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第104話 100話突破記念企画 突然の外伝 楽しかった日々。なのさ【後編の前半】

 二年生に進級したところで部活をやめてしまったワタシたちは、放課後に突然時間ができてしまった。

 なーんてことは全っ然なくって、二人で図書室にいったり、お茶を飲みにいったり、もちろんお互いの家へ遊びにいったりしていた。


 高校生の女子が、暇を持て余すことなんか有り得ないのさ。


 二年生になっても同じクラスになったワタシとあいつだったけど、なんとあいつにも中学生からの友達がいて、そいつらとも同じクラスになった。

 あいつに、こんなお嬢様だらけの環境の中で友達ができたってのも驚きだったけど、そいつらともすんなり友達になってしまった自分にも驚いた。


 ワタシって、意外に社交的だったんだな。

 いやいや、そうじゃないな。


 あいつの友達たちが社交的で、わたしも仲間に入れてもらったというべきか。

 まあ、どっちでもいいや。


 今では、最初に誰と誰が友達だったかなんて、関係ないくらい仲良しになってるんだ。


 そいつらの一人は『タカナシ』っていう名前だった。

 よくある高い梨じゃなくて、小鳥が遊ぶと書いて『タカナシ』だ。


 あいつの名字も難読名字だからね。

 それがきっかけで知り合ったっぽい。


 もう一人は、『モリナガ』っていうやつだった。

 超有名な、某製菓メーカーや某乳製品メーカーと同じ字を書く。


 ちなみに同名のその某企業は、どっちが先にできたかまでは忘れちまったが、同じグループ会社みたいなんだけど、それぞれが独立した企業で、あんまり交流もないんだってさ。

 ————閑話休題。


 タカナシは、いかにもお嬢様学校にいるような、おっとりとした美少女。

 モリナガは、いつも図書室で本を読んでいるような、文系眼鏡の美少女。


 ただ、二人とも付き合ってみれば分かるんだけど、見た目を裏切って自己主張と気が強い連中だった。

 二人とも「イヤなものは、イヤだ」と、はっきり言えるタイプとでも言えば良いのか。


 そういうところ嫌いじゃないぜ。というより、むしろ好みだ。

 あいつも、ワタシも似たようなところがあるし、だからこの二人とも気が合ったんだな。


 そうして、わたしたちは四人で放課後や週末を過ごすことが多くなった。

 放課後は、四人で町中を散策して、週末になったら、あいつの家に集まるんだ。


 あいつの両親ってのは趣味が幅広くてね。

 父親が、書やら水墨画を嗜んでるってのは知っていたけど、かなりのゲーム好きでもあったらしい。古い家庭用のゲーム機やソフトなんかが、わんさとあった。

 母親も、古いSFやミステリー、ラノベにアニメのBOXセットなんかを所蔵していて、あいつん家の書斎は、ちょっとしたお宝部屋の様相を呈していたもんさ。


 中でも、あいつが持ち出してきたのは、なんという名前だったか、あまり見たことのないゲーム機でさ。ばかに大きなロムを差し込んで使うものだった。

 ゲーセンに置いてあるようなゲームができるってことで、あいつは父親と子どもの頃から、そのゲーム機で遊んでいたらしい。


 わたしたちも、人並みにゲームは嗜んでいたよ。

 といっても他の二人は、携帯型の小さな画面で楽しむようなパズルゲームとかRPGとかばっかりだったけどね。

 ワタシはと言えば、密かに乙女ゲーと呼ばれる恋愛シミュレーションの愛好家だったんだけど、あいつはゲーム全般にも詳しかった。


 学校では、ゲームの話題なんてあんまり出なかったし、ゲーセン通いなんて校則で禁止されてた。

 だから、あいつが一番好きなゲームだといって、その見慣れないゲーム機で、いわゆる格ゲーをやろうと言い出した時には少し驚いた。


 他の二人も最初は驚いていたんだけど、やり始めたら、これがハマってさ。

 一時、週末の女子会は、ゲーム大会のようになったこともあった。


 まあ、それでもたいていは、手作りのお菓子なんかを持ち寄って、女子高生らしい、たわいもないおしゃべりなんかで時を過ごしていたんだ。


 わたしたちの毎日は、なにも起こらないない代わりに、変化の少ない平凡だけれど、幸せと言っていい日々を送っていたと思う。


 そんな時の起きたのが、あの悲しい事故だ。


 あいつの両親が、二人揃って帰宅途中、まさに自宅の前で突っ込んで来た軽トラックに跳ねられるという事故が起きたんだ。

 跳ねられた——ということになっているんだけれど、目撃者の証言によれば、「その瞬間、辺りは眩しい光で覆われ、光が薄れた時には跳ねた筈の軽トラも、跳ねられたはずの二人も消えていた」らしい。


 ワタシも、あいつから聞いた話しなんで詳しくは知らない。不思議な事故だったとしか。分からない

 あいつ本人だって、警察かどこかの情報だけで、現場に居合わせた訳でもないから、残ったのは両親はもういないという結果だけだ。


 あいつの両親と友人でもあった、ワタシの両親があちこち奔走して、あいつはそれまでと変わらない暮らしを送ることができるようになった。

 そのまま、今の家にも住み続けることも、高校にも通うことができたし、本人が希望するなら進学も可能であるそうだった。

 もちろん、一生働かなくても良いようなものでもないけれど、当面の暮らしは守られたんだ。


 ワタシには両親が、なにをどうしたのかも詳しくは知らない。

 ただワタシは、あいつがどこかへいってしまわないことだけを祈り、両親には、そのために頑張って欲しいと願い、結果、あいつがそのままそこに居続けていられることに感謝をしただけだったんだ。

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