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第64話 ただ今、爆誕! なのだ

「倉庫から、表に出す店頭専用のテーブルとイスを出してきましょう」


 なんだって? マティアスくん!

 そんなものまで『炎の剣亭(ここ)』にはあったの?!

 出そう、出そう! 


 わたしたちは、というか主にわたしは、いそいそと厨房奥の倉庫へと足を運ぶ。


 おっちゃんが昔使っていたと言う武器やら防具やらに混じって、見るからに怪し気な箱状のものが幾つか壁際に。


「それは『炎の剣亭(ここ)』の各種機能を制御する端末なので、無闇に手を触れない方が良いです」


 おっちゃんの言ってた、呪いのかかった魔道具って、これのことだったの?


「いえ、その辺りのものは危険ですので、こちらの棚にまとめてあります。」


 おー、なんか次から次にヘンテコなものが見つかるね。そのうち、ちゃんと棚卸しもしなきゃね。


「僕の言っていた、屋外用のテーブルやイスはあちらです」


 マティアスくんの指差す、倉庫の奥にあったのは、丸く大きな板状のものとか、四角くて、やや小さめの板状のもの。

 あとは、それらの付属品らしき、太さも長さもまちまちな棒状のものだった。


 とりあえず、これらを表に運びましょう。よいしょ、よいしょ。


 四角いのは一人でも運べたけど、丸いやつは大きかったので、マティアスくんと二人掛かり。

 二枚あったので、二往復。小さめの四角いのは八個もあったよ。


 これは、どうやって使うのかな。

 呪文を唱えたら変形合体したりして。


「これは、このように使うのです」


 そう言って、マティアスくんは、板の端にある留め具と思わしきものを外すと、真ん中あたりから折るように動かした。

 おおおっ。それは折りたたみ式のイスだっ!


 マティアスくんを真似て、わたしも板をイスにしたり、また板に戻したりしてみる。

 なんて滑らかな動きだ。スゴい変形っぷりだ。板状の時には継ぎ目なんかも目立たない。

 しかも座ってみれば、わたしの体型に合っているのか、座り心地がとても良い。


 すると、こっちはテーブルかな、組み立て式の。

 むふー。なんか鼻息が荒くなっちゃった。お恥ずかしい。


 マティアスくんは、手早く棒状の木材を組み合わせて脚の部分を組み立てる。

 最後に、丸い大きな天板となる板を、それに乗せればテーブルが出来上がった。


 シンプルな造りなのに安定性も抜群だ。見た目も可愛い。

 天板は手触りもいいし、そこに頬杖を付いて体重をかけたってビクともしない脚の部分も頑丈だった。


 これを作った家具職人さんは、きっと良い腕をお持ちに違いないのだ。

 むふー。なんだか、また鼻息が荒くなっちゃった。度々お恥ずかしい。


「ここを建てた時、建築技師の方に紹介していただいた家具職人さんに、店内の家具と一緒に作ってもらったのです」


 おっちゃん、案外いろいろと考えて、この『炎の剣亭(ここ)』を作ったんだね。


「この王都は、夏になると日差しが厳しいので、その季節になったら軒先に大気な布を張って暑さを凌ぐんですよ」


 おー、タープ? テント? シェード? そんなものまで用意されてるとは。

 やっぱり、おっちゃん、ただ者じゃなかった。


 もしかして、雨の日でも、大丈夫だったりする?


「それはさすがに無理です。王都の長雨の季節、晴れている時以外は『炎の剣亭(ここ)』もおとなしく店内だけの営業ですね」


 そうかー、それは残念。でもわたしだって雨降りの日には、わざわざ出掛けてったりしないもんね。


 ではマティアスくん、こうしていろいろとセッティングできたところでコーヒーをいただきましょうか。


「そうしましょう、そうしましょう」


 わたしたちは、今度はホントにふたりとも、再びいそいそと厨房へ向かうと、ウル翁から譲ってもらったコーヒーを淹れるための道具一式を広げる。

 でも火を点けるための魔道具や、お湯を沸かすための炉はまだない。するとマティアスくんが、あっさりと魔法でお湯を沸かしてくれた。


「そのあたりの魔導器は、今夜あたり作っておきますよ」


 マティアスくんは軽くそう言うけれど、あんまり無理しないでね。

 時間がある時に、ゆっくりとでいいよ。


 そうして淹れたコーヒーの味は、また格別だった。

 美味しいね、美味しいね。


 道行く人々も、初めてであろうコーヒーの香りに誘われて、わたしたちの方へ振り返る。


 もうちょっと待っててね。

 もっと練習したら、お披露目するよ。


 あー、そう言えばマティアスくん。ここ王都の夏っていうのは、そんなに暑いの?

 おー、そんなに暑いんですか。日本みたいに蒸し暑いタイプじゃないといいな。


 だったら、夏になったらアイスコーヒーが飲みたいな。

 汗をかいたグラスの中で、氷がカランと涼し気に鳴ったりして。


「飲み物を冷やしたものを、いただきたいのです。それを暑い日にいただくと、最高に美味しいのです」


「氷を作る魔導器ですか。少し考えてみましょう」


 冷たい飲み物にも興味津々なマティアスくんに、その味わいや作り方を説明し始めるわたしなのでした。

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