャラを言い当てられる。
「あったり~」と笑顔で返す。私は裏の顔を持ってそうな人が好きなのだ。
乙女ゲーム。中学校を卒業するまでは周りにやっている子はいなかった。
そして私は、乙女ゲーム以外に趣味はなかった。
当然のように友達はできず、学校が終わるとすぐに家に帰り、ひたすら乙女ゲームをしていたものだ。
友達ができたのは、高校に入学してから半月ほど経った頃だった。
その日も、いつものようにすぐ家に帰り、発売したばかりの乙女ゲームをプレイしようとしていた。
(今日はどのキャラにしようかなー)
などと考えながら席を立った時、前の席で話していた2人の会話が聞こえてきた。
「セレクロの会社のレガマギ、どうだった?」
「あの会社やっぱりいいね!当たりだったよ!」
突然、自分がやろうとしていたゲームの名前が聞こえてきた私は、思わず
「え、レガマギやってるの!?」と聞いていた。
これが2人との出会いだった。
それからというもの、3人でよく一緒に乙女ゲームの話をしたものだ。
他にやっている人は中々いないこともあり、3人でとても仲良く過ごしていた。
こうして毎日楽しくお話しができればいいのに、と思っていた。
しかし、その日々も長くは続かなかった。
もうすぐ高校3年生になろうというある日のこと。
その日も『セレスティア・クロニクル ~エターナル・レガシー~』について3人で話をしながら帰っていた。
発売から2週間が経ち、攻略も中盤に差し掛かっていた。
「でもやっぱりロザリア王女すごい邪魔してくるよねー。」
「いやいや、今回一番大変だったのは カイロスの婚約者のアリアでしょ。」
「まだまだだなぁ2人とも。裏ルートに行ってからが本当に大変だよ。」
「裏ルートの話はダメだよ!ネタバレ禁止!」
そんな話をしていた時だ。悲劇は突然起こった。
交差点の横断歩道を渡っていた時、乗用車が赤信号を無視して突っ込んできたのだ。
「えっ」
驚く間もなく、私たちは車にはねられた。
『おい君たち、大丈夫か!?』
『急いで救急車呼ばなきゃ!』
周りの通行人がとても慌てているのが聞こえる。
(私・・・いったい・・・)
他の2人も一緒に倒れているのが見える。
しかし力が入らず、私、高橋 明美は気を失った。
そしてそのまま目は覚めることがなく死んでしまったのだった。
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