褒めて生きる 2
「トランプしようよ」
今考えれば、それが褒めスタートの合図だったのかもしれない。
「トランプさん、角が丸くなっていて、やさしいですね」
トランプを、面白くて褒める人は、いると思う。
でも、尖ってなくて褒めた人は、初めてだ。
「ババ抜きでいい?」
「うん。聞いてくれてありがとう。やさしいね」
聞かないと、始まりやしない。
調子は、確実に崩れた。
こっちは、配られる側だ。
配ってくれてありがとう。
そんな言葉は、絶対に放たれない。
こちらが何か言ってしまうと、感謝されてしまう。
だから、黙っていた。
友達が配りはじめても、無を続けた。
すると、友達が声を発した。
「大人しくしてくれて、ありがとう」
子供か。
私は子供か。
そう、こころの中で突っ込んでいた。
当たり前のことだから。
そんなことを考えていたら、まわりを見るのを忘れていた。
自分の世界に入ってしまった。
何も聞こえなくなっていた。
再び、友達がいる世界に降りてきた。
友達は、今、何を言っているだろうか。
「この壮大な大地よ。この広い世界よ。ありがとう。そして、これからもよろしく」
離れている間に、すごいことになっていた。
どういう過程で、こうなったのか。
少し気になった。