第3話 たいていの驚愕的事実は、
わたしが大の字になった途端、ざわめきが静まる。
しんと静まり返った空気の中、こちらに近づく足音があった。
なんじゃい?
たんっ。
軽快な音を鳴らし、わたしのいるであろう祭壇へと上がってくる人影が見える。
見るからに屈強そうな長身の男性。
ライトアーマーの上に、国旗らしき意匠をあしらったサーコートを引っ掛けている。
おっ、知ってるぞ。その装備。わたしの好きなファンタジー系RPGに出てくる、騎士キャラとそっくりだ。
おや? と、いうことは、あなたは騎士様?
その人物は、わたしを抱き起こすと何かを熱心に訴える。
何を言っているのかは、まったくもって分からないけれど。
ここがどこで、何を言われているかも分からないわたしは、今さらながら慌てて辺りを見回してみる。
そこにいるのは、件の死神さんたち。いえ、勝手に死神さんだとばかり思っていた方たち。
しかも、そこの皆さん、手に手に分厚い書物を持っていらっしゃる。
あれは、もしかすると魔導書というやつでは。
すると、あの方々は魔導士の皆さんか。
騎士。
魔導士。
これで、お姫様なんかが登場したら……。
ほえー。これはひょっとしたら、ひょっとするぞ。
突然知ってしまった新たな事実に、わたしはまともに考えがまとまらない。
わたしが何も答えないせいか、騎士様はわたしに顔を寄せ、さらに何かを囁く。
言葉は分からないけれど、耳許に響く、その低い声が何故だか妙に心地良い。
ん? 耳許?
わー、やめろ。それ以上わたしに近づくんじゃあない。
頬が、かっと熱くなってゆくのが自分でも分かる。
こちとら中学校からの女子校育ちだ。
自慢じゃないが、殿方に慣れていないのは筋金入りさ。
ここ数年は、若い妙齢の男性とまともに話しなんかしたことなんかない。
ああもう、何を言われてるか分かんないし、何を言えばいいのかも分からないよっ。
思わず鼻血を出してしまいそうだ。
いや、出さないけれども。




