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第八話

本日二話目です。


「いやぁ……入学早々濃かったねぇ」


場所は変わって1年A組の教室。

そこでは実況をしていた深山先生が教壇に立ち、生徒たちが全員着席している。

………若干二名は机に突っ伏してダウンしているが。


「な、何でこんなに疲れているんだ………」


「あー、編入生は決闘は初めてだから知らなくて当然か。決闘で受けた傷とかは身代わりになる石に置換されるのは知ってるな?」


「……そんなこと言ってた気がします」


「お前、アナウンスくらい聞いておけよ……まあ、いくら物理的なダメージは石に置換されるって言っても

実際に傷を受けたことに変わりはないんだ。けど次の瞬間には傷はなくなってる。そこら辺を脳が色々勘違いして異様に疲労が残るんだ。分かったか?」


「決闘をしたらめっちゃ疲れるって事は分かりました」


「………もうそれでいいわ。じゃ早速授業を、と行きたいんだが自己紹介をしなきゃいけないんだったな」


例年なら自己紹介は必要ない。

スキル保持者は少なく、ほとんどのメンバーが中等部から変わらないからだ。

が、今年は編入生の彰がいる為、必要というわけだ。


「ま、適当に自己紹介していってくれ。じゃ編入生からよろしく」


「え?俺からですか?」


「あほ。お前のための時間なんだよ。最初くらいバシッと決めろ」


「道理なんだけど………なんか納得いかない」


決闘後の疲労もあってゆっくり立ち上がる彰。

席は教壇の目の前。授業中にバシバシと当てられる席だ。


「えっと、上中彰です。今年からスキル育成学校の方に入らせて貰いました。

趣味はゲームでフォントナイトをやってます。これからよろしく」


「「「「「…………………………」」」」」


シーンと静まりかえる教室。

まるで自己紹介の続きを待っているようだ。

彰はあたふたと戸惑っている。


「あ、あれ?」


「いや、早く続きを話せよ」


「え?続き?」


「お前……ここをどこだと思ってるんだよ。スキル育成学校だぞ?

スキル名くらい言えよ」


「え?そんなものなの?

てかスキル名だけでいいのか?」


「彰、大体の人はスキル名を言って終わるのよ。

効果まで言っちゃうと決闘の時に不利になるから言っちゃダメよ」


小声でアドバイスする瑞葵。

ちなみに彼女の席は彰の後ろ。

前の人の身長が高かったら、サボっていても結構気づかれにくい席だ。


『うーん……瑞葵、余計な事言ったな。あわよくば知っておきたかったんだけど……

それにしても普通の学校って趣味を自己紹介の時に言うんだね。あっちはランキング制度とか無いみたいだし、楽しそうだなぁ』


窓際の1番後ろ端の席で考える朱音。

授業中に時々当てられるが、意外と手元は何しているか分かりにくい席だ。

朱音からすれば天国のような席である。


「へぇそうなんだ。俺のスキル名はタマハミ。効果は秘密にした方がいいらしいから秘密で」


『タマハミ……玉はみ?球は身?いやどれも違うっぽいね。何かの伝承とか、かな?

というかスキル一個だけ?これは聞いたほうが早いね』


「はーい。質問していい?」


「おう、いいぜ」


「じゃ遠慮なく。上中くんってホントに1スキル保持者(シングルホルダー)

2スキル保持者(ダブルホルダー)とかじゃなくて?」


「えっと、ごめん。1スキル保持者(シングルホルダー)って何?」


「………はい?今なんて?」


「いや、だから1スキル保持者(シングルホルダー)って何?」


「ああ、聞き間違いじゃ無いんだ……キミ、本当に試験受けたの?」


「試験ってなんだ?」


「いや、編入試験に決まってるじゃん。スキル育成学校だよ?」


スキル育成学校はスキルの使い方を指導するだけでなくて、勉学にも力を入れている。

他の難関私立高校と比べても遜色ないくらいには難しい。

当然、編入試験は激ムズだ。


というのもスキル保持者は、今でこそ堂々と学校に通えるくらいには社会的地位を得ているが

ほんの4、50年前はスキル保持者というだけで就職や受験お断りだったり、バケモノと蔑まれていた。

それから10年ほどするとスキル保持者たちがデモを起こしてスキル保持者たちの人権活動を始めた。


それなりに賛成者がいたので、無事に意見は通り、現在でもスキル保持者に関する人権が憲法で定められている。

しかし人の意識というのは簡単には変えられないもので、どうしても不平等が生じてしまう。

それを跳ね飛ばそうと当時の政府関係者や異能協会が建てたのが、スキル育成学校。


スキルを社会貢献に活かす方法。

それだけではなく、勉学にも力を入れて不平等な状況でも戦える学力を身につけさせた。

それが代々続き、現在ではスキル育成学校卒のネームバリューはとても高い。


「いや、何も受けて無いけど……」


「はあ?本気で言ってるの?」


「お、おう…編入試験は受けてないし、何ならここに入学するって知ったのも4月の初めだし………」


「それで何で入れ………あー、瑞葵の推薦か」


「ええ。私が推薦したわ」


瑞葵が立ち上がる。

クラスメイトたちは彰が編入試験を受けていないと言い出した辺りから彰に敵意を抱き始め

今は瑞葵に非難の眼差しを向けている。


スキル育成学校の生徒は全員中学受験をしており、勉学にはそれなりにプライドを持っている。

スキル保持者は全員受かる仕組みにはなっているが、進級にはテストがあって、合格点に達しないと進級ができない。

さらにA組というのは成績優秀者が多く配置されている。


そんな教室に突然入ってきたコネで受かったも同然の彰。

結果は見ての通りだ。


「どういうつもり?推薦した者の成績は推薦された者の成績が大きく影響されるのは知ってるんでしょ?どう見ても彼は授業に付いてこられないと思うんだけど」


「ええ。もちろん承知の上よ」


「ふーん……ま、落ちていくのは瑞葵だから知ったこっちゃないんだけどね。でもちゃんと進級はしてよね?」


「繰上……」


感動したように朱音を見る瑞葵。

心なしかクラスメイトたちの彰への攻撃的な視線も和らいだ気がする。


「じゃないといじれる人が他にいないじゃんか!いじってて1番楽しいのは瑞葵なんだから!」


「………このっ……!いえ、少しでもじわっと来た私がバカだったわ」


こう呟く瑞葵を視界に収めて肩を震わせている朱音。

狙ってやったのは明白である。


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