裏謁見〜女農商の場合〜その2
本日2回目の投稿です。
ひとつめの見逃しにご注意ください。
それにしても書き出したらすごく長くなってしまった。
「面を・・・・・・上げよ。」
(はあ、簡単な問題だと良いが・・・・・・。)
「ははっ」
(むっ、中々の美人だな。)
(この女の落ち着きよう、やはり相当場数を踏んでいる。西に良い商人がいるのだな。)
(あっ、やばい。緊張する、ああ、もう!なるようになれっ!!)
厳かな雰囲気を保ったまま謁見は始まった。しかしながら他人の心が読める俺にとっては不安で一杯だ。
「直答を許す。楽にせよ。」
(ひええ、直答ですって緊張するぅぅ!)
それにしてもこの女性、表情隠すのが上手いなー、怖いなー、女性怖いなー。
なんてことを思っていると女が一礼し、身体を上げた。
陛下の思考が響き渡る。
(何という・・・・・・ボリュームだ!)
ボリューム??何のことだ。
俺は陛下の視線を辿る。
・・・・・・うっわ!!陛下っ!うっわ!!!さいってー、陛下、さいってー!!
(ああ、陛下と目が合・・・・・・わない?・・・・・・あれ?陛下、なんか違うとこ見てる?あれ?やば、服になんか汚れでもついてたかな、えっ、なんか凝視してる。えっ?あれ?・・・・・・ムネ??)
いや、バレてるよ!陛下!バレてる!!
伝えようにも俺には今口を開く権限はない。俺はなんだかいたたまれない気持ちになって目を逸らせた。
意図せず生まれた沈黙に、宰相が思わず女へ話の続きを促す。
(なんという読み合い!会話が始まる前からこの二人は相手の思考を読み合っているのか!いかん、私とてこの国の政治家の端くれ。負けてはおられん!)
「んんっ、それでは貴方の名前と、今日訪れた理由を申しなさい。」
「はい。私は西の領主のおさめる農村ニシノムラで作物で商いをしております、ムノーヤクと良います。
実は本日は賢人と名高い国王様にそのお知恵を貸して頂けないかと思い、こうして参上した次第であります。」
俺が視線を戻すと陛下の視線は先の一点から外れていた。
(気のせい・・・・・・かな?まさかね、陛下がそんなことするわけないよね!だって賢王と言われるくらい立派な方だもの!勘違いしちゃったっ、ダメね、わたし。)
いや、合ってるよ。全力で正解だよ。
(危なかった。思わず熱中してガン見してしもうた。はて、女子が何か言うたかな)
「・・・・・・なるほど。」
聞けよっ!!!陛下、人の話聞こうよ!!なるほどって何だよ!
「それで、ムノーヤクと言いましたか、その借りたい知恵の内容とはどのようなことなのですか。」
(言葉遣いも悪くない。裕福な家で育ったのでしょうか、であるならそれなりに学もありそうですが・・・・・・果たしてそんな彼女が助けを乞う悩みとは一体・・・・・・)
ああ、宰相様、まじ宰相様だ。この人が一番の良心な気がする。
「はい、実は今、ニシノムラでは新しい特産となる農作物を模索しているのですが、どれもあまりピンと来ず、、、。既存の作物でも問題はないのですが、最近は仕事が飽和しているため出稼ぎに王都へと出て行く農家の子供が多く、地域としての特産を生み出せれば、そこに人を割くことが出来るかと思いまして。」
ははあ、なるほどなあ。確かに治安もいいしもう何年も生産は安定しているし。人口が増えりゃそりゃそうなるか。にしてももっとそんな不満が溢れても良いもんだが、なんか絶妙な人口バランスなんだよな。
「・・・・・・なるほど。」
(これは、ついにきてしまいましたか。今まで何故か仕事があぶれたり食料が足りないということもなかったのですが・・・・・・。)
(頑張れ、わたし!村の皆んなの期待を背負って来たんだ。何か少しでも役に立つ話を持ち帰らないとっ!!)
そうだよね、頑張れ。俺も何か決まったら協力するからね。この子、いいこだなー。
「サヨーデよ。ニシノムラというと、領主はウェストであったか?」
(あやつめ。この間言っておったお気に入りの娘とはおそらくこの娘のことだな。思わずついつい便宜をはかってしまうと言っておったが・・・・・・けしからん、実にけしからん!)
だからあんただよ!一番けしからんのはっ!!他の二人ちゃんと考えてるじゃん!なんでそんな物騒な目つきしてるの!どんだけだよ!!!
「左様でございます。」
(陛下の雰囲気が変わった?これはもしやウェスト卿のことを疑っておられる?しかし確かに領主であるウェスト卿を越えてこのような相談を持ち込むのもおかしな話だ。)
「ムノーヤクよ、ウェストのやつは何をしておる?
此度の件についてあやつはどのような対応を取った
のだ?」
(あやつのお気に入りであるならば、何か手を打っているはずだ。本当にこの娘かどうか確かめねば!)
(やはり!!流石陛下だ。あれだけ仲の良い配下に対しても疑いの目を向けられるとはっ!!)
違いまっせ!宰相様、それは違いまっせ!この人別の目的に必死なだけでっせ!!
俺が二人の思考にツッコミを入れていると、ムノーヤクはその端正な顔に徐々に焦りの色を浮かべる。
(あっ、ウェスト様のことをちゃんと伝えなきゃ!)
「いえっ、ウェスト様はご自身の配下の数を大幅に増員してくださいましたし、商家や高齢な働き手しかいない農家への口利きも行なってくださいました!」
(あわわわわ、私のせいでウェスト様の印象が悪くなったらどうしよう。)
「で、あるか・・・・・・。」
(やはりか・・・・・・この娘で、確定だ。)
確定だ、じゃねえよ!ここまで一つも話聞いてない!!
(それにしても、大きい上に形もいいとはな、良く・・・・・・揺れておる)
いやもうなんなのこの人っ!誰だよこの人賢王て言ったの!!
(むっ、いかんいかん。思わず前のめりで眺めてしもうた。)
大丈夫?流石にムノーヤクさん気付くんじゃないの?めっちゃ見てるし。
俺は思わず二人の顔を見比べてしまった。どうやらムノーヤクさんは気付いていないようだ。
「はい、それでウェスト様とも相談させて頂いたのですが、いい案が浮かばず、、、。」
(なるほど。ウェスト卿が匙を投げるほどの問題。これは確かに陛下が動くしかないですね。)
宰相様。陛下もう動いてますよ。全然別の動きですが。
ムノーヤクさんは胸の前で手を握りしめると悲しげに目を伏せた。
「・・・・・・。」
力になってあげたいな。
「・・・・・・。」
何かいい案はないのかな。
「・・・・・・。」
宰相様も考えてるね。うーん。
(それにしても、大きい。このサイズを表すとしたら)
「桃・・・・・・いや、メロンか・・・・・・。」
こ え に で て る ! !
俺、近衛騎士やめようかな・・・・・・。
「は?」
(桃?メロン??何故果物が。そういえば西の方は気候も温暖で確か山間には盆地が・・・・・・そうか!)
「っ!それはもしかして果実を栽培せよということでしょうか!」
何たる早とちり!!!いや、どうすんのよ、これ。ああ、もうムノーヤクさんめっちゃ食いついてるじゃない!!
(ふおおおお!何という迫力っ!これはわしが未経験であったなら興奮して大変じゃ!そういえば、この間未経験の話になった時に誰かが何か言っておったな。確か未経験のもののことを何かで言い換えて・・・・・・確か可愛らしい名前の・・・・・・思い出した!)
「チェリーっ!!」
いやもうあんた黙れよっ!興奮の度が過ぎるよ!でも話的には違和感ないからたちが悪いよ!
「おおっ!王の言の葉下ろしが出た!!」
宰相様!?ええっ、何言の葉下ろして。通常なの?これ通常な感じなの??
「確かに果実は盲点で御座いました!春の終わりを迎える今、夏にとれる果実を育てることができればそれはまさに特産と言える!王よっ!名案で御座いますぞ!!」
(流石は陛下だ!素晴らしい、実に名案だっ!!)
「ニシノムラは活用していない盆地がまだ沢山あります。それらを開発し、果実の製作に充てろということでしょうか」
(ああ!なんてこと!まるで目の前を覆っていた霧が晴れたかなようだわ!そうよ、何も野菜や穀物に限らなくてもいいじゃない!)
うん、もうね。どう突っ込んでいいのかわかりません。ん?いや、ムノーヤクさん、流石にそれは押し当て過ぎ・・・・・・
「ぬかったわっ!!!スイカあああぁ!!!!」
(むおおお!メロンなどより遥かに大きいではないかっ!!!)
ほら。食いついたよ、もう入れ食いだよ。陛下一本釣りですよ。
「おおっ!!」
(この短時間で数々の作物が!このお方の智謀、まさに計り知れない!!)
「ああっ!!」
(なんてことなんてことなんてこと!これだけ種類が有れば十人やそこらじゃ足りないわ!今外に出ている人間も呼び戻せる!!)
「ええっ!?」
皆んな解釈好意的過ぎるだろ!どうなってんだよこの国・・・・・・。
「王様っ!ありがとうございます!!すぐに西へ戻りウェスト様とお話ししてみます!!」
「待ちなさい。これから開発となれば時間もかかります。・・・・・・ノママーニ卿、手の空いている農兵を選別し、共に作業にあたらせなさい!」
あーあ、これもう確定だよ。大丈夫なのか、ん?あれ、俺なんか指示出された?
「えっ?あっ、はい、仰せのままに!!」
聞き逃しかけた俺は慌てて返事をした。農兵の選別、だっけ?えっ、合ってる?合ってるよね??
「陛下、私も今から財務に掛け合って予算を見積もって参ります。王家の共同開発ということにすれば、他の領地の同じような人間も斡旋することが容易になります、宜しいでしょうか?」
(こうしてはいられません!これは一大事業ですよ!)
(ぬっ、いつのまにか話が進んでいる?わからんが、とりあえず流れに乗るしかあるまい。)
「よきに・・・・・・はからえ。」
「「「ははっ!」」」
こうして俺たち三人は陛下をその場に慌ただしく謁見の間を飛び出した。
ムノーヤクさんは心を躍らせ、その歩みは弾んでいる。ついでに胸の弾みも凄いことになっている。
だめだ、思考が陛下につられている。とりあえず農兵を集めよう。
ふと、俺は前を先導して歩いている宰相様に目をやった。この人は本当に凄いと思う。
実際、勘違いとはいえ解決策を導き出すとは。
悩みにも真摯に取り組んでいるし。
変なこと微塵も考えないし。
「宰相様!ありがとうございます!先に村に戻ってウェスト様や皆にこれからの話をさせて頂きますね!」
ムノーヤクさんは満面の笑みを浮かべてこちらを振り返った。
よかったね。経緯はどうあれ、上手くいくといいなあ。
「いえいえ、全ては陛下の冴え渡る差配のおかげです。全力で協力致しますので、必ず成功させましょう!」
宰相様も時には興奮するみたいだ。一大事業とも言える今回の成り行きに若返って見える。
俺たちはそうしてムノーヤクさんを見送った。兵舎に赴くために踵を返す。
ふと、俺は振り返り宰相様の方に目をやった。宰相様は未だにムノーヤクさんの背を見送っている。
(それにしても・・・・・・凄い胸でしたね・・・・・・。)
お前もかよっ!!!!!!
王国は、今日も平和だ。
結果、下ネタというどうしようもない話。汗
次はもちょっとちゃんとしたの書きます、、、多分(笑)
楽しんで頂けたなら幸いです。
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