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第九話

本日三話目。

第九話


「で、結局彰くんは1スキル保持者(シングルホルダー)2スキル保持者(ダブルホルダー)どっちなの?あ、1スキル保持者(シングルホルダー)はスキルを一個持っている人で、2スキル保持者(ダブルホルダー)がスキルを二つ持っている人の事ね」


「そんな意味だったら1スキル保持者(シングルホルダー)だと思う。だよな瑞葵?」


「ええ。スキルは一個しか持ってないし、間違いなく1スキル保持者(シングルホルダー)よ」


『妙な言い回しだね。まるでスキル以外の何かがいくつもあるみたい……

ま、聞いても答えてくれないだろうし、そこは行動を共にしてたら分かるかもね」


「そっか。ありがと」


「他に質問はねーか?よし次は……紅瀬よろしく」


「はい。紅瀬瑞葵です。スキルは豪炎の加護と氷結の加護。よろしくお願いします」


必要最低限の事を話して座る瑞葵。

担任の深山先生も苦笑いしている。


「シンプルだなぁ。もうメンドイから後は適当に順番を決めてやっててくれ」


教卓の椅子に預け切ってダレている教師。

その姿からはやる気の欠片も感じられない。


「はいはーい!じゃあ私からやるよ!」


手を挙げながら立つ朱音。

その口元はニヤニヤとしていて笑いを噛み殺しているようだ。

そして目線は彰の方へ向いている。


「私は繰上朱音。スキルは幻影だよ。そして………」


一旦言葉を区切る朱音。

スタスタと彰の元へ歩いて行って腕を抱き寄せる。

そして言い放った。


「彰くんの婚約者です!」


静まりかえる教室。

クラスメイトは目を見開き、瑞葵に至っては顔を真っ赤にして口をぱくぱくさせて驚いている。

当然、朱音の冗談だ。二人は恋人どころか、まだ名字で呼び合う仲だ。


が、誰も彼もが騙されている。

そして息を合わせて一言。


「「「「「えええーー!?」」」」」


「な、ななな何を言ってるのよあなた!?」


「そうだぞ!いつ婚約者になったんだよ繰上さん!」


「あ、朱音でいーよ。私は………ダーリンって呼ぼうか?」


「ダメだよ!てか本当にいつから婚約者になったんだよ!」


「そ、そうよ!一体いつなのよ!」


「いつって……そりゃ朝に私を無理やり組みしだいた時に決まってるじゃん」


次の瞬間男子からは嫉妬の視線が。

女子からは変態や汚物を見る視線が彰に注がれた。

女子の中には瑞葵もいる。


「あれは事故だって言っただろ!?というか許してくれたんじゃないのかよ!」


「許すとは言ったけどいじらないとは言ってないよ。ふふ……しばらくはこのネタで揶揄うから覚悟しててね………ダーリン♡」


「繰上、ちょっと表出なさい」


悲鳴や嘆きの嵐が吹き叫ぶ教室の中、その言葉はとても明瞭に響いた。

再び静まりかえる教室。

誰かがゴクリと唾を飲み込んだ。


「え〜何で〜?」


「まずはその気に触る喋り方をやめなさい。潰すわよ」


「は、はい!」


底冷えする声色でどうk……注意する瑞葵。

その迫力に思わず朱音は口調を改める。


『やばっ………!怖すぎでしょ!完全に地雷だったなー。

上中くんを揶揄うにはちょっと注意しないとね………』


「いえ、やっぱりここでいいわ。今、ここで立場ってのを再認識させてあげるわ火よ(אֵשׁ)


「ちょっ!ここ教室だよ!?」


「大丈夫よ。全治一ヶ月程度の火傷で済ましてあげるわ」


「大怪我じゃん!?ちょ待って待って待って!!」


火よ(אֵשׁ)伸びろ(לְהַאֲרִיך)!」


キレた瑞葵がスキルを使って攻撃を始めた。

瑞葵の手より炎が現れて朱音へ伸びる。

炎はそのまま朱音を()()()


「おい瑞葵!繰上さん大丈夫か!?」


慌てて彰が朱音へ駆け寄り安否を確認する。

倒れた朱音は表情を無くした顔で倒れていた。

胸には炎で焼き貫かれた穴が空いている。


「まったくもー。だから危ないんだって。教室燃えちゃうよ?」


が、もう一人朱音が瑞葵の背後からポンと肩を軽く叩いた。

ケロリとした顔で傷一つない。



「あ、あれ?繰上さん何で……」


「うん?何でって……何で無事ってこと?ほら、手元見てみなよ」


そう言われて彰は手元を見る。

手元には輪郭が消えかかっている朱音がいた。


「避けたんだよ。直撃したら即死しちゃうからさー。

有華みたいに硬かったら避けないで済むんだけど……」


「繰上、よそ見とは余裕ね。次は当てるわよ」


「はいはい。じゃれあいは他所か後でやってくれ……

あ、教室以外でやれよ?」


「じゃれあい!?あれじゃれあいなのか!?」


「ほら繰上。先生の許可も出たんだし、地下スタジアムに行きましょうよ」


「えーそういうのは香織とやって……はいはい分かりましたよ行けばいいんでしょ!」


瑞葵が朱音の肩を掴んで教室を出る。

ドアが閉まる前に朱音が教室の生徒たちにSOSの視線を送ったが全員顔を逸らした。

ピシャリと閉じるドア。誰も喋らない教室で彰がポツリと呟いた。


「アイツ、死んだな」


助けに行った方が……いや俺が行ってもな、と悩んでいる彰。

しかし行動に移せない。

だって瑞葵怖いんだもん。


「あれは朱音の自業自得。

それに朱音なら何だかんだ無傷で帰ってくる」


彰に話しかける女生徒。

背が低く、下手をすれば中学一年生に見えるほど。

髪は赤みがかったピンク色で目は薄い黄色だ。


「えっと、君は?というか何でここに中学生が」


「む、それは失礼。私は指宿香織(いぶすきかおり)スキルは鬼神化と天鱗。これでも同い年」


「同い年!?まじか……というか無傷で帰ってくるって、瑞葵は強いぞ?」


「大丈夫ですよ〜。瑞葵さんも本気じゃないでしょうし、朱音さん避けるの上手いですから」


さらに別の女生徒が話しかけてきた。

今度は黒目黒髪の大和撫子と言った風貌。

話し方が穏やかなせいか、年上の余裕らしきものを感じる。


「えっと……」


「急に話しかけてすみません。私は久間有華(くまゆか)。スキルは自動回復と戦神の大盾です。これからよろしくお願いしますね」


「あ、はい。どうぞよろしく」


何故か敬語で返す彰。

明らかに女性慣れしていない反応だ。

セクハラは日常茶飯事だが。


「ふふ。そんな堅くならないでください。同い年なんですからもっと気楽に」


「わ、分かった。こんな感じでいいか?」


「はい。それと朱音さんと瑞葵さんは毎日あんな感じですからあまり気にしない方がいいですよ」


「ま、毎日ああなのか………」


「はい。だから本当にじゃれあいですね」

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