第七話
申し訳ありません。少しリアルが忙しくて投稿が滞っていました。
今日は十話まで投稿する予定です。
『これは………予想以上にすごいねぇ。嫌な予感がしてたからまさかとは思ってたけど……
私の勘も捨てたものじゃないね』
そう心中で呟く朱音の視線の先には一人の男子生徒がいた。
スキル育成学校高等部の入学とともに編入してきた上中彰だ。
彰は朝のいざこざが原因で決闘を申し込まれ、今年初の決闘する。
しかし、いざ始まってみると開幕早々に目潰しを喰らい、一方的に殴られた。
視力が回復してからも一度も反撃を決めれずにいた。
ここまでくると結果は見えているので実況の深山先生がストップをかけた。
が、彰はこれを拒否。
決闘は続けられることになった。
制限を破ると宣言した彰は目を瞑って集中し始めた。
相手の奥田は攻撃を仕掛けようと思えばいくらでもできた場面。
しかし彰の放つ異様な雰囲気に気圧されてできなかった。
やがて目を開いた彰は、それまでの雰囲気からガラッと変わり、炎を纏って宙に浮いた。
決闘場にいる生徒達の視線は、ほとんどが彰に注がれており、その一挙手一投足を見逃さないと言う意思が聞こえてくるようだった。
そんな多数の視線を集める彰は奥田を指差す。
そしてその指を上に向けた。
すると奥田のいる地面に魔法陣が浮かび上がり、まるで火山の噴火のように炎を吐き出した。
奥田は指差された時に自身の勘に従って退避してたので無傷だ。
が、骨の髄まで焼き尽くすような威力の炎はそこに居るだけでステージに影響を与える。
「ちっ!よりによって炎かよ!」
「なあ、繰上」
「なぁに先生?」
「奥田って炎と相性悪いのか?あんな大声出して。磁石って基本的に相性なんてないと思ってたんだけど」
「相性っていうほどじゃないけど……アレだよ。奥田くんのスキルが無効化されるんだよ」
「はあ?何で?」
「キュリー温度って知ってる?これは物質によって違うんだけど、大体900まで温度を上げたら
ほとんどの物体が突然磁力を失うんだよ。いわゆる熱脱磁ってやつだね」
「いや、いわゆるじゃねーよ。普通そんなのしらねぇんだよ。何で知ってるんだよ」
「そりゃ電子書籍で読んだからに決まってるじゃん。
ま、つまり炎そのものが相性悪いわけじゃなくて脱磁されるからマズいわけ。
そして1番お手軽な脱磁がキュリー熱を利用した熱脱磁ってことだよ」
「なるほどな。であの炎はだいたい900くらい温度があるわけか」
「炎の温度はスキル保持者の技量によって変わるから、変態くんは結構得意みたいだね」
「はぁ……ただでさえ今年はランキング高いヤツが多いってのに、さらに追加されるのかよ」
「大変だねぇ。あ、ついに変態くんがフィールド攻撃し始めた」
実況席の二人が喋っている間にも彰は容赦なく炎柱を出し続けていた。
奥田はそれを躱しながら物を飛ばして反撃していた。
しかし、彰の体に届く前に炎によって阻まれていた。
彰も最初は狩を楽しむ獣のようにカス当てをしていたが、段々当たらないことに苛立ってきて
ついにフィールド、ステージ全体に炎柱を発生させた。
「くっそおおお!!磁力付与!何でもいい、俺の体を囲え!!」
奥田が機転をきかしてフィールド攻撃を凌ぐ。
奥田の体を覆った岩や金属は赤く光って融解しているが、奥田自身は少しの火傷で済んでいる。
すぐさま反撃しようと周りを見渡す。
しかし、彰の姿はどこにもない。
奥田の視界に映るのは赤く光るステージと観客の生徒。そして、空中にスパークする雷。
雷は奥田の背後の方に走っており………
ドスっ!!
奥田の胸に腕が生えた。
異様に爪が伸びた帯電している腕が。
「チ、クショ……ウ…」
背後にいたのは彰だった。
しかしその姿は変わっており、炎の羽衣の代わりに紫電を纏っていた。
「……………は?」
深山先生の放った一文字がこの場にいる全生徒の内心を代弁していた。
誰も彼もが己の目を疑った。
紫電を纏った彰の額に一本のツノがあったように見えたから………
許容ダメージを超えて強制気絶する奥田。
遅れて彰も気絶した。
ーーーー勝者、上中彰。両者とも外傷は見られませんが、速やかに保健室へ運んでください。
これで決闘を終わります。
この決闘は多くの人物、派閥に影響を与えた。
その影響は波となり、大きなうねりへと転じる。
果たしてその中心いる人物とは………