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入学式からの〜オリエンテーション①

「わぁ……!可愛い!わたしってば魔法学園の制服が似合う〜♪」


私は姿見の前で自身の制服姿に感動していた。

魔法学園の女子生徒の制服は膝下丈のワンピースタイプだ。


紺地に襟は白いセーラーになっている。

タイが学年毎に色分けされていて、2年生から入学するわたしのタイは深い緑だ。一年前から通っている専門履修コースの生徒は濃い目の水色で、一年生は臙脂色のタイだと聞いている。


男子生徒の制服は紺地の詰襟タイプのものらしい。

きっと婚約者のレイブンに死ぬほど似合ってるんだろうな〜♪

早く見たいな〜楽しみだな〜♪と考えていたら、支度を手伝ってくれていたクレマに言われた。


「はいはい、いい加減になさいませんと入学早々遅刻されますよ」


「はぁい」


そう返事したわたしが部屋を出ようとすると、クレマの声が追いかけて来た。


「……お嬢様、仮にも学業をされに学園に通われるのですから、鞄をお忘れになってはいけません」


「あ☆」


いけない、いけない。

初日から忘れ物をするところだったわ。


鞄を受け取ると、クレマが教えてくれた。


「エントランスでオリエ様が既に待って下さってます。今日は公爵家の馬車でご一緒に行かれるのですよね?」


「うんそうなの。明日からはブンと一緒にワード家の馬車で学園に通うんだけど、ブンは今日、入学式の為に早く登校しなくてはならないんだって。でも馬車は寄越してくれるから、オリエと一緒に登校するように言われているの」


わたしがそう言うとクレマは得心がいったという様な顔をした。


「なるほど、初日からお嬢様が奇行に走られないようにオリエ様に目付け役を頼まれた訳ですね」


「なるほど!そういう事なのね!」


わたしも得心がいったわ!なんて喜んでいるとクレマにため息を吐かれた。


「……お嬢様は、婚約者様に余計な心配と手間を取らせた事を、少しは嘆かれた方がよろしいかと……」


「あらま、そういうもの?」


「それが大人の淑女というものです」


「まだ成人するまで一年あるけど?」


「お嬢様の場合は今から成人のおつもりで振る舞われた方がいいですよ」


「ふむ……なるほどネ☆」


こいつ絶対わかってねぇだろといった様な顔をしながらクレマが言った。


「さぁさ、とにかく今は急いで下さいまし。オリエ様まで遅刻させるわけにはいきませんからね」


「ホントだ!まぁオリエならいつまでも待ってないでさっさと一人で行っちゃいそうだけど」


と言いながらも、わたしは一応急いで我が家のエントランスまで降りて行った。


階下にはわたしの幼馴染であり、アッペル子爵令嬢のオリエが待っていてくれた。

側にはお母さまも居て、二人で談笑していたようだ。


「おはようオリエ!今日からお互い学生ね♪

オラわくわくすっぺ!だわ☆」


「おはようシュガー、あんたってばまた朝からワケのわからない言語を……」


「アラ、東方の国の超国民的絵巻の主人公のセリフなのよ」


「はいはい。早く行きましょう、もうワード公爵家の馬車が来てるわよ」


「うん」


わたしとオリエが馬車に向かおうとすると、

お母さまが声をかけてきた。


「とうとう入学式ね、本当に式には出席しなくていいのかしら……」


お母さまのその言葉に、わたしではなくオリエが答えた。


「おばさま、昨今では2年から入学する生徒の保護者は出席しないのが主流になっておりますのよ。式自体も短いですし、式の後すぐにオリエンテーションが始まりますから、それも鑑みての事なのでしょうね」


「なるほどね、さすがはオリエちゃんの説明は分かり易いわ。シュガーったら、二年生だけの式だからじゃない?なんて適当な事しか言わないんですもの」


やれやれといった感じで告げるお母さまにわたしはふふっと笑って答えた。


「ごめんなさい、だってあまり興味がなかったから☆」


「あなたって子は、興味を示すとトコトン追求するのにそれ以外は本当に御座形(おざなり)なんだから……。オリエちゃん、この子の事よろしく頼みますわね。何かしでかさないか心配だわ」


オリエは諦めたように首を振って答える。


「おばさま、シュガーですよ?何かしでかす、という前提の心構えでいないと胃に穴が空きますよ」


「まぁ……本当ね、ナイスアドバイスだわ、オリエちゃん」


「いやねぇ、わたしはもう17歳ですよ!大丈夫大丈夫♪二人とも大船に乗ったつもりでいて!」


わたしが二人を励ますと、揃って大きなため息を吐かれた。なんでよ〜。


そんな会話の後、わたしとオリエは我が家を出て公爵家の迎えの馬車に乗り込んだ。


馬車は城壁近くのワープゲートを目指している。


魔法学園があるのは他国であるハイラントだ。

この西大陸には魔法を学べる学校が二つある。


今日からわたしが通うハイラント魔法学園と、

アデリオールにある魔術学校だ。

アデリオールは“魔法”と“魔術”を分けて捉えているが、ハイラントでは全て同一の括りで“魔法”と呼んでいる。


まぁかといって学ぶ内容は大して差はないらしいので、大陸中央にあるハイラントか西側にあるアデリオールか、自国から近い方にワープゲートを使って通う……といったわけだ。



さてわたしの生家、ハイト伯爵家はクルシオ王宮にほど近い貴族街の中にある。


地方にハイト伯爵領を有しているが、王宮勤めのお父さまは王都で暮らす方が都合がよいのだ。


領地の方は結婚されたお姉さまがお義兄さまと共にきちんと管理運営されているので心配は要らない。


ウチの跡取りのアスーカルお兄さまはお父さまから爵位と共に大臣職のお役目も引き継がれる事になっているので、このまま領地運営はお姉さまにお任せする事になりそうだ。


わたしは来年にはブンのお嫁さんになる予定だしね♡

きゃっ♡


「……シュガー、気持ち悪い。考えてる事がダダ漏れなのよ、勘弁して」


「なんで?ブンの事を考えてただけなのに?」


「頬を赤らめてニヤケ顔をするから気持ち悪いの」


(ひど)っ、あ!ほらオリエ!いよいよワープするわよ!」


馬車がワープゲートを潜ろうとするのに気付き、わたしは窓にへばり付いた。


オリエは呆れながらわたしに言う。


「別にワープは初めてじゃないんでしょ?何をそんな子どもみたいに」


「だって何回体験しても面白いんだもの!転移魔法とは感覚が違うわよね〜どうして?何が違うのかしら?学園に魔法力学の先生が居たら聞いてみよっと♪」


「ハイハイ、そんな事言ってるうちに学園に着いたわよ」


「えっ!?いつの間にっ!?」


「あんたがワープと転移と魔法力学について考えているウチにね」


「そっか☆」


「ホラ、降りましょ」


オリエはそう言って御者が扉を開けたのと同時に降りて行く。

わたしも御者さんにお礼を言ってから直ぐに後を追った。


魔法学園の正門の直ぐ近くにワープゲートの出入り口がある。


正門前の馬車寄せからわたし達は学園敷地内に入った。


『いよいよだわ!いよいよ目眩(めくるめ)くわたしのハッピー学園ライフが始まるのね!』


そう思うと知らず足取りが軽くなる。


その瞬間、オリエにガッと肩を掴まれた。


「ストップ。シュガー…いい年してスキップしないの」


「あらま☆してた?」


クレマにも散々注意されてスキップ禁止令を出されていたというのに……。


やはりワクワクする心に蓋は出来ないものね!


やれやれと言いながらもわたしと手を繋いでくれるオリエと共に、わたし達は入学式が執り行われる大ホールへと向かった。




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