~悪役令嬢は好き放題~
「全く、何をやっているの!?」 ロザリアは甲高い声で喚く。
「申し訳ございません、お嬢様」
「なぜドラゴンを1匹捕まえるだけの簡単な仕事ができないの!?」
アルヴェン城にたくさんある大広間の1つ。そこで一人の少女が暴れていた。
城の北東に位置する翠風の森の上空。そこに生息するドラゴンを1匹育てたいと9歳になる誕生日プレゼントにロザリアが欲しがったのだが、欲しいと言ってから1週間たっても騎士団はドラゴンを捕らえることができずにいたのだ。
「しかしお嬢様、相手はドラゴン。倒すのも大変ですのに生け捕りはいくらなんでも……。」
「言い訳をしている暇があったらさっさと捕まえてらっしゃい!」
「はっ」
報告に来ていた騎士団の1人は、不満げな表情を浮かべながらも渋々と下がっていった。
「全く、王国直属の騎士団なのに、使い物にならないわね」
ロザリアは深いため息をついた。心底不満げだ。
ロザリア・リュミナスはヴァルサリア国の第一王女であり、本来は国の民を守るべき立場にある。
しかし実態は、我儘で、その立場を利用して極悪非道の限りを尽くす悪役令嬢だ。
「ロザリアお嬢様」使用人の一人、フローラが呼んだ。
「あまり騎士団の方をからかわない方がよろしいのではないでしょうか・・・?」
「ちょっとフローラ!私のやることに口答えするつもり!?」
ロザリアは壇上から降り、フローラのもとへ駆け寄ろうとした。
しかし、勢い余ってドレスに足を引っ掛けてしまい、階段で転んでしまった。
「うげ!」
「お嬢様!」「ロザリア様!」使用人たちの声が響く。
(いたい・・・)
その瞬間、脳内を駆け巡ったのは、存在するはずのない記憶だった。
『おい君たち、大丈夫か!?』
『急いで救急車呼ばなきゃ!』
(なに………これ………?)
そのままロザリア・リュミナスは意識を失ってしまった。