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異世界の妖精

どうして忘れていたんだろう。


いや、忘れていた訳ではないと思う。


ただ、成長と共に思い出す事が無くなっていただけ。


9歳の時に、わたしは()()()と出会った。


ヒィおばぁちゃまから魔力を貰って以来、時折どこからともなく聞こえる声があった。


ーー“架け橋”がもう一本繋がったね


ーー()()()()()()()()の精霊の気配がするね


ーーねぇ一緒に遊ぶ?


ーー仲間にしちゃおうよ


ーーそれとも美味しそうだから食べちゃう?


一体どこから聞こえてくる声なのかわからなかった。


それをお母さまに言うと、ヒィおじぃちゃまがわたしを迎えに来た。


これからしばらくヒィおじぃちゃまのお家で暮らして、色々な勉強をするんだって。


楽しみ!嬉しい!でもヒィおじぃちゃまってばお顔のおシワはどこかしら?


お父さまの方のヒィおじぃちゃまにはお顔におシワがいっぱいあるのに。

わたしがそれを訊くと、ヒィおじぃちゃまは「そういう体質なんだ」と答えてくれた。


ジェスロでの暮らしは本当に楽しかった。


可愛いヒィおばぁちゃまに優しいヒィおじぃちゃま。

そしてとっても面白いイグりん☆。


みんなに色んな事を教わったわ。

もともと何かを知るという事が大好きだったから、魔法でも魔術でも精霊術学でも、わたしはなんでも貪欲に知識を得ていった。


でもどちらかというと魔術はあまり得意ではなかった。

理論はわかっていても上手く出来ない。


でも精霊との相性は良いらしい。

だから精霊魔術にスポットを当てて学ぶ事になった。


時々先生になってくれたイグりん☆との授業は楽しかったなぁ……♪

二人でハメを外しすぎてよくヒィおじぃちゃまに叱られたけど☆


一通り学び、ジェスロのお家からハイトのお屋敷へ帰る時に異世界の精霊について聞かされた。


わたしにアレコレ話しかけて来たのは異世界の精霊、妖精というものだそうだ。

ヒィおばぁちゃまの魔力と同じになったわたしに目を付けたのだと。


わたしの魔力が向こうの世界の魔力と同じものだから、それを辿ってやって来るらしい。

そういえばあの声達が“架け橋”と言っていたっけ。


ハイト家(実家)に帰った後も、時々()()()は聞こえて来た。


声だけでなく姿を見せればいいのに。


ーーまだ足りないからね


ーーもうすぐ行くよ


ーーもうすぐ


ーーあと少し



ーーホラ、来たよ


「え?」


庭に居た時に、ふいにその声が聞こえた。

午後からレイブンのお屋敷に遊びに行く事になっていて、お土産にする花を摘もうと思っていた時だった。


今まで遠くで囁かれていた声が、突然すぐ耳元で聞こえた。


振り向いた瞬間に手を掴まれ、「チェンジ」という声と同時に何処かへ引っ張られる。


そこは……満天の星空の下、白い雲のようなものが足下をふわふわと漂う場所だった……

そうだ、クレーマーゴッドの声を聞く時に必ず訪れる場所だ。


どうして忘れていたのかしら……!


あの日、


あの時、


あの子に連れて行かれた場所。


そこから異世界(向こう)へ行くのだと言っていた場所。


その場所と同じだったのに!


そしてその時に会った、あの真っ白な髪の男の子。


あの子がわたしをチェンジリングしたんだった。


わたしが気に入ったって。

だから連れて帰るって。


そして異世界(向こう)の世界で一緒にイタズラをして遊ぼうと誘われたんだった。


でも直ぐに転移して来たヒィおじぃちゃまに、

あの子は手酷く追い返されたんだっけ。


その時にあの子は何か言っていたような気がする……

何か、わたしを一心に見て。



そうだ、あの時あの子は……



「またね」


と、確かにそう言った。



次に気が付いた時はジェスロのお家だった。


異世界(あちら)とこちらの狭間から、ジェスロに連れて来られたのだった。


ヒィおじぃちゃまはこう言った。


「とりあえずはあの精霊、いや妖精の力のほとんどを取り上げておいた。回復して再びこちらへくる魔力を蓄えるとしてもかなりの時間を要するだろう。その間にシュガーは成人しているはずだ。妖精(アイツ)らが干渉出来るのは子どもだけだからな」


でも万が一の事を考えて、ヒィおじぃちゃまが

「シュガーならちゃんと扱えるだろう」と言って自分の使役精霊を譲ってくれた。


「イフ、シュガーを守るんだぞ」


「よろしくね、イフちゃん」


炎の精霊(サラマンドル)なのにイフリートの力を持つ、イフちゃんとの出会いだ。



それから家に戻って直ぐにレイブンと婚約した。


どんどん、どんどん会う度にレイブンの事が大好きになっていって。


毎日が本当に楽しくて。


わたしはいつしかあの子の事を思い出さなくなっていた。


最初にクレーマーゴッドの声を聞いた時に妙な既視感を感じたのに。


でも大人の声だったし、まさかあの白い髪の男の子の声だとは思わなかった。


完全に忘れていて完全に油断していたわたしの落ち度だ。


クレーマーゴッドとの事はわたしは誰にも話していない。


珍妙な話だったし、わたし自身どう説明していいのかわからなかったから。


あれから7年の歳月が経ち、

再び異世界の妖精に干渉されチェンジリングされた。


わたしの目の前には今、


あの時のあの子の面影を色濃く残した、白い髪の青年が立っている。



「言っただろう?“またね”って」


「……その割には時間が経ち過ぎてるのではなくて?」


「キミの爺さんにこっ酷くやられたからね、回復するまで時間が掛かった。でもギリギリセーフだ」


「どうしてこのように手の込んだ真似を?自分が神サマだなんて、この世界が自分が書いた物語の中だって嘘まで吐いて」


「だってさ、面白かったんだよ。僕の言った事を真に受けるキミの顔を見るのが楽しくてさ。悪役令嬢とか言って意地悪したり突き放したりして、好きな子をイジメるのと一緒だよ。可愛いイタズラじゃないか」


「イタズラにしてはタチが悪いわね。わたしはともかく、なんの関わりもないケイティ殿下を巻き込んだのは貴方でしょう?」


「こちらの世界に行けるようになるまでも、なんかキミにちょっかいを出してやりたくてね。深層心理の中ならキミの怖い爺さんにも感知出来ないし。何か材料はないかと探っていたら、婚約者関係であの王女サマを見つけたんだ」


「彼女に何をしたの」


「何も?ホントだよ?キミにはさも彼女の味方のように言ったけど、実際に深層心理で接触したのは魔法生物を操ってキミをイジメちゃえって囁いた時だけだよ?噂とかも元々王女が勝手にしていた事だよ。僕は無関係」


「幻影は貴方でしょう?」


「あ、そうだった、忘れてたよ。ヒマだったから面白くしてやろうとあちこちで見せて回ったのがいけなかったなぁ。結局上手くいかなかったね」


「……呆れたわ」


「楽しいでしょ?イタズラ」


「楽しくないわよ」


「でもきっと異世界でやるイタズラに、キミも夢中になるよ」


「異世界になんか絶対に行かない」


「ダメだよ。絶対に連れて行くから」


「嫌よ。来年にはブンのお嫁さんになるのだもの、異世界に行ってる暇はないわ」


「お嫁さんなら異世界(向こう)でなるんだよ」


「え?」


「キミは僕の、妖精王の王子の花嫁になるんだよ」


「…………」



わたしは耳を疑った。


異世界間でチェンジリングが出来るのだからよほどの高位の妖精だとは思っていたけど……



「妖精王の……王子……?」



これは予想外だった。


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