3/10
褒めて生きる 3
友達になるべきか、ならないべきか。
迷っていた。
褒めすぎるから。
全然、けなしてこないから。
家に誘われた。
家にトランプしに来ないかと、誘われた。
立派すぎるマンションだ。
♪ピンポン
「いらっしゃい。いいシャツ着てるね」
「あっ、うん」
やっぱり、すぐに褒めてきた。
「いいチャイムだったでしょ。このチャイム、気に入っているんだよね」
「そうなんだね」
褒めを軸に、話を進めている。
素晴らしい。
「早速、トランプしようか。トランプって、絶妙な枚数だよね。ちゃんと計算されているよね」
「うん、確かに」
今のところは、気持ちがいい。
学校以外がこれなら、友達になってもいい。
「友達という概念。トランプという概念。なんかいいよね」
「う、うん」
私は、ためいきをついた。
私が苦手なものは、相手を無視した相槌。
そして、むやみやたらに、概念という言葉を使う人だ。
一気に、友達熱が冷めた。