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第65話 魔法少女わたし爆誕? なのだ

 えっほ、えっほ、えっほ。


 カフェ『炎の剣亭』を始動させるために、わたしは今、走っているのだ。

 つまりは騎士や魔導士の見習いである少年少女たちと一緒に、ジョギングの真っ最中なのだ。


 おっちゃんが、仕入れの旅に出掛ける間際に言い残した“お昼の営業”。

 その昼営業をきっかけに『炎の剣亭』の立て直しを企むわたし。


 ウル翁とお知り合いとなり、コーヒーと淹れる道具一式を譲り受ける。

 マティアスくんが、お茶を淹れることにも使える、コーヒー用の炉を作ってくれた。


 しかも『炎の剣亭』が、なんと春夏季専用形態に変型可能ことも発見。

 コーヒーの淹れ方や、道具の手入れなんかは、元いた世界でもやっていたので問題はなし。


 あとはたくさん淹れる練習をして、旅から戻ったおっちゃんにコーヒーをプレゼンすれば良し! となったある日。


 『炎の剣亭』に置いてある数々の魔導器が、わたしには上手いこと起動できないことが発覚。


 わたし専用に作って貰ったコーヒー用の炉でさえ、右端の少し凹んだマルに人差し指を置いて起動を念じれば良いのだけど、二回に一回は動き出さないのだ。


「くっ、う、動いてくれ。……動けよ」


 などと、今朝も小芝居をしながら、四苦八苦していたわたしを見兼ねたマティアスくんが、


「ミヅキさんには魔力操作を教えないといけませんね、今後のためにも」


 と、彼とルドルフさんの主催する、『見習い騎士・魔導士のための魔力増強講座』に誘ってくれたのでした。


 そんな訳で、ここ、騎士団の屋外修練場で少年少女たちと一緒に走っているのだ。

 魔力増強の第一歩は、健康な身体と心を作ることから始まるらしい。


 わたしがやっているのは、マティアスくん指導の許、魔導士志望の少年少女が対象の魔力増強講座なので、内容はマイペースで走るジョギングなのだ。

 でも、向こうで行われているのは、ルドルフさん指導の、魔法剣士志望の少年少女が集う魔力増強講座なので、キツそうな連続ダッシュを繰り返している。


 なんだか校庭で行われている運動部の練習を見ているみたいで、見ているだけでヘトヘトになりそう。


 なんでも騎士も魔導士も、身体が資本であることに変わりはないのだとか。


 もし魔法剣を会得したいならば、瞬間的に魔力を高める訓練が必要なそうで、連続ダッシュは、その基礎訓練だそうだ。

 一方、体力より頭脳だろうと思われがちな魔導士も、騎士団魔導士部隊配属でも、魔導士団で魔法研究するにしても、実は体力がいるみたい。


 ——確かに体力は必要そうだな。と、いつかの魔力酔いしたマティアスくんを思い出す。


 ちなみに、今日は、いつもはお部屋着にしているジャージ姿だ。


 ——動きやすい服装でお願いします。って連絡が、前日にあったからね。


「ではまず、僕が良いというまで、ゆっくりと走ってください」


 そんな訳で、コロシアムにも似た造りの円形な修練場の中、壁に沿ってえっほえっほと、しばし走り続けて、身体が暖まってきた頃にストップが掛かる。


 お、なんだマティアスくん。ジョギングは、これからが楽しいんだ。脳内麻薬がドバドバ出てハイになるんだよ。


「今日は走ることが目的ではないのです。ミヅキさんが魔力をうまく使えるようにするための講座ですから」


 おっと、そうだった。

 久し振りに身体を動かしたんで、その気持ち良さに、うっかり本来の目的を忘れるところだったよ。


 わたしは文系女子だけど、スポーツは得意ではない割に嫌いではないのだ。


「少し歩きながら、お話しましょう」


 マティアスくんは、わたしの横に立つと、歩調を合わせるようにゆっくりと歩き始めた。

 わたしたちの横を、見習いの少年少女たちが通り過ぎてゆく。


 あの子たちは、放っておいて良いのかね。


「身体が整うのは、個人差がありますから。どうやらミヅキさんは、それがとても早いみたいですね」


 整う——。

 なんだか北欧式のサウナみたいな表現だな。

 確かに血の巡りが、ただ今絶好調なのは認めるけど。


「今の感じ、忘れないでください。その感じが重要なんです」


 適度に走ったお陰で、若干息が弾んでいるけど気持ちがいいね。


「歩きながら、さらに整えましょう」


 整える——?

 それって、呼吸をってこと?

 歩きながら、深呼吸でもすればいいのかな?


「いえ、整えるのは魔力ですよ」

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