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褒めて生きる 7
「優しいね」
「普通だよ。スリッパを用意するくらいさ」
「これ、かっこいいよ」
「ありがとう。この置物は、パパのお気に入りだからね」
「すごいよ」
「それで、こっちが私の部屋ね」
「素敵な部屋だね」
「うん。こだわっているからね」
「そうでしょ」
「ババ抜きでいい?」
「うん、いいよ」
「オッケー」
「この部屋、落ち着くね」
「うれしい」
いっぱい褒めてくれた。
だから、こっちも褒めようとした。
「そのキーホルダー、なんかいいね」
「うん」
「配ったから、ペアがあったら捨てていってね」
「うん」
「すごいね。早捨てだね」
「うん。5枚残ったよ」
「ちょうどいいよ。素晴らしいよ」
「うん」
具体的に褒められなかった。
すべて、うん、で返された。
口角しか、笑っていなかった。